話し合いをするには……
回収した総大将のロボに思いを馳せていると、横からツンツンと俺は脇腹を突かれた。
「むぅ。パパ、あの子はほうちしてもいいの?」
そんな事を神獣のイノシシに乗り、更にはその頭にチンチラを乗せて告げてくるフォゥ。……可愛さのゲージが跳ね上がっていないか?
と、この可愛さを語りだしたら話がズレるから戻すとして。
フォゥが「いいの?」と聞いてきたのは、視線の先でガン泣きをしている総大将だ。
何とこの総大将だが、見た目がフォゥより少し成長したぐらいの男の子だった。いやいや、ちょっとおかしく無いか? おじいちゃんやおばあちゃんと会ったことが有るんだよね? なら、フォゥと同年代ってのはまず有り得ないと思うんだけど。
もしかして種族的なモノだろうか? 彼の種族だとある程度の年齢からは一気に成長が落ちるとか。それこそ大人になるまで100年かかります的なパターンなんてのが考えられる。
後は異世界と地球では時間の流れが違うって可能性もあるけど……どうも話をチラッと聞いた感じだと、そういったタイプでは無さそうなんだよなぁ。
こう、泣き声に混ざって何か言っているのを聞いているんだけど、すごく断片的な内容なので全ては把握できていない。だけど、それでも分かる事はあるわけで。
「えっと〝自慢したかった〟とか〝おいて行かれたのが許せなかった〟とかって言ってるなぁ」
「泣き声が大きくて何をいっているのかわからないの。ただ、あの泣き方はあとで頭が痛くなるやつなの」
確かにあの叫びながらの涙は後で頭痛が酷くなるだろうなぁ。ただ、その頭痛をポーションとか薬で抑えるようなモノでもないから……彼には甘んじて頭痛を受け入れてもらうとしよう。
「景くんはやっぱり景くんだ」
「あの子の事よりも機体の方に意識がいっちゃってるわね」
しゃーないやん。アレだけの機体だよ? そりゃ、気にならないわけがない。
いやまぁ、おじいちゃん達が何かやり残した事があるんだろうってのは分かるから、彼の事が全く気になっていないって訳じゃないよ? だけどさ、どう考えても泣き止むまで手がつけられないよね。なら、すきなだけ泣いてもらって、泣き疲れてからお話するのが良いと思うんだよね。
「そうかもしれないけど、多分だけど泣き疲れたら寝てしまうのではないかしら?」
「……話し合いは明日に持ち越し」
その可能性は高いなぁ。まぁ、それならそれでも良いんだけどね。
ともあれ、彼の処遇は俺達に任せてもらうって事で住民の皆さんとも話が済んでいるから、そっちは大丈夫だと思うんだけど。いったいどうしたら良いんだろうね? 見た目は子供だからなぁ……なんだか実にやりづらいったらありゃしないよ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アレから結局、彼が泣き止んだ後は疲れて倒れてしまった。なのでそのまま眠らせた。
住民の皆さんはというと……あのガン泣きを見ていたのか、思いっきり引いてしまっていた。色々と。
なので、総大将を今のうちにボッコボコにしよう! とか、捕まえて地下牢にでも入れてしまおう! なんて事を言い出す人が居なかったのは、此方側に死者が居なかったからだろうね。
確かに重傷を負った獣人とかも居るんだけど、そんな彼らは「修行が足らなかった!」とか「良い義手を頼む」とか言っているから、特に気にしていない様子。……良いのか悪いのか判断ができないレベルでポジティブな人達である。
エルフの人達はというと、前衛に出ていなかったため重傷を負った人がいない。なので此方は獣人達よりも軽い感じで居たりする。
クラスメイト達? うん、彼らはもうね。スルーしてもいいと思う。なんでも「ショタ魔族子キター!!」とか騒いでたし。
ともあれ、今回の件に関しては、完全に背後の人達の事は考えなくて良さそうである。……少し気が楽になる。
そして漸く、疲れて眠ってしまっていた子が目を覚ました事で会話が可能となった。
「おはよう。よく眠れたかな?」
「む、余は泣いておらぬぞ!」
開口一番がソレかい。てか、思いっきり泣いてたよね。今も目が真っ赤に腫れ上がってるからな? とはいえ。
「今はソレはどうでもいいんだ。現状は理解しているよね? 君は負けた。そして俺達の捕虜になったんだ」
「……余にナニをスルつもりだ? これはアレか? ウス=異=ホンとやらみたいな事をするつもりではあるまいな?」
……それ、言っていて理解している? てか、そんな事はしないからな。てかこんな要らない知恵を教えたのはおじいちゃんだろうか? おばあちゃんは地球出身じゃないから、多分その手の知識は無いはずだしな。
「捕虜にしたという事は、く……ころせ! とか言わせるのだろう?」
「……ソレは姫騎士とかって言われる人にやるやつだからな? って、そうじゃなくて! 君には聞きたい事が有るんだよ」
「ふむ、良い。なんでも申してみよ」
なんか捕虜の癖にめちゃくちゃ上から目線だなぁ。これはアレか? とりあえず己の立場を分からせる必要があるだろうか。
「……分からせ?」
「やっぱり薄い本的な事をするつもりじゃんか……ゴクリ」
おーい……女子の皆さん帰ってこーい。けっしてそっちの方向で何かをするって事は無いからな。
「とりあえずこういう時は、げんこつ? 梅干し? なんかそこら辺をやるんだっけ」
「……いつの時代の教育よ」
1世紀前程の教育? なんかそんなのが漫画であったような気がする。
たださ、相手は異世界人で力こそ正義! な思考の人達だからね。それなら分からせる為にも相手の流儀に合わせるのもありでは? ……いや、無いか。流石にこれから此方の世界の事を教えたりしようって思っているのに、戦闘も終えガン泣きした相手に対して、彼の世界のやり方に合わせてモノを教えるってのは無しだよなぁ。
「とりあえずお茶でも飲んで脳内をリセットしようか。勿論、女子の皆も」
そう言って彼にお茶を進める。勿論だけど、毒とか薬なんて入ってないよとアピールする為に、自分が先に飲むのは忘れない。
「ほぅ……やっぱり世界樹の葉で入れたお茶は旨い」
「……お主、今、何と申した?」
ん? 世界樹の葉で入れたお茶って言ったけど、なにか問題があっただろうか。
「問題もなにも、問題しか無いわ! どこの阿呆が世界樹の葉を茶にするのだ! 世界樹の葉など貴重品どころの騒ぎではないぞ!! は!? これは高度な心理戦か? 世界樹の葉ではない茶をだして、あえて世界樹の葉と言いっているのでは……」
んー……この島っていうか、俺達だと結構な数の葉を手に入れられるからなぁ。
世界樹がある場所へと顔を出すと、毎回「お土産だよ!」って世界樹の精霊が渡してくれるからね。だから、実は其処まで貴重品ではなかったりするんだけど……そういえば異世界では天変地異が起きているんだっけ。更にいうと、世界樹を守っていたエルフ達が故郷を追われていたって話だったし。
もしかして、異世界ではもう世界樹が手に入らない状況なのではないだろうか。そう考えると、たしかに貴重品ではないレベルで、もやは幻の一品といったモノの可能性が高い。
「ま、家では問題なく手にはいるんだよ。だから気兼ねなく飲んで良いぞ」
「む、むぅ……こ、このようなもので余は懐柔などされぬからな!!」
なんて強がって見せつつ、彼はお茶を一口飲むと、ふにゃりと表情を緩めた。
うむ、茶で陥落したのでは? そしたらここは追い打ちを掛けるか。確か冷蔵庫に最高と言えるプリンが出来上がっていたはず。
そうだな。胃袋を掴んでしまえば話はかなりスムーズに進むだろうし、ここでプリンを出すのは有りだろう。ただ問題があるとすれば……誰がプリンを我慢するかって事なんだよなぁ。何せ人数分しかプリンを作っていないからなぁ。
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