閑話・栄太郎は嫉妬される
俺達の生活は随分と改善された。それは何故か! そう、俺達は、手に入れたチートを使いこなしているからだぁぁ!!
「最初こそなんだこれ? と思ったがな。いやしかし、ここまでスマホに入ったアプリが便利なものだとは」
「鑑定だっけ? アレのお陰で食べられる物が分かるようになったのは大きいよね」
「えーたの言う通りにして良かったわね。だってジョブを選ぶ時に皆、戦闘職にしようとしていたもの」
そう、俺は皆がジョブを選ぶ際に話し合いをする事にしたんだ。
だってそうだろう? なんで生産職なんてあるんだと考えたらすぐにわかる事だ。もし生産職の人が居なければ、俺達は全滅する可能性がある! と言う事ぐらい。
ただ、人って自分の安全は確保したいだろう? 当然俺もそうだ。だからこそ、皆は戦闘職を選ぼうとした。
とは言えソレは不味い……と言う事で、俺は皆にストップをかけ全員でどんなジョブが必要かを話し合った。
だけども、やはり戦える力が無いと怖いと言う事で、生産職になりたいと言う人は少なかった。学校にいる頃に、暴力的なのは苦手と言っていた奴も、自衛の為には……なんて言いながら戦闘職を選ぼうとしていたからな。
では誰が生産職になったのか? それは、5人いる女子のうち2人が〝料理人〟と〝錬金術師〟になってくれた。
そして男子からは宗太の奴が〝鍛冶師〟を選んでくれた。このおかげで、拠点はかなり充実化したと言っても良い。
で、先ほど女子の一人である料理人の梨花が言う様に、鑑定と言うのが絶対に必要なスキルだと言う事が発覚した。
鑑定は戦闘職では手に入る事が無いスキルで、この地の食べ物を探すには必須のスキル。
だって誰も想像しないだろう? 口にいれたら爆発するベリーがあるとか。事実、男子の一人がお口を爆破したからな。軽い怪我ですんだけども、あの時は結構焦った。
とまぁ、そんな植物がある為に俺達は、鑑定を手に入れるまでの間、ココヤシとタケノコにウサギや魚ぐらいしか口にしていなかった。
「お陰で随分と体がダウンしかけて来ていたからなぁ……」
「鑑定のお陰で食べられる物が増えたしな。ってか、いつの間にかに食べる事が出来る動物も増えてたよな」
何時だったか忘れたが、俺達がこのチートを手にした後に森の中で生息する動物が増えた。
イノシシだったり蛇だったりと、森の中を探索する時には注意するべき事は増えてしまったが、その分食料は充実するようになった。
「うん、流石えーた! ノリだけで生きてるだけはある!」
「……おい、それ俺の事をディスってねーか?」
「えー、褒めてるんだよぉ? ほらほら! お礼に抱き着いちゃう!」
因みにこの抱き着いてくるのが〝錬金術師〟を選んだ女子。他の女子からはミーナと呼ばれていたりするんだが、実際は美奈と普通の日本人的な名前だ。
「美奈……暑いからやめろ。特に他の男子の視線が熱いんだ」
「むぅ、ただのお礼なのに」
ただ、俺は普通に呼んでいるし、なんなら美奈の事をひっつき虫と呼びたい。……毎回くっついてくるからな。
「ミーナ……やりすぎ注意。ほら、今日の分の錬金術をよろしく」
「はーい! はーちゃんが獲ってきた獲物は美奈がしっかりと解体してあげるね!」
「ん。任せた」
はーちゃん事、華は戦闘系のジョブについた女子で、美奈と梨花の幼いころからの親友なんだとか。……なんでかこの3人は毎回俺の近くに集まる。
俺を便利な道具とでも思っているのだろうか。何かと荷物持ちにして来たりしているんだよな。
「えいたろートラップは?」
「トラップは問題無いな。今日もしっかりとイノシシが掛かっていたぞ」
華からトラップについて聞かれたから、素直に答えておく。
そう、俺のジョブはトラッパーだ。魔力? を使ってトラップを仕込むジョブなんだけど、これがまた便利なスキルだ。
魔法みたいに、その場で使って獲物に攻撃すると言う事は出来ないけども、適当にトラップをばら撒いておけば、俺が対象外と指定した者以外はそのトラップでダメージを受ける。
トラップは魔法的要因があるらしく、火のトラップだとか水のトラップといった属性トラップがあるんだけど、俺が使っているのは火を使うトラップか石を使う物理的ダメージが入るトラップが多い。
「トラップが発動したらわかるから。既に獲物も回収済みだ! ベースに居ても敵を倒せるから便利過ぎるぜ」
「そう。えいたろーが居ればベースの守りも万全だね」
「おう! 任せておけ。皆の睡眠は俺が守るぜ!」
ぼさぼさに伸びてしまっている髪をかきあげながら、「ふっ」と笑顔を魅せ……きまった。と自画自賛してみる。
ただ、実際に言っている事に間違いはない。トラッパーの仕事と言うのは狩りと言うよりもベースを守る事が重要だ。
「えーた……言っている事は正しいんだけど、その髪じゃそのポーズは決まらないよぉ。以前のえーたなら完璧だったんだけどぉ」
「し、仕方ないよ。こんな生活をしているし、もう3週間以上もここに居るから……他の人も髪とか微妙だよ?」
うぐっ……確かに整っていない髪でやる仕草では無かったか。
確かに! この、よれよれの服だったり、水で洗うだけの髪なんかではキメポーズをとってもキマらない。し、しかし! それでも、中身を見てくれ! ほら、言っている事は正しいだろう!?
「ま、えいたろーはそれで良いと思う。ムードメーカー的存在だから、私は結構気に入っている」
「華! ありがとう!! 心の恋人よ!!」
「……恋人は違うと思う」
「そこは何処の劇場版だ! って突っ込みを入れるところだろう……」
「うん、やっぱりえーたはノリだけで押し通せるタイプだよぉ」
ノリだけじゃないやい。しっかりと色々考えているっての。
「ま、あながち間違いではないな。栄太郎は黙っていれば二枚目なのに、口を開けば三枚目だからな」
「おおぅ……宗太が辛口過ぎるぅ」
「いやいやいやいや、宗太の言っている事は正しいぞ!」
……なんて事だ。お口爆破やろーの健人も宗太と同意見だとは。お前の方が三枚目だろう! と言いたい。
「愛ちゃん、宗太君は別としても健人君は……」
「そうだね舞ちゃん。そっちはどうみても嫉妬だよね?」
何やら他の女子2人が遠巻きに俺達のやりとりをみているんだけど、一体何を言ったのか全く聞こえなかった。
ただ、どうやら華には聞こえたっぽい様で、彼女達に向かって人差し指を口元へと持っていき「しー」と合図を送っている。……一体彼女達は何を話していたんだ。
「と、そう言えば健人はどうだったんだ?」
「俺か? ふっふっふ……聞いて驚け。俺の今日の成果はこれだ!!」
ドーン! と健人が手に持った籠をみんなの前に置いた。
なので皆で籠の中を覗き込むと……その中には大量の!!
「「「「「グエェェェ!」」」」」
「ひゃぁぁぁぁぁ!?」
「ちょっとぉ!?」
籠の中から重なった鳴き声。そしてそれに合わせて美奈と梨花の悲鳴。
籠の中に居たのは、どう見ても食べる事など出来そうもない色をした巨大な蛙達だった。
こ、こいつ……ウシガエルよりもデカいぞ。だと言うのに、その色が赤や紫やら黄色といった明らかに毒を持っていますという色だ。
「お、おまえ……なんてモノを捕まえて来ているんだよ」
「いや、蛙って食えるだろう? それだけ大きい蛙なら食いでがあるかなって」
「馬鹿が、蛙はアマガエルですら毒を持っているんだぞ? 食べれる食べれないは別として、捕まえた手で目をこすったりはしていないよな?」
「あー……一応手洗いはしたけど、なに? 蛙って毒もちなん?」
「毒持ちの方が有名だろうに……有名なのにはヤドクガエルとかヒキガエルが居るだろ」
「……知らんかった。蛙は美味しいって話ばっかり聞くから……てっきり大丈夫だと」
「ウシガエルとかは食用だからなぁ」
しかし、危険な毒蛙が居るかもしれないのか。
とりあえず、この蛙達を鑑定してみないとな。毒が無ければ……と思うけど、見た目からして食べる気にはならないかな。
「とりあえず、毒が無いとなれば栄太郎に食わせるか」
「宗太!?」
なんで急に俺に振って来た。もし食べるとすれば、それはこの蛙を獲ってきた健人だろうが!!
くそう、俺を三枚目にしようとしているのは宗太じゃないのか? いや、絶対そうだろう!!
ブックマークに評価などなど、いつもありがとうございますm(_ _"m)ペコーン
と言う事で、男子Aこと栄太郎君のチームはこんな感じです。
和気藹々と仲良しチームと言った感じ。そして、名前だけが全員出ました。今後も出るのかどうかは……謎ですが。
宗太君。実はこっそり嫉妬していましたってオチですね。えぇ、そりゃ、かわいい女子に抱き着かれるのを目の前でみて嫉妬しない訳がない……と。




