モンスターと団子
調査の結果。ここには少なくとも3種類のモンスターが居る事が発覚した。
先ずは夏目さんを傷つけ、次の日には不自然な形で魔石となってしまった〝爪鼠〟かな。
彼等は基本的に木の上に居るらしく、上から奇襲を仕掛けるのが得意なんだとか。上から来るぞー! ってやつかな。
発達した爪が武器の様なんだけど、実はそこまで威力は高くないみたい。軽く切り傷を負う事はあるけど、その爪で切り裂かれるとか貫かれるなんて事は無いんだって。
これは彼等の攻撃を木の板やら動物の肉で受けてみた結果わかったんだとか。女子も無茶をするなぁ。
ただ、そこまで攻撃力が高くないのは、彼等が基本的に狩っているのがウサギやヘビイチゴモドキだから。っと、これも丁度狩っているのを目撃する事が出来たらしい。
その情報から、ネズミの脅威度は低ランクと言う扱いでも良いかななんて話をしている。
次のモンスターはホーンラビットまたは一角兎。
動物のウサギと違って、頭から角が生えている奴なんだけど、サイズもただのウサギよりも大きいのだとか。
で、そんな一角兎なんだけども、強さは現状解っていない。と言うのも、女子達は確認だけして狩りはしてこなかったんだって。まぁ、狩っていても粒子化して魔石が残るだけなんだけどね。
ただ言えるのは、アクティブなモンスターでは無いそうだ。基本的には草をモグモグと食むっているだけなんだとか。あれ? 挑発してくるウサギより可愛いのではないだろうか。
こっちのウサギは、危険度無しでよさそう。ただ、今後次第ではちょっと変わるかも。……現状、このウサギを狩る気にはならないかなぁ。
そして三種目というのが、ちょっとこいつだけ難易度違いません? と言いたくなるようなモンスターなんだとか。
そんなモンスターの見た目なんだけど、全身がごつごつした石で出来た体。うん、ゴーレムだ。本当になんでこんなところに居るの!? って、聞いた時には思わず叫びそうになってしまった。
ただ、そんなゴーレムも遠目でちらりと見た程度だそうで、その力とか能力は未知数なんだよね。……鑑定でも出来れば話は別なんだけど、正直鑑定のレベルが足らない気がする。これは、スキルポイントを振るべきだろうか悩むな。
とりあえず、今はなるべくゴーレムに近寄らないようにしようって事で話が落ち着いたかな。
とまぁ、現状確認出来たモンスター事情がこんな感じ。てか、あの蜘蛛は居なかったんだな。
正直、蜘蛛は対策があるから、上手くやればレベリングが出来るのにとは思う。ただ、あの身体能力を考えると危険な気もするけど。……何せあの時は、蜘蛛の移動範囲を利用して狩れた訳だしね。
「とりあえず、レベリングの対象は当分の間ネズミになりそうかな。まぁ、アレは間違いなく敵対してくるから狩りやすいしね」
よし、そしたらそんなネズミを集める事が出来るモノを用意すようか。とりあえずレシピを確認してみるとして……。
レシピブックを嘗め回す様に確認していく。しかしそこにはピンと来るような面白いモノが無い。となると……これはオリジナルレシピを開発する必要があると言う事だろうか。
しかしネズミを集める何かねぇ。やっぱりそうなると餌だろうか? こう、肉団子的なモノとか。確か女子達も言ってたけど、奴等はウサギやヘビイチゴモドキを狩っていたそうだし。
となると……レシピは肉をベースにするとして、後は思わず食べたくなるような匂いがすると良いかもしれない。
「あ、でも人と獣じゃ匂いに対する感覚が違うよな」
となると、香草やら醤油的な匂いがするよりも……って、それらは今俺が切実に欲しいモノだけど無いんだよなぁ。あぁ、香り立つ魅惑の味噌汁とかが飲みたいよ。飲んだことないけど。
「って、そんな事より! モンスターとかの嗅覚!」
もしかしたら、鮫とかみたいに血の臭いに惹かれて来る可能性が有るかもしれない。となると、一つは血を大量に混ぜ込んだ肉団子とかはどうだろう?
そうだ! 次いでに毒も混ぜ込んじゃえ。それで討伐でき、レベルも上がるならかなり楽だしね。
よしよし、イメージが湧いてきた。どんどんと色々な種類の撒き餌を用意してみるとしよう!
錬金術を使っていると、本当に時間というのを忘れる。
今、俺の目の前にある錬金台の上には、大量の餌が入った竹筒が山積みとなっていた。
あぁ、実に素晴らしい。竹筒にはどんなものが入っているか書かれているから分かりやすいし。これだけの種類を用意したのだから、どれかはヒットするだろうと思っている。
「えっと、こっちが〝肉団子(無)〟と〝肉団子(血)〟で、こっちが〝肉団子(毒)〟。で、こっちは〝肉団子(血・毒)〟か。で、左側のがスライス肉と右側角切り肉で、どちらも〝血〟と〝毒〟と〝血・毒〟に漬けこまれているっと」
正直(毒)には期待していない。と言うのも、毒自体に特殊な匂いが出来てしまっているから、なんか微妙な香りに肉がなっているんだよな。
なんでか分からないけど、この島だと無味無臭の毒ってのは作れないっぽい。というか、毒薬を生成するとなぜか臭いが強烈になるんだよね。まぁ、毒ってすぐわかるから良いけど。
そんな強烈になったはずの臭いなんだけど。肉と合わせる事で少しだけ薄れる。でもやっぱり分かってしまうんだ。これ、何か仕込まれているぞ! って。
でもそれを更に血と合わせる事で……違和感はだいぶ薄れる。とは言え、全く無い訳では無い。薄れるだけだ。
だから、やっぱり一番期待大なのは〝血入り〟か〝無添加〟のどっちかだろうな。これなら安心して食べる事が可能だろう。なんなら〝無添加〟なら俺達が食べても大丈夫な物でもあるからね。
そんな感じで作業をしていたら、何やら「じゅるり……」と言う音が聞こえて来た。
ん? と思って背後を見ると、扉の隙間から冬川さんが涎を垂らしているのが確認出来てしまった。あぁ、臭いにつられたのは何もネズミだけでは無かったようだ。
スッと直ぐに顔をそらしてから、そっと〝肉団子(無)〟が入った竹筒を数個ほど手に取る。
そして、ゆっくりと家から出て、外の焚火が在る場所へと向かう。
「……じー」
うん、ヘビイチゴモドキの件から分かっていたけど、この子は間違いなく食いしん坊だ。
そして、その食べ物に対する嗅覚が半端では無い。……もしかしたらあのヘビイチゴモドキも、冬川さんによって狩られ、しっかりと食べられていた可能性があるな。思わずあの時は止めたけども、余計なお世話だったかもしれないなぁ。
そんな事を考えながら、肉団子の入った竹筒を火で炙って行く。すると次第に良い匂いが辺りを充満させていった。
塩で味付けをしだけのただの肉の団子。実際に何の素材も他には練りこんでいない。なので味としては超が付くほど薄味なんだけども。
「……うまうま」
何とも幸せそうな雰囲気を出しながら、肉団子を味見する冬川さん。うん、これならネズミも集める事が可能なんじゃないかなぁ。なんて、なんの根拠もない自信が湧いてきた。人とネズミは違うと言うのにね。
ただ、そんな匂いと冬川さんの声に釣られたのか、他の女子達も集まって来たようで。
「あ、雪だけずるい!」
「……味見」
「味見って……それ、人数分しかないみたいだから、雪は雪の分を食べただけじゃないかなぁ」
「……がーん」
ま、この肉団子(無)は最初から皆に分ける為にと、余分に用意しておいたものだから問題無かったりする。
と言うよりも、肉団子を作っていて自分が食べたくなっちゃったんだよね。毒や血入りだってのに。だから急遽だけど無添加も用意したという裏があったりする。
しかし、やっぱり味は薄い。タレ付きのミートボールとかを思い出すと、凄く物足りないのだけど……。だけど、こうして美味しそうに食べているみたいだし、作って正解だったみたいだね。
ただ、もっとこう色々と調味料やら食材が欲しくなるなぁ。後は料理人のジョブかスキルかな? それがあれば、更に食が彩るだろうしね。
ブックマークに評価などなど、ありがとうございますなのです!ペコリン(o_ _)o))
現実世界にも、対ネズミ用の団子があります。〝ホウ酸団子〟の事ですね。
これ、絶対にお子さんの手が届かない場所で管理してください。間違って食べたら大変ですので。え? 今の時代ネズミは見ないよって? いや、出る処は出ますからね。