明けない夜は無い~女子C(桔梗)視点~
テントの中で熟睡中……なのは雪だけね。
私と七海の目はしっかりと冴えている。と言うのも、私達は望月君に対して少し話を聞こうと思ったからだ。
ただ、皆で押し寄せるのも彼には悪いというか、彼にストレスを与えてしまうだろうと考え、ヒーラーであるエリカに彼への接触を任せたのよね。
そして私と七海はテント内で待機しながら聞き耳を立てたというのよ。
「うわぁ……思った以上にディープだった」
「これなら人間不信になるのも理解できるわね……。だと言うのに私達を受け入れてくれたのよね」
「本人はスキルとポイントに目が眩んだみたいだけど?」
「私でもそんな人参を目の前に垂らされたら飛びつくと思うわよ。スキルとポイントの重要性は理解しているわよね?」
「ま、そうだけどね」
それに最初の目的と現状が変わってしまうなんて事はよくある話。
寧ろポイントの為にとは言え、ストレスを感じるだろうに最小限でも関わってくれていたのだ。そして、それは私達にとって大きな救いになったのもまた事実。
そうである以上、私達は彼に感謝こそすれ、「ポイントの為なの!?」と言及する権利など無い。
そんな事は七海も分かっている。分かっているからこそ、多少重くなった空気を換えようと突っ込まれるような事を言ったのだと思う。
実際に私は、自分でも飛びつくなんて言っちゃったからね。
「それにしても、邪魔だとは感じていないみたいで良かったなぁ」
「今まではスマホだけでの会話だったものね」
でも今は直接会話が出来ている。多分それはかなり大きな一歩なんだと思う。
学校に行っていた頃も、彼は他者と会話をした事が無かった……いや、一方的に男子の一人が会話をしようとしていたのはあったけど、それも邪険にしていたのを見ている。
ただあれは、学校に行くという心にシールドを張っていたからこそ大丈夫だったのだろう。
しかしここに来てからは別で、シールドなんて張っていない状況に私達と出会ってしまった。そして、シールドを張りなおす前にトラウマを刺激してしまった事で……恐らく、色々と酷いフラッシュバックなどを引き起こしてしまったんだと思う。
その事に関しては、偶然ではあるけど少し申し訳ない気分になってしまう。……だからこそ、今回彼に「邪魔になっていないか?」と聞いてみたのよね。
「私達に少しだけ心を許してくれたのか、はたまたシールドを張りなおす事に成功したのか、そのどちらかは分からない。だけど、助けて貰った恩は返さないとね」
「とりあえず、望月君が発作を起こした時に直ぐフォローできるようにしておかないとかな。またあいつ等に遭遇してフラッシュバックで動けなくなったなんて事になったら……」
「あの時の状況を考えるとフラバは大丈夫だと思うのだけど……万が一と言う事もあるのよね」
エリカの回復魔法と声掛けが有った後、彼は立ち直ったのか行動をしてみせた。
そして、辛いだろうにも拘らず、彼等へと声を掛けて交渉すらしてみせた。……微妙な演技を行いつつだったのだけど。悪役ムーブ? だったのだろうけど、あんまり悪役っぽくみえなかったのよね。
ただ、そんな行動をとれるのなら大丈夫だろうとは思うのだけど……だけどあれは回復魔法と状況が合わさって、彼が謎のハイテンションになっていた可能性も否定はできないのよ。だから、今後も注意しておかないといけないとは思うのよね。
「良いのか悪いのか、私達は皆が皆戦闘職を選んだわ。雪はちょっと違うけど……」
「でも全員後衛だけど?」
「そこは嵌めが出来る様にと選んでいるから大丈夫よ。空を飛ぶ相手には使えないけど……そっちは弓で何とかなるでしょう?」
「ま、やれない事は無いかな」
「そして万が一のヒーラーであるエリカも居る。これなら滅多な事は無いはず」
とは言っても、前衛が皆無なのは気になる処ではあるわよね。
そこは追々の話だけども、仲間をみつけるか、もしくは雪に期待といったところかしら。
「てか、雪は本当にぐっすりだね」
「あれだけ皆で話しを聞くって言っておいたのに……全く、まぁ雪は何があっても「……ん」とか「……それで?」で終わらせちゃうでしょうけどね」
「あー……何となく理解出来る。雪はそう言う子だった」
因みに、これだけだとなんて薄情な子なんだってなるのだけど、私達は雪が言いたい事が別だと言うのは理解出来ている。
例えばこの場合の「……ん」だと、「そうなんだ。今は大丈夫なの? ボクは気にしていないからね」となる。「……それで?」だと、「それで何か問題があるの? 今は今だから気にしないよ」みたいな感じかしら。
本当にこの子は言葉が足らなさ過ぎて誤解を受ける子なのよね。……そこが可愛いと言う人もいるのだけれど。
ただ、基本的には優しい子。だから、今回こんな感じで寝ていたとしても何ら問題は無いと私達は思っている。
とは言え、マイペース過ぎるのよねぇ。
「鼻でも摘まんでおこうか?」
「やめなさい。それは流石に可哀そうよ」
スピースピーと鼻で音を鳴らしながら心地よく眠っている雪を見ると……えぇ、私も無性に鼻を摘まみたくなるわ。
「……うぅん……うさ……うま……」
一体何の夢を見ているのかしら。涎も垂れているし。
「口がもごもごと動いているのを見ると、絶対に何か食べてる夢を見てるなぁ……何か与えたら食べたりするかな?」
「だから寝ている人に何かしようとするのを止めなさい。下手に与えて指を噛まれたりでもしたらどうするのよ」
「おっと……ソレはダメージが辛そう。うん、大人しくしておく」
七海の気分も分かるのよ? えぇ、それはもうたっぷりと。こんなに幸せそうに横で寝られたら、そりゃちょっかいも掛けたくなるわよね。私達はこんなにも悩んでいるのに! という気持ちもある状況なのだから。
「ま、雪の事は今は良いとして……桔梗、私達は撤退する事を選んだけど、奴等の拠点に居る女子は大丈夫なのかな」
「んー……たぶんね。先生……うぅん、糞教師ね、アレが言っていたことだけど「女子が減った」と、聞こえなかったかしら?」
「あー……私はスナイピングで距離をとっていたから余り聞き取れていなかったかな」
「そっか。うん、それなら仕方ないわね。えぇ、奴は間違いなく「女子が減った」と言っていたのよ。であれば、女子は逃げ出したのか、それとも誰かから救助されたのか……どちらにしても、彼女達の内数名があの場からいなくなったという事になるわ」
「まぁそうだよね。でもそれだと残った子は?」
「少ないからこそ無事なのよ。残っている女子にまで逃げられたり死なれでもしたら……彼等の不満はどうなるのかしら?」
たまったストレスを吐き出す場所が無くなる。無くなってしまえば、今度は醜い身内争いに発展する。
そうならない為にも、少ない女子はそれこそお姫様扱いに近いモノを受けるハズなのよ。……もしそうでないなら、彼等は自殺志願者なのかしらという話になるわ。
「時間は十分にあるって事?」
「そうね……もしかしたら今回の遠征で更に救助されているかもしれないわよ。彼等にどれだけの人数が居るのか分からないのだけど、それでも救助する事に成功していたという事は……こうして、拠点に人が少なくなっている状況だと救助を行うにはチャンスでしょうからね。そしてそれは、救助無しに逃げ出すというパターンでも同じよ」
本当なら、もっと私達が力を付け、確実に助ける事が出来るという状況を作ってからと考えていたのだけど。
正直、私達が抜けてから時間も経っている。そして奴等もチート能力を手にしていた。ここで3人行動不能に出来たとはいえ、どれだけ相手に力があるか分からないのよね……。
もしかしたら、誰かしらが合流して戦力が増えている可能性もあるのよ。
「私達に今できる事は、このチャンスを生かしてほしいと祈る事ぐらいかしら」
「間接的に援護出来て居ればって事ね……はぁ、本当に無力だよね」
もう少しレベルと武器があればと思うのだけど。
ただ、これは七海達にも伝える事はしない内容で、恐らく望月君は思い至っている気がする。
私はもしかしたらこれを機に、彼等が崩壊してしまうのでは? と考えている。だってそうでしょう? 虐げられて来た身からしたら、反乱を起こすには最高のタイミングだもの。
もし私達が逃げた時と同じ人数であれば。いや、女子が減っているという事だから同じ人数と言う事は無いわね。とは言え、女子は戦力にならないでしょう。恐らく奴等がそうなるようにしているはず。
とは言え……あの時と顔ぶれが変わらなければ、非戦闘職だとしてもチャンスだ。何せ主導者とその取り巻きはダウンしているのだから。……私があの内部に居る男子なら絶対にこのタイミングを逃すことはしないわ。
ただ、反乱する者は私じゃないのだから、その考えが自分の天下にしたいのか、それとも救われたいのかは別なのよね。
ブックマークに評価などなど、いつもありがとうございます!!(=゜ω゜)ノ
という事で、夜の会話(裏)でございます。
桔梗は、思考能力が景に一番近いと思われる子です。なので、景がもしかしたら? と考えた上で隠している事に思い至っています。
七海は……どちらかと言うと脳筋側なので。えぇ。
そして雪ちゃんは、いい子ですよ?




