事件です?
ふふふんふふふんふんふふーん♪ と、鼻歌を歌いながら錬金鍋に錬金杖を突っ込みかき混ぜる。
一体何を作っているのかなんて話は横に置いておこう。だって……以前やった事をなぞっているだけだから。うん、強固な壁を作る為に、またレンガや糊作りの日々なんだよ。これはもう、鼻歌でも歌わないとやっていられない。
しかもだ。今回は以前よりも必要とする量が多い……まぁ当然だよな。家用以外にも、周囲に壁を作るためにも必要だもの。そしてその覆う必要がある範囲がまた広い事。高くなっている部分を全て囲うつもりだからね。
因みに、スキルポイントについての話だけど。
これは鑑定に1を振ってみた。すると何やら鑑定範囲と言うモノが広がったみたいだった。……範囲とかあったんだ。なんて思ったけど、とりあえず使い勝手を試すために、残ったポイントは振らずにおいてある。
範囲拡大がどんなものかをチェックしてから、魔法に振るか鑑定に振るかを判断しようって事だね。
なので現状、スキルポイントは6ポイントを残してある状態かな。
と言う事で、今はスキルポイントについて語れることは殆どない。なのでこの話はまた今度スキルポイントを振った時という事かな。
兎に角、今俺は自分の家(仮)にて作業に没頭して居る訳だけど……そんな中、何やら外が騒がしくなった。
少し聞き耳を立ててみると、女子2名が素材や食料集めから帰って来たようなんだけど、何やらその様子が喜びによる騒がしさとか、危険な目にあったといった恐怖から来る騒がしさではなく、どちらかと言うと戸惑いと言った感じのモノ。
なので、今回は怪我と言う事でも無いのだからと慌てる必要も無いと判断し、どのような会話をしているのか聞いてみる。
「ねぇ……この石なんだと思う?」
「普通の石じゃないよね? かといって宝石かといわれたら違う気がするよ」
「……血の色」
「ブラッドストーンなんて呼ばれる石もあるのだけど、この石の場合は血の色をしながらも物凄い透明度なのよね。一体何なのかしら」
何やら石を発見してきたらしい。それも宝石に見えるようなモノを。
「小指の爪よりは小さいみたいだね」
「誰かが中途半端に研磨したって事は無いと思う。そんな感じの石だけど。てかこの石……実は地面の上に無造作って感じでばら撒かれてた」
「……それマ?」
「本当なのよ。不規則にね。中には濡れているモノとか、潰れた草の隙間にあったりもしたわよ」
ふむ……小さくて微妙に研磨したかの様な感じかつ、透明で……ってそんな石を俺は見た事が有るような。
えっと何処でだっけ……。たしか、この島に来てからの事だったハズなんだけど。
ここに来てからの記憶を脳内で順に再生していく。そこで普通には倒せなかっただろう相手の事を思い出した。
「あぁ! あの蜘蛛だ。蜘蛛が何か粒子化して消えた後に落ちていた奴!」
そこには〝蜘蛛の糸〟と〝蜘蛛の毒牙〟が落ちていた。そしてそれらと一緒に〝蜘蛛の魔石〟という宝石みたいな石がドロップしていた。
そうだった。この〝蜘蛛の魔石〟は彼女達の会話に有る様に、小さく微妙に研磨されたような感じの透き通った石だ。
「えっと確か……この箱の中に……っと、あった! うん、やっぱりそうだ間違いない」
記憶と同じか確認する為に現物をしまっておいた場所から取り出す。そして、その見た目から自分の記憶に間違いが無かったと判断出来た。
しかしそうなると……女子達が見つけたその石と言うのは魔石の可能性がある。
となると、まずは彼女達と接触してその石を鑑定する必要があるだろう。……口に入れるなんて事は無いと思うが、蜘蛛の魔石の鑑定結果には〝食べたらお陀仏〟なんて言葉が表記されていたからな。
なので俺は、作業を中断して早速女子達の元へと向かう事にした。〝蜘蛛の魔石〟を手にしたまま。
うーん、これ一体何に使えるんだろうね? なんて会話をしている女子達。
冬川さん辺りは「……飴なら良いのに」なんてことを言っているけど、飴では無いから絶対に口の中に入れないように。
「えっと、ちょっといいかな? その石を見せて貰っても良い?」
「あ、望月君。……そうだ! 丁度良かった。これ鑑定してもらえるかな?」
「ごめんね。話し声が聞こえていて……それで、鑑定しようと思って出て来た」
「あー……騒がしかったかな?」
「いや、それは問題無い。ちょっと気になるワードが聞こえたから。それが無かったならスルーしている」
そんな訳で、俺は女子達からその石を受けとった。
うん、見た目はやっぱり魔石とよく似てみる。とは言え、見ただけで分かるモノではない。やはりしっかりと鑑定する必要はあるよな。って事でレッツ鑑定。
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爪鼠の魔石(低品質)
モンスターの体内に精製される石。魔力の塊と言っても良い物だよ!
決して口にしないように! 食べたら一発でお陀仏だから。ただ、何かを作るのに必要な物だからね! って、これは〝蜘蛛の魔石〟の時にも言ったから分かっているよね。うん、忘れたなんてお馬鹿さんじゃないよね? 私……信じているからね(*^-^*)ニコニコ
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さっきまで魔石の存在すら忘れていたけど何か問題でも? それに、魔石の事を思い出してからは直ぐに即死だという事も思い出したから問題なんて無いよね。
とまぁ、やっぱり魔石だったかぁ。しかも〝爪鼠の魔石〟となっているって事は、やはり夏目さんに攻撃をしたネズミとやらはモンスターだったか。
しかし……なんで〝爪鼠の魔石〟がばら撒かれていたのだろう? もしかして、何かと争ったとかそんな感じ? って事は、結構危険な存在が近くにいたという事なのかな。
と、今は女子達にも情報の共有をしておかないと。
「因みに、鑑定結果だけど、これは〝爪鼠の魔石〟というアイテム。動物には無くてモンスターのみが持つ石。それで、これは絶対に口にしない様に。食べたら一発で逝ってしまうからね。……っと、因みになんで俺が話を聞いて気になったかっていうと、こっちの石なんだけどこれは〝蜘蛛の魔石〟って言って、前に倒した時に手に入れたんだ」
「あ、そう言えば危険な存在がいるから絶対に相手にしないようにって言ってた奴だよね。倒してたんだ」
「へぇ……あ、魔石って蜘蛛の方がネズミのよりも大きいんだ」
「……不思議」
「不思議……そう、雪の言う通り不思議な話だわ。だって、これがネズミの魔石だと言うのであれば、そのネズミは倒されたという事よね? 一体誰が倒したと言うのかしら」
うーん……と皆で頭を悩ませる。
「質問だけど、この魔石を拾った場所には何か無かったかな? こう、大きな足跡が有ったとか」
「……不自然に濡れていたり、草が押しつぶされていたりしたけど……足跡までは見つからなかった」
「七海、他にも微妙に焦げた場所とかもあったわよ。後は地面が抉れた場所もあったわね」
なるほど。その場にあった内容だけだと、一体何があったのか分から無さすぎるよ。
超が付くほどの局地的な場所にて、小さな災害でも起きましたと言われている様な、そんな気にすらなる情報なんだよね。全く持って特定が出来ない。
「他のモンスターでも居るのかな」
「うーん……でもそんな気配は全くなかったと思う」
「そうよね。私も敵意とかそう言ったモノは全く感じなかったわよ? 採取もスムーズに進んでいたわね」
「そうなんだよね。昨日みたいに上からネズミが襲ってくることも無かったし、そういえば地面にもヘビイチゴモドキが居なかった?」
「言われて見れば……そうね。あのヘビも今日は全く見かけなかったわね」
採取に出ていたのは夏目さんと秋山さん。
しかし両者とも、よく考えたら不自然だったと口にした。余りにも採取がスムーズに進み過ぎたんだとか。
「ちょっと気になるし、明日からの採取は逆側に行った方が良いかもしれない。何が居るか分からないから、要警戒で」
「そうだよね……あぁでも! 川側じゃなくて良かったぁ。そっちだったら水の確保が大変だったよぉ」
「……それはそう」
「ただ、そっちもしっかりと警戒はしておかないと! 獲物が居なくなって移動してるかもだし」
「そうね……まだ日は登っているし、今からでも少し調査しておきましょうか」
しかし、一体何なんだろうな? 強いモンスターが出るかどうかなんて、現状判断が出来ないし。というより、動物も割と多い場所だから、そんな天敵となりえるようなモノなんて居ないと思っていたんだけどね。
てか、動物達は大丈夫なのかな? いなくなったら……まぁ、お肉は現状ストックが有るから当分は大丈夫だけど、居なくなったら欲しくなった時に補充するのが大変だし。
割と安全な場所だと判断したんだけどなぁ。やっぱり色々と解放されたみたいだから、予測不可能な事が起きやすいのかもしれないね。
ブックマークに評価などなど、お礼申し上げます(*'ω'*)
犯人は一体誰なんだ? と、主人公や女子達はまったく気が付いておりません。そう、主人公の景は気が付いていないのです。
犯人ハオマエダー! と言いたい所ではありますが、全てはスキルがやった事なので……。彼はなーんにも覚えていないのですよねぇ。なので、魔石の回収もしていなかったという訳です。




