新しい場所での作業
この島に来てから四週間目に突入。
俺達は、拠点を立てる為の目的地へたどり着き、今はせっせと素材を使って拠点の充実化を図っている。
拠点を立てると選んだ場所は実に理想的な立地。
周囲よりも小高い場所となっていて辺り一面が見渡せる。そしてまた、程よい距離の場所に川も流れており、森からもそう遠くない。
ただ少し問題があるとしたら、海が結構遠くなってしまった事かな。海が遠くなったことで塩の生産が少し大変になってしまったからね。
とは言え、安全には代えられない。多少の不便さが有っても、これだけの土地は他にないのだから。
因みに、この場所へとたどり着いたのは、俺達が出発してから3日目の夜だったりする。なので、元の拠点からは程よく遠いと言った感じかな。……まぁ、森の中を突き抜けて来たので、日にちに比べて其処まで離れているという訳でもないけど。
「この場所には跳ね橋を作るんだっけ?」
「そうよ。高さを利用するためにも、更に周囲には堀を作っておくの。私達の移動は跳ね橋を利用するのだけど、その為にも拠点には誰かしらが必ず残るという感じに今後はなるわね」
「門じゃだめなの?」
「門も良いけど、そうなると橋と言う通路が出来てしまうわ……橋を渡る瞬間にその橋を壊す前提なら別だけど、そんな破壊出来るモノは今は無いのよ」
ぶっちゃけ、この計画を立てたのは秋山さんだったりする。
いやいや、壮大すぎじゃないか? とも思ったけど、確かに安全面を考えるとね。木材は大量に必要となるけど、今の俺達の能力を考えたら集められない事は無い。
「とにかく! 今はテントも有るから家は後回しで良いわ。まずは安全地帯をつくる事を重点的に行うのよ」
グッと拳を天に向け、秋山さんは女性陣を鼓舞していく。
そうそう、テントは一つしかないのだから、俺はどうするんだ? という話だけど、それについてはしっかりと対策が出来ていたりする。
俺の部屋は、4畳半から6畳ほど有れば良い。後々は立て直す予定だけど、今は寝るスペースとスキルで召喚する錬金台や鍋が置ける場所があれば良いのだから。
なのでここに来て直ぐアイテムボックス内にある丸太を利用し、さくっと簡易のログハウスを完成させた。ま、99本もあれば十分に足りるしね。
いやなに、まだまだ同じ空間で寝るとか無理がありすぎるからね。なんとか顔を見ずに会話が出来るようになった状態だし。
「とりあえず、部屋は出来たし。この土地も結構広いからな……農業に畜産を行うのも多分問題は無いかな」
とは言え、それを行う為には水の確保が必要なんだけどね。
「……もっちー先行」
「先行?」
「あー、それは先の事を考えすぎって感じかな」
「なるほど。確かに、自分で言いながらまだ早いかなとは思ってたよ」
とは言え、将来設計と言うのは必要だからね。ある程度の枠組みは考えておかないと。
しかし……それにしても、ここに来て秋山さんがとても輝いている。
彼女は自分のジョブを最大限生かして、堀を掘ったり壁を作ったりと、それはもう八面六臂の活躍と言っても良い。
恐らく彼女、スキルポイントを土魔法に極振りしているんだろうな。そして多分、カンストしているんじゃないかな。
現状、ジョブレベルやスキルポイントについては、お互いに公開していなかったりする。
と言うのも、これは信用といった問題が付いてくるからね。何処まで出来るのかという上限が分かってしまえば、対策をとる事だって可能だから……とは言え、それは少し前までの話。
こうして彼女達と話してみたけど。たぶん、彼女達に俺の手の内を話しても問題無いのでは? と思わなくも無いんだ。ただ、まだ少し躊躇っている部分もあるけど。
でもそれは、きっと彼女達も同じだと思う。彼女達もまた、自分からジョブレベルや習得したスキルの話を振って来ない。でもこれって、お互いタイミングが無かったとも言えるけどね。
ただ、この事も今後の事を思うと、何処かで情報交換しておくべきだろうね。お互い出来る事と出来ない事を把握しないと、何処かで失敗を起こしてしまうかもしれないから。
しかし……俺は彼女達を信用しているのだろうか? 他の人とは違うと思えるようになったし、大丈夫だと言える関係ではあると思う。だけどそれって……。
『クケ! 景良いか考えすぎているぞ? お前は女子達を利用し、女子達に利用される関係で良いんだ。それでお互いの安全が買えるんだから問題なんて無いだろう? 信頼や信用なんてもんは、積み重ねた実績から生まれるもんだ』
『何を言うのですかこの悪魔! 景よ聞きなさい。まだまだ貴方と彼女達の関係に信頼関係など築けていません。警戒するのです……良いですね? ポイントの為に仕方なく協力しているのですから!!』
おおう……お久しぶりな天使と悪魔だ。
しかし、確かにまだまだ信頼を寄せるにはこの期間は短い。ただ、部分的には信用しても良いモノがあるのも事実。ふむなるほど……結局のところは、お互い出来る事を頑張りましょうという事で良いのかな。
『おう! その通りだぜ。今出来る事を全力で行う。これが生き残る事に必要だってのは理解しているだろう?』
『甚だ遺憾ですが……全力で事に当たるという点においては悪魔に同意ですね。えぇ、遺憾ですが』
しかし、自分の出来る事を全力でか……俺の出来る事と言えばなんだろうか。
「やっぱり錬金術だよなぁ……そういえば、道中に見つけた素材でレシピとか増えて無いかな」
「……レシピ増えた?」
「それを確認するべきだろうね。もしレシピが増えていて、しかも使えそうなモノならどんどん作っておくのが良い」
「素材調達が必要なら言ってね。なるべく錬金術に集中した方が作業も進むだろうし」
「わかった。必要な物が有ったらお願いするよ」
さてさて、一体何か増えていないだろうか。いや、オリジナルレシピも有るから、ある程度は自由に物を作れるけど……やっぱり、レシピブックに乗るようなモノの方が安定して作れるし使えるからね。
なので、多少の期待を胸にレシピブックを開いてみる。
「えっと……あぁ、なるほど。これはヘビイチゴモドキを鑑定したから、それを使ったレシピが解放されているみたい」
「……イチゴ!」
「雪……食べる事が出来るモノじゃないからね? あれ? でも蛇って事は食べられるのかな?」
「レシピには皮と牙を使った物があって、蛇肉は……たぶん食べられるんじゃないかな」
もしかしたら毒が有るかもしれないから、肉にしてからもう一度鑑定をする必要があると思うけど。一応、本体が生きている状態でも鑑定には毒があるとは無かったけどね。
「……捕まえる?」
「いや、今は良いかな……皮も牙も特に今必要と言う訳では無いタイプの物だから」
「……残念」
「ま、その内だよその内! というより雪って蛇肉を食べたいの?」
「……少し」
冬川さんはゲテモノ食いが大丈夫な人なのか。いや、俺も蛇やワニぐらいなら食べてみたい気もするけどね。
ただ、だからと言ってバロットとか猿の脳みそとかキビヤックは食べたくないかなぁ。あ、あと昆虫食も出来れば避けたい。特にGとか。
とは言え、芋虫とかは覚悟を決める準備は出来ているのだけど……この環境なら、とりあえず食べる事は無いかなと思っていたりする。
「ちょっと雪! 手を動かしているの? さっきから口ばっかり動かしていないかしら」
「……ばれた」
「バレたじゃないわよ……全く休憩が必要なのは分かるけど、望月君のやる事が気になったからって邪魔だけはしない様にね!」
「……あい」
さぼりに来ていたのか、それとも休憩に来ていたのか……どっちでも良いけど、冬川さんは秋山さんに釘を刺されてしまったようだ。
顔は見れないから表情は分からないけど、今の気分は俺にも何となくわかるぞ。なんとはなしに、ちょっとしょんぼりしている空気が漂って来ている。……気がする。
ブクマに評価などなど、誠にありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリーヌ
秋山さん無双中。
土魔法はこういった時便利だと思います(*'ω'*)




