閑話・会合(逃げて来た男子と……)
僕は助けた女の子達を連れ、一つのグループへ合流していた。
僕が連れている女の子達の数は3人。その内完全に心が壊れてしまっているのが1人。そんな1人に対して、他の2人が上手くアシストしてくれているから、僕としては凄く助かっている。
「ふふふ……敵さんはどこぉ? 私に任せてくれたら大丈夫だからぁ」
「しーちゃんいつもありがとうね! 私達すっごく助かってる」
「流石詩麻さん。わたくしは戦闘職では無いので、実に申し訳ないのですが頼りにさせてもらっていますわ」
こんな感じで、しーちゃんこと詩麻さんの心を支えようとしてくれている。と言うのも、現状僕達の内で戦闘が出来るのは彼女だけだ。
だけど、本来であれば彼女も生産職で戦闘など出来るハズが無かった。なかったんだけど……。
詩麻さんだけど、彼女はステータスに現状エラーが出てしまっている。いや、もしかしたら仕様なのかもしれない。
彼女の心がこうなってしまった時に何かの作用が起きた。そして、彼女のジョブが生産系の職から〝ブレーカー〟となっていた。……果たして壊れたのは何なのか。
ただ、その名に相応しいだけの攻撃力を有しているジョブであるのもまた事実だったりする。
彼女のスキルによる一撃は、岩さえも粉砕する。
最初は素手でやっていたんだけど、そうすると手が怪我をしてしまう。なので今では武器を使って貰っているけど、武器次第では一発で武器が破壊されてしまう。
最初の内に作った石の槌とか、粉々になってしまったからなぁ。
因みに、僕のジョブは〝ブラックスミス〟と武器職人だったりする。で、女子達……詩麻さんの事をしーちゃんと呼んでいる子なんだけど、彼女は亜美さんといって革を使う〝レザースミス〟。そして、わたくし口調の子が彩音さんと言って、何故か〝シンガー〟と歌手のジョブだったりする。
ただ僕達のジョブって自分達で選んだわけではなくて、先生達に強制されたんだけどね……。だから、彼女の〝シンガー〟も何を考えてなのか分からないけど、先生達が笑いながら決めていた。
「ただ彩音さんがシンガーなのは、ある意味感謝しないといけないかもしれないかな。彼女のお陰で、バフの効果が凄いから」
「歌うだけで仕事していると言うのは、なんだか申し訳なく感じますけどね……でも、わたくしにはソレしか出来ませんから」
「あーちゃんの歌は色々な効果があるからね。……しーちゃんが暴走しそうになったら、癒し効果のある歌で押さえる事が出来るし」
ボソリと亜美さんが付け加えた言葉。それは詩麻さんには聞こえていないのだけど、僕の耳には届いてしまった。そして、僕は心の中で「ごもっとも!」と全力で頷いてしまう。
詩麻さん……戦闘を求めているのか、どんどん突っ込んで行こうとするからね。そして、戦闘職になってしまった彼女の身体能力から来る前進を、僕達には止める事など出来ない。
そこで彩音さんの歌が効果絶大なんだ。彼女が歌う癒し効果のある歌は、詩麻さんの足を止める事が可能で、足を止めた詩麻さんは彩音さんの歌声に耳を傾け……その内眠ってしまう。
そして、眠ってしまった彼女を抱えて僕達はホームへと戻る。そして今も、詩麻さんは僕の背でスヤスヤと穏やかに寝息を立てていたりする。……願わくば、安眠が出来ていればなんて。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ホームへ戻ると、其処では合流した人達がせっせと仕事をしていた。
「戻ったか……で、今日はどうだった? と、聞くまでもないか。いつもの様に眠り姫の状態か」
「えぇ、今日も戦闘が有ったので。ただ、収穫はありましたね。イノシシの皮をゲットです」
「そこで皮と最初に言うのか。いい具合にメンバーに毒され始めて居るな」
「あ、普通は肉でしたね。レザースミスがいるから、つい先に素材の事で頭が一杯になりましたよ」
イノシシを見つけると、僕達は「あ、このイノシシから幾つの皮が採取できるだろうか?」って考えるようになってしまったからね。
「しかしお前も、何というか奇特な奴だな。眠り姫を身内に入れ込むとか」
「……そうですかね? 鈴木さん程では無いと思いますが」
「俺が奇特だと?」
「えぇ、だってほら……あそこで何時もの様に手をぶんぶんと振っている人がいますよ?」
「あぁ……また山田君か。今度はいったいなにをやらかしたんだか。ちょっと行ってくる」
会話をしていた相手は、この拠点のリーダー的立場にいる鈴木さん。元々は修学旅行のバスを運転していた人。
ここに来る時、僕は違うクラスメイトの男子と交渉をした。だから僕はその男子がリーダーだと思っていたんだけど、実は違ったみたいで、そのクラスメイトの男子は交渉などを行う要員だったらしい。
ただそれは、いきなり大人である鈴木さんや山田さんが出るよりも、同じクラスメイトの方が会話がしやすいだろうと言う配慮だったらしい。
このホームに来てびっくりしたよね。だってリーダーが別に存在していたんだから。
とは言え、リーダーが大人と言う事で警戒していたんだけど……この鈴木さんを見ていると、あの担任がどれだけ最悪な存在だったかと言うのが理解できてしまった。
……学校にいる頃は良い先生だとおもっていたんだけどなぁ。本性は全く違ったってわけだ。
ただ、こちらは心に傷を抱えた女の子を3人連れている。なので、基本的に顔を合わせて会話をするのは僕の仕事。
女の子達にはなるべく関わらないようにお願いはしている。……同じ女子だとしても。いや、同じ女子だからこそ、下手をしたらとてつもない亀裂が入るかもしれないから。
片方は傷を負い、片方はそう言った被害を知らない子達だもんな。だから僕が3人の事を守って行かないと。……と、こう言うのが鈴木さんにとって奇特に見えるのかもしれない。
さてと、今日は十分な成果があったし、後はゆっくりと食事でもして寝るだけかな。
「夕飯は作ってくれているみたいだから僕が貰ってくるけど、皆はどうする?」
「あ、それだったらしーちゃんを預かるよ。背負ったままご飯を貰いに行くのは無理だよね」
「わたくしも肩をかしますわ。二人で支えれば大丈夫でしょう」
詩麻さんの事は二人に頼むとして、僕はご飯を貰うついでに、ホームの人達を相手に情報交換もしておこうかな。
日々何があったかを知るのは大切な事だしね。それに、僕だけでも他の人達に馴染まないと居心地が悪くなってしまう。折角受け入れて貰えたと言うのに……此処を出て行くなんて事になるのは少々では無いレベルでまずい。
一応生産職と言う事で、僕が作った武器や亜美さんが作ったモノを皆にも渡しているから、心象は悪くはないと思う。……とは言え、僕達は後からホームへ入ったのも間違いじゃないからね。
頑張って自分達が作った拠点によそ者が来た! なんて考えてしまう可能性もあるはずなんだ。今の所、そう言った話は僕達の耳に届いてはいないけど。
なので、こう言うのはコツコツと行う日々の交流が大切。そして、元気よく挨拶をする。一応場の空気を読んでから。
「こんばんは。っと、少し賑やかですね」
「よぅ! そうなんだよ……またリーダーの鈴木さんを、サブリーダーの山田さんが振り回しているんだ。もう、これ夫婦漫才じゃね? って思いながらみんな見ているんだけどなー」
「あ、でも山田さんって彼氏がいるって言ってたよ?」
「そう言えばそんな事も言っていたような……てことはあれか? 職場の上司を振り回す愛嬌が良い部下?」
あぁ、そう言えば戻って来た時に鈴木さんと会話をしていたけど、山田さんが鈴木さんの事を手招きしていたもんなぁ。
「山田さんは何をしたんです?」
「高田……ここに来てからだけど、お前の話し方って少し硬くなってねーか? 学校にいたころはもっとフレンドリーだっただろ」
「あぁ、でもほら。僕達って此処には後から来たわけですし」
「気にすんな! 俺達仲間だろう? もっと砕けろ! ほれほれ!」
あはは……砕けろか。
仲間と言ってくれるのは嬉しいけど、あの惨劇を見た後だとどうしても砕けると言う事が出来ない。
決して彼等を疑っていると言う訳ではないけど……どうしても予防線を張ってしまう自分が居る。それはそうだ。僕が間違えたらあの3人にも被害が及んでしまうから。
「ちょっと藤宮君? 高田君は守る人達が居るんだから! 以前みたいに砕けるなんて難しいんだよ」
「なんだとー! 俺には守るべき人も居なければ、そんな立場じゃないとでも言うのかー!」
「実際そうじゃない。私達は鈴木さん達に守られているしね。それに対して思う事が有るなら、ほら誰かひとりでも守る立場になってみなさいよ! ……私とか」
「くそー……俺だって仕事をしっかりとこなしていると言うのに……。なぁ高田ぁ、井口の言い方は少し酷いと思わないかぁ?」
あらら。これまた女の子である井口さんの言いたい言葉が、全く藤宮君には通じていないみたい。
結構聞こえる声だったと思うんだけどなぁ。あの「……私とか」ってワード。しかし彼には聞こえていなかったみたいで、彼の背後では井口さんが頬を膨らませている。
……ボーイ・ミーツ・ガールは僕の居ないところでお願いします。
とは言え、井口さんは俺の事もよく見ているというか知っているみたいだ。
お陰で随分と助かっているかな。いや、井口さんだけじゃない。このホームにいる人の殆どが彼女と同じように考えてくれているみたい。
まぁ、藤宮君みたいに、僕の事をもどかしいと思っている人も多少は居るみたいだけどね。
ブックマークや評価などなど、ありがとうございます!!ペコリ(o_ _)o))
と言う事で、逃げた先は運ちゃん達のチームでした。
受け入れてくれた先は実にホワイトだったようです。まぁ、其処は男子こと高田君が上手く立ち回った事が正解だったのでしょう。……プレゼント攻撃はデカいともいう。
そして何より重要な情報が紛れております。そう、ジョブが変更してしまったと言う内容。
因みに、現状その理由や条件はシークレットとさせてもらいます。ただ、予想は簡単に出来てしまう気もしますが。(何せ景にもスキルや称号が生えましたし)
ともあれ、漸く安息の地を手にする事が出来た4名。ゆっくりと心を癒していって欲しいモノです。
人数の変動について。
運ちゃんチーム
男子6人・女子4人→男子7名・女子7名
教師・女王様チーム
男子10人・女子7人→男子9名・女子4名




