異世界人からみた日本という国
――この世界は全くわけが分からない。
そう異世界から来た者達が思うのも当然だろう。
海を見れば帆の無い鉄の船が、空を見ればこれまた翼が有る巨大な鉄の鳥が、陸では馬の無い馬車。中にはその馬車がとてつもない長さで連なっている物まである。
そしてまた、住居も巨大な大木を遥かに超える高さの建物。人々は丸でゴミの……蟻や蜂の巣を思い起こすようなレベルで都に住んでいる。
これを驚くなと言う方が無理があるのではないだろうか。
全く意味の分からない世界に来た。たしかにこの光景が夢で無いのであれば、自分たちはまさしく〝異世界〟へと迷い込んできたのだろう。そう信じられる……いや、信じるしかない景色。
言語が違う? 来ている服が違う? 最初にこちらの世界の人間と出会った時の衝撃など、どれほど可愛いものだったのだろうか。彼らの心情は今、まさに混乱中といった感じだろう。
しかし、しかしだ。そこは彼らも異世界で国を統治していた者達である。外には一切、困惑しているという表情を出さず、にこやかに、もしくは泰然とした態度で行動をしている。
取り繕っているとも言えるかもしれないが……だが、それでも〝舐められたら負けだ〟というプライドとでも言うのだろうか? それとも、自分達と共に付いて来てくれた島に居る者達の事を思ってだろうか? 彼らは彼らの役割を果たすべく行動をしている。
「駄目ですね。顔は作れますが、手の震えが止まりません」
「はは……姫様。私もです。ですが、今は」
「分かっています。手を振っていれば、まだ震えは隠せますが」
緊張から来る震えではない。いや、たしかに緊張もあるだろう。しかし、この震えの根本は〝恐怖〟から来るもの。
いったい自分達は何を見せられているのだろうか? どんな世界に迷い込んでしまったのだろうか? 今後、この世界でやっていけるのだろうか? そういった不安が彼らを纏わり付き、その結果が震えとなって現れてしまっている。
「以前、おとぎ話で聞いたことがあります。異世界から来た者の世界の話を……アレは本当だったのですね」
「私もあの話は嘘や出鱈目だと思っておりましたが、この光景を見ると嫌でも事実なのだと理解させられますな」
「そうですね。そして、そうなると……あのお話にあった〝森林を一気に伐採出来るだけの武器がある〟と言うのも……」
「地中深くへと差し込んだ後に、土を天高く飛ばすと言うのも、また事実なのでしょう」
そして、この世界に対する武力への恐怖。
話自体は多少改変されている内容もあるだろう。だが、その内容の大半は事実である。
彼らの言っている〝森林を〟と言うのは燃料気化爆弾の事で、デイジーカッターなどと言われている物。〝地中深く〟と言うのはバンカーバスターの事を指している。
いったいどんな地球人が異世界でその話を語ったのか……間違いなく、ちょっと特殊なタイプの人なのだろうと思われるが、その者が語った話が現実なのでは? という考えが、彼らの脳裏にチラチラとちらついていく。
対策などどう取れば良いのかわからない。話によれば、あの鉄の鳥が幾つもの国を挟んでいようと、それらの武器を運ぶことが出来る。そう考えるだけで……。
「敵対してはダメです。敵対してしまえば……」
「この後の話し合いが難しいですな……我らとて、生きる為にはある程度の利を得なければ。ですが、相手の出す要求次第では……」
彼らは要求について、異世界基準で物事を考えてしまう。
圧倒的な力を見せる国。もしくは争いに勝った国が出す要望。それは、かなり理不尽なモノと言うのが彼らの常識だ。国全体が強者の奴隷となる。その様な話も当たり前のようにある。
実にシンプルと言えばシンプルだろう。シンプルが故に、実に残酷な世界でもあるのだが……。
異世界へと渡った地球人は思っても居なかっただろう。まさか自分の語った内容が、ここまで異世界人を恐怖のどん底へと落とすなどとは。ただ……。
「友好的に行きましょう。私達にはあの島で生きていく以外の道がありません。そしてこれから話し合いをするのは、あの島に住むことを許可してくれた相手なのです。無理難題を押し付けてくるような相手では無い……と信じましょう」
信じてもらうにはまず信じる所から。そう彼らは自分達に言い聞かせ、なんとか心の平穏を保つのであった。
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