対策会議
修羅場? を乗り越えた春野さんだけど、彼女はそのレベル差を自らの燃料とし恐ろしさすら感じるほどの気合を入れたみたいだった。思わず「あわわ……」と言いたくなったのは仕方が無いと思う。
「七海と雪には沢山付き合ってもらうわよ」
ゴゴゴゴゴと、彼女の後ろでは炎が燃え盛っているような幻覚を目にするほど、彼女の心はレベリングに燃えていた。
しかも、目が笑っていない笑顔で夏目さんと冬川さんを指名するものだから、彼女達もただただ頷くのみ。
秋山さんはそんな春野さんに対して乾いた笑いを見せているだけという……なんとも不思議な光景が広がっていた。
うん、やっぱり俺のレベルは素直に答えるべきでは無かったのかな? なんというか、これは春野さんによる女子達のデスマーチが始まりそうで怖いんだけど。
……なんて思っていたら。
「望月君。お願いがあるんだけど」
と、俺の方へ春野さんからお声が掛かった。
一体何だろう? と戦々恐々としながら「どうした?」と聞いてみる。
「素材は大量に集めて来るから、あの泡が出る爆弾? を作って欲しいんだけど……出来るかな?」
「あー、あのシャボンボムね」
「そうそう、それなんだけど。で、出来れば毒バージョンで」
あぁなるほど。攻撃力を持たない春野さんは、少しでも何か出来る様にと道具を使う事にしたのか。
確かに毒属性の攻撃であれば、毒によるスリップダメが敵に入って行く。倒れるまでの時間が必要ではあるけど、確実にダメージを与える事が出来る分、パーティーに貢献していると言えるだろう。……しかしそれなら。
「麻痺系の毒物の方が良いと思う。どうせモンスターなら食肉には出来ないから、麻痺状態にさせてしまえば一方的に殴れるかな。ただ、今までは素材が無かったんだけど……」
ネズミに対して餌で集めようとした時、待っている間の時間を利用して色々鑑定をしてみた。
そして其処には、まだ手にした事のない素材も幾つかあったんだよね。で、その中には麻痺を起こすキノコや草などもあった。ただ、その時は目的が違ったし、モンスターに気が付かれない様にと物音を立てない為に、その場での採取は行わなかったんだけど。
「だからその麻痺を起こすキノコや草を採取して来て欲しいんだ。えっと、形は……」
レシピブックを取り出してある項目を開く。
実はレシピブックには素材一覧と言う項目があって、素材がどんな形をしているのかが絵で分かるようになっていたりする。……とは言え、これは錬金術師などの鑑定持ちなら必要がないのだけど、鑑定スキルが無い人に教える為に必要だから、このページがあるのだろうと思う。
実際に、今も春野さんに対してどんな形をしているのか説明するのに役に立っている。
とはいっても、スマホのカメラ機能を使ってページを撮影し、その画像をリンクで送信するだけなんだけどね。
「見た目はそんな感じだから、それを中心に集めて来てくれると助かる」
「わかったよ。麻痺かぁ……あ、麻痺にすれば雪が本で殴りやすいかな」
「……それは助かる」
こういった状態異常攻撃と言うのは実に便利なんだよね。麻痺もだけど、凍結させる事が出来れば一方的に攻撃が可能になったりする。
てか……凍結といえば氷魔法が有ったはずなんだけど。
「冬川さんは魔法にポイントを振って無いの? 氷魔法が使える様になれば、相手を凍結させて叩けると思うけど」
俺がそう冬川さんに問うと、彼女はがーん! と言った感じでフリーズしてしまった。
「……ま、魔法……召喚に極振り」
あぁ、なるほど。冬川さんはレベルアップで手に入れたポイントを全て召喚術に振ってしまったのか。
ただ気持ちは分からなくもない。俺もメインのスキルである錬金術に対して、一気にポイントをつぎ込んだからね。そして後から思ったんだよね「……あぁ、魔法にも振っておくべきだった」って。
使える魔法が増えたのを見てかなり衝撃を受けた訳だし。
「魔法は1ポイント振ると威力があがって、2ポイント目で最低威力の保証。3ポイント目でまた威力があがって、4ポイント目で使える属性が増える。だから後4レベルアップがんばれ?」
「……遠い」
「あー……特殊ジョブの魔法はそんな感じになっているのね。私は土術師と特化系の攻撃ジョブだから余り参考にはならなさそうね」
なるほど。秋山さんの土術師だとスキルポイントを上げた際に手に入る能力が違うのか。
でもそれもそうか。彼女が使える土魔法って種類が俺よりも多かったからね。そりゃ、ポイントを振った際も全然違うのも当然と言えば当然なのかもね。壁作ったり穴掘ったり出来るみたいだし。
「そうだ! 麻痺に出来るなら、あの血入りの団子も使える気がする!!」
「……七海ナイス」
「そうだね。ネズミの数が多くても、全員を麻痺にしちゃえば……うん、出来そうだね」
「うーん……そう上手くいくかしら? とりあえず、まずは素材を集めて実物を作って実験してからじゃないとダメだと思うわよ」
うん、俺も秋山さんの意見に賛成だ。
いきなり集団に使うよりも、一匹とか倒せる範囲の数を相手に試した方が良いと思う。
確かに自分の作ったモノだから、自信をもって効果があります! と言いたいところだけど、まだ机上の空論と言った段階だからね。一体どれだけ麻痺の効果があるのかもわからない。下手をしたら、道具にした時点で麻痺の特性すら消えてしまうかもしれない。
これこそ捕らぬ狸のなんとやらって言うんじゃないかなぁ。
「とりあえず、検証をする為にも素材が必要だから」
「あ、そうだね。それじゃぁ早速取りに行こう!」
「……おー」
春野さんが実にノリノリだ。てか、抑揚のない相打ちをした冬川さんだけど、こちらもやる気十分と言う事で良いのかな? あんまりそんな感じには思えない声だったけど。
とは言え、この麻痺にするという事でメリットが大きいのは、俺と春野さんと冬川さんだからね。普通に考えたら、やる気も出ると言うモノなんだろうけど。
「……でも、なんで19れべる?」
おぉぅ……その話題は折角流したのに。なんでぶり返すかなぁ。
正直、レベルに関しては不明なんだよね。確か12レベルになったのは、あの蜘蛛を倒した時になったから覚えているんだけど、19となると、その間俺は何をした? と疑問しかない。
拠点を移動する際には戦闘なんて無かったはずだし。こっちの拠点に移してからだと、基本は錬金術で生産をしていたはず。……戦闘とか、やってないよな? 撒き餌を撒いた時は既に19レベルだったし、そもそもその時も逃げ帰って来たから戦闘はしていない。
「生産?」
「生産でレベルが上がるのかしら? あのパーティー編成についての情報を見る限り、生産で経験値が入っているとはとても思えないわ」
うん、俺もそう思う。だけど本当に生産しかしてないはずなんだよなぁ……。
「もしかして、残っていたトラップとかに大物が掛かって、そのまま逝ってしまったとか? トラップを作ったのも仕掛けたのも俺がやった訳だし」
「ありえなくは無いのかしら……うーん、でも19は上がり過ぎよね」
それもそう思う。
ジャイアントキリングと言う事で、蜘蛛を倒した時に5レベル一気に上がった。とは言え、それでも5レベルだ。12から19という7レベル差は一体何なんだ? と言う話になる。それこそ、蜘蛛が2~3体罠にでも掛かっていたのだろうか。
うん、謎は尽きないな。それに、残っていた罠って何があるだろう? 海に流されてしまっただろう、湿気った焼夷爆弾と威力の低い爆弾ぐらいしか無いと思うんだけどなぁ。……あ、もしかして、爆弾が水中で爆発して魚が大量にプカーと浮かんでしまったとか? うん、それだと経験値的に少なそうな気がする。
「……こっそり狩った?」
「生産している時間が長いからなぁ……狩りに行ける時間が無い」
まぁ、何かの生産物にモンスターが引っ掛かったんだろうなと思う。
蜘蛛を退治した時にばらまいた毒物も……たしか、そのまま放置していた気もするし。きっとそう言ったものの積み重ねに違いないはず。うん、きっとそうだ。
「とりあえず、麻痺素材を集めて一気にレベルを上げてしまおう。冬川さんの4レベルぐらいなら直ぐじゃないかな」
「……氷魔法」
「私の魔法矢も色々と増えるかな。戦力が一気に上がれば狩り速度も上がるから、さっさと素材集めを終わらせよう!」
「うん、そうだね。私も早く2桁になりたいからね」
グッと両手を握る春野さん。
応援は生産物で頑張るとしよう。その為にもシャボンボムシリーズを充実させないとな。
ブックマークに評価等! いつもありがとうございますなのです!! m(__)mペコーン
やる気に満ち溢れる女子Aげふんげふん。エリカ嬢ですが、今までレベリングと言う面で言えば不遇だったので仕方がないですね。
景の錬金術が大前提とは言え、自分に出来る事を増やしてと考える姿勢を見せていなすが……正直、ヒーラーなのだからそこまでしなくてもと思わなくもないのは作者だけでしょうか?
と言う訳で、第二章は此処で終了です。安定化にトラウマに人と言うテーマでしたからね。




