お知らせとレベル
撒き餌の改善を行っていると、突如スマホから通知音が鳴った。
ただその音は、いつものリンクによるやり取りでは無く、何かこう目を通さないといけないと思えて来るような不思議な音だった。
とりあえず作業をいったん中断して、俺はスマホを手に取ってみた。
「えっとなになに……お知らせ?」
スマホの画面には〝重要なお知らせ〟と言う文字がでかでかと表示されていた。
一体何なんだ? と疑問に思いつつも、そのお知らせのリンクをタップしてその内容を確認してみる。
「あー……なるほど、そう言う事かぁ。確かに今まで無かったことの方が問題だったよなぁ」
お知らせのタイトルには、〝ご要望にありましたパーティー設定を実装しました〟と書いてあった。
もうこれだけで何が言いたいか分かったのだが、念のためにその内容もチェックしていく。
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パーティー設定について
沢山のご要望により、パーティー編成が出来るようにいたしました。
これは、生産職や支援職の方々のレベルが上げにくいという報告と、その改善の為にパーティー編成を可能にして欲しいという要望があった為となります。
メリット
パーティー編成を行うメリットですが、こちらは経験値の分配設定が可能と言うモノがございます。これにより、育てにくかったジョブについてしまった方でも、仲間の協力を得てレベルを上げる事が可能となります。
マップアプリにパーティーメンバーの現在地が表示されます。これにより迷子が減るでしょう。
デメリット
特にございません。あるとしたら、経験値分配で寄生だ! と叫ぶ馬鹿が現れることぐらいでしょうか。
設定方法。
パーティーはリンクアプリから作成する事が可能となっております。
リンクアプリにある項目にパーティーを実装しました。この項目にパーティーを組みたい相手へ要請を飛ばしていただき、相手が許可した際に編成が出来ます。
パーティーのページにある設定ですが、ここから経験値の配分を設定する事が可能で、選べるのは3つとなっています。
1つ目:個々で取得。
此方はこれまでと変わりが有りません。では何のためにパーティーを組むのかと言うと、パーティー編成のメリットに書かれている様にマップアプリにそれぞれの現在地が表示されます。仲間の位置が知りたいだけの方に最適でしょう。
2つ目:貢献度により変化。
これは戦闘時の貢献度で配分される経験値が変化します。どれだけ相手にダメージを与えたか、敵のタゲをキープしたのか、的確な支援が出来たかなどなど、その項目は沢山ありますが、公平なシステムといえるでしょう。
3つ目:平等に分配。
こちらは少々戦闘職には理不尽なシステムかもしれません。ですが、その戦闘職を支える支援職や生産職のレベルを上げる為には最適と言っても良いでしょう。
この度は此方の不完全な設定の為、皆さんに多大なご迷惑をかけ申し訳ございません。
では、今後も素晴らしい孤島ライフを送られる事を。
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……こ・れ・は「詫び石寄越せ!」と、ゲームなら叫んでいただろうなぁ。
てか設定ってなんだ設定って。これがゲームならリアリティが有り過ぎなんだよ。フルダイブ型のVRゲームなんてまだまだ実装されていないんだぞ。あんなのは現状だと物語の中だけの話だ。
とまぁ、突っ込みは一旦棚の上にあげておくとして。
これで女子達……それも春野さんには嬉しい話だろうな。彼女はヒーラーで、そのジョブの性質上全く攻撃力を持ち合わせていなかった。
お陰でかなりレベリングに悩んでいたのだけど、今回のこのパーティー実装で彼女もレベルが上げやすくなっただろうね。
ヒーラーってパーティーの保険だからなぁ。実際には仕事が無い方が良いなんてジョブでもあるんだけど、居なかったらそれはそれで不安を覚えちゃう存在だしね。
ネトゲでそんなヒーラーを寄生虫だ! と言う人は確かに居たって聞いた事がある。マネーに物を言わせて回復薬を大量に買い込むタイプの人とか。まぁ、何かのスレッドで見た内容だけど。
「さて、それにしても……パーティー編成か。この項目1と言うのは俺には便利な感じかな」
連携しての行動なんて出来ない身としては、この経験値を個々で獲得というのは丁度良いと思う。
一緒に行動はしないけど、何かあった際お互いの位置がすぐにわかるようになるというのは、それだけでメリットがあるからね。
例えば、回復薬が欲しいという要望があったり、俺が森の中で動けなくなった時に救助を求めるとしても、場所が分からないと時間が掛かり過ぎるからね。最悪、お互い全く合流出来ないなんて可能性もあるし。
だから、もし複数のパーティー設定が出来るのなら、彼女達に2つパーティーを作って貰うと良いかもしれないね。
しかし、何というか今更な話だよなぁ。あぁ、だからこのお知らせを行ったシステムがふざけた話をしていなかったのかな。……まぁ、デメリットの場所にちょこっとだけ毒が紛れていたけど。
「さて、確認もしたし中断した作業を再開するかな。今の俺にはこの情報はあまり関係なんて無いし」
今頃女子達は悲鳴を上げているかも。
狩りに出ている最中に叫んだら、それはそれで問題なんだけど……内容的には叫びたくなると思うし。あぁでも、もしかしたらスルーして狩りをしているかも? スマホを見る余裕なんて無いかもしれないしね。
ただそうなると、帰宅後に違う意味でも叫ぶんだろうなぁ。あぁ、あの時見ておくべきだったって。そうなると、喜びと悲しみが混ざった不思議な悲鳴になるんだろうね。
もしそうだと、きっと帰ってきたタイミングが直ぐに分かりそうだ。何せ悲鳴と言う名のチャイムが鳴る訳だし。
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「……ボクは見るべきと言った」
「えぇ言ったわね。確かに雪はそう言ったわ。でも! あのタイミングでスマホを見る選択肢は無かったでしょう!? だって、ネズミ達が怖い目をして餌に食らいついていたのよ!!」
「そうなんだけどさ、今のエリカを見るとねぇ」
「……燃え尽きた」
真っ白に燃え尽きたかのような姿で座り込んでいる春野さん。うん、彼女はたった今スマホを確認したという訳だね。
そして、パーティー編成と言う重要な項目を見て衝撃を受けた訳だ。何故かと言うと……。
「……ボクは10レベル」
「私は11になったよ。桔梗が13だよね。で、エリカが……まだ一桁なんだよね」
春野さんの場合、攻撃方法が無い為にネズミの群れに対して攻撃方法が無かった。だから、言ってしまえば一人だけレベルアップを今回していないという事になる。
秋山さんは土術師と言うだけあって、今一番火力が高い。だからこそ数を狩る事が出来、その分レベルがあがったんだろう。
夏目さんと冬川さんは攻撃手段を持っている。弓と初級魔法だ。とは言え、ほぼ単体攻撃みたいなものだから、その狩りスピードは秋山さんに届かずだったのかな。だから少しレベルが低いんだと思う。
「え、エリカどんまい……」
「あはは……私がんばったよね? 回復魔法をかけて、余裕があったら素材を採取して……うん、でも私、まだレベルが7なんだよ? どうしてだろう」
ここは、むしろ叩いたりしていただけで7レベルまで上げた事をほめるべきでは? と思わなくもないけど、周りのレベルアップが早いから、彼女には何の慰めにもならないかも。
あぁ、そうだ。これ、絶対に俺のレベルを伝えたらいけないのでは? 自分も知らない間にレベルアップしていましたなんて絶対に口には出来ないし。
しかし、世の中と言うのは割と無常なモノで……。
「……もっちーはいくつ?」
などと冬川さんが、皆にも聞こえる声で尋ねて来たではないか。
どうしよう? これ、誤魔化すべきかな? それとも素直に答えるべきかな。……答えたとして、これは春野さんへの止めになったりしないよな?
ブックマークに評価などなど、いつもありがとうございます! ペコリン(o_ _)o))リーン
ようやくパーティーシステムが実装されました。
ゲームの様でゲームでは無い世界。一体何なんだ! と言う話ではありますが、これで支援や生産職も育つ事が可能になりましたね。よかったよかったヾ(*´∀`*)ノ