深夜のキャンプ
――パチッ
火の粉が弾ける音を聞きながら、まったりと夜空を見上げてみる。
今、女子達はテントの中でぐっすりと就寝をしていて、俺は外で焚火を維持している。動物やモンスターが来ても直ぐに対処出来るようにしないといけないからね。
特にここは、少し開けているとは言え森の中だ。しかも、俺達はここらまで散策に来たことが無い。……何が居るのか分からない場所。そりゃ、警戒しないと拙いでしょう。
遠くから「ホーホー」と、フクロウの様な鳴き声が聞こえてきたりもしているし、なんなら「ヒョーヒョー」と何とも悲し気で不安を煽って来るような鳴き声も。
暗い中であるうえに、少し先には木々が生い茂っている。実に不気味な環境だというのにその鳴き声だ。てか、よく女子は眠る事が出来ているよね。
ただどうやら、それは全員と言う訳では無かったらしい。
「今のところは大丈夫そう?」
「ん……」
ポイッと枝を焚火にくべながら、ちょっとそっけなさすぎる返事をしてしまった。うん、いきなり過ぎた声にギクッとしてしまったから仕方ない……と思う。
「え、えっと……Aさん?」
「……エリカだよ」
「あ、うん。ごめん」
なんだろう。名前を改めて聞いたけど、覚えていなくて申し訳ないと感じたのは初めての様な気がする。
ただ、今までは覚える気も無かったし、聞いて脳にインプットされる事が無かったからな……えっと、Aさんはエリさんっと。
「エリさんは眠れない?」
「……カが抜けてるよ。まぁそうかなぁ。なんか不気味な鳴き声も聞こえてくるからね」
「あー……ごめん。エリカさんだね。って、苗字じゃなくて名前?」
「ん? あぁ、ごめん。普通に名前で自己紹介しちゃった。えっと、春野 エリカです。よろしく……ってのは何か変だね」
「望月 景です。確かに3週間も何をしていたんだって、普通なら言われるような」
こればっかりは、お互い距離を測っての生活をしていたからね。
多分、自己紹介をするのも此処に来てからは初めてだと思う。そして前に聞いたのは、たぶんクラスが同じになった時なんだけど覚えているはずがない。
ただ、一つ言えるのは……今もお互いに顔を見ていないという事。
火を見つめている。これはこれだけ暗いと、火を見て安心したいという気持ちからってのもある。
俺の場合はトラウマ持ちと言う前提があるけどね。そして、そんな俺に彼女も付き合ってくれているのだと思う。……そんな彼女達だからこそ、こうして会話できるレベルになったのだろうけど。
「不満とかは?」
「今の所は誰も不満には思ってないかな。あの場に居た方が危険だってのは皆わかってるしね」
ポツリポツリと、少しだけ会話をしていく。何というか、手探りと言った感じで。
人との会話とか慣れてない。そもそも1対1でやれとか、それも異性を相手に……ハードルが高すぎる。……とは言え、この場に同性なんて居ないしな。これがゲーム内なら、ゲームの話で盛り上がれるというのに。
「そういえば、昼間も結構大変だったよね。まさか、あんな動物がいるなんて思わなかったよ」
「あぁ……Dさん? が、イチゴだと思って採取しようとしたやつかな」
「うん、雪が見つけて採ろうとしたやつ」
なるほど。Dさんは雪と言うのか。ただ、後で今一度名前を聞いておく必要があるかな。
因みにそのイチゴだけど……鑑定をしてみたら〝蛇イチゴもどき〟という名前で、実はイチゴでは無く立派な蛇だった。
地球上でもヘビイチゴなんてのがあるけど、アレは〝ヘビが食べるイチゴ〟とか〝イチゴを食べる小動物を狙うヘビが居る〟なんて事からついた名前らしい。
ドクイチゴなんて呼ばれてもいたらしいけど実際には無毒なんだとか。ただ、食用じゃないんだったかな。食べても害はないみたいだけど。
因みに、そのヘビなイチゴの鑑定結果がこちら。
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蛇イチゴもどき(動物)
ヘビイチゴに擬態した蛇だよ。頭が真っ赤で粒々が存在するのが特徴なの♪
一見、全く蛇には見えない為……手を伸ばして来たらパクリと実に見える部分から噛みつかれてしまう(>_<)
本来は、小動物を騙して食べちゃう存在だけど、人の手も関係ないみたい! 気を付けて噛まれて行ってね(^^♪
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噛まれろとは何事か。
まぁ、女子D……雪さんだっけか。彼女は噛まれる前に、他の人が彼女の動きを止めたから無事だったけど。
しかし、こんな擬態をする、地球上には居なかった存在が居るとなると……森を進むのは予想以上に大変かもしれない。これは、警戒レベルを上げるべきかも。
そしてそう考えると……この鳥の鳴き声すら疑ってしまう。もしかしたらフクロウでは無く、もっと狂暴な何かとかでは? なんて。
「あ! そう言えば聞きたいと思ってたんだけど、あのテントの前に積み上げてた草って何だったの?」
「あれは、ヨモギかな。鑑定結果には〝ポイ〟と記載されていたけど。あれは、見てたのならわかるけど、煙をテントの中に入れる為のモノで、あの煙は虫除けの効果がある」
この地に来て以来、虫はあの大きな蜘蛛しか見てないけど……念には念をと言う事で、防虫対策は常に行っている。
「なるほど。虫が嫌う何かをテントに付着させてるんだ」
「そんな感じかな」
因みに、今も焚火の中へと投入していたりする。
一気に燃やしていないから効果は下がっちゃうけど、保険的な意味で何となく。
「はい、飲み物」
「ありがと」
焚火で沸かしたお湯を春野さんにも渡しておく。夜だから寒いと言うのもあるけど、少しでもコレで眠気が来たらという意味合いも込め、少量だけど薬草の粉末も入れておいた。効果はお察しレベルではある。ただ、最悪寝れなかったとしても、薬草入りのお湯で少しはマシにはなるはず。
「ん? 少し味がある?」
「薬草の粉末がちょこっと入っているからね……まぁ、その粉末もポーションを作った後に残ったモノだけど」
ポーション作成の後に残ったモノ。ただ、それは全てゴミと言う訳では無かったみたい。
更にその残ったモノを、薬として使える物と使えない物へ分けて、使える物はこうしてハーブティーの代わりだったり、軟膏や湿布みたいな物を作るのに使えるってレシピにあった。
そして、薬としては使えない物でも、実は肥料を作るのに使えたりするみたいで……薬草というのは、最後まで全てが使える万能植物と言う事みたい。
「れ、錬金術って便利だね」
「器用貧乏ではあるみたいだけどね。やっぱり特化したジョブには届かないみたいだし」
今の所確認しているのは、女子Cさんが使っていた土魔法と俺が使える土魔法の違い。
レベルは俺の方が高いけど、土魔法のスキル能力は土術師である彼女の方が高い。それは、前にみた〝ウォール系〟の魔法を考えたら一目瞭然。……俺にはあの魔法使えないしね。
何でも一人で出来る可能性がある。そう考えて選んだジョブだからね。
ただ、人が集まれば強みが無くなるのは仕方ないかな。とは言え、今の所生産出来るのは俺だけではあるけども、戦闘は完全に補佐なんだよね。
「一応、中間素材を作ったりといった、錬金術じゃないと出来ない事は結構あるみたいだけどね。でも、今そんな中間素材を作っても……ね」
「あ……生産系が居ないから荷物にしかならないんだ」
「自分である程度組み立てる事は出来るけど……やっぱり、そっちは特化した人の方が性能が良くなると思う」
錬金術で作ったナイフと鍛冶師が作ったナイフが有ったとして、どちらが切れ味と耐久度が高いのかって話。
切れ味も耐久度も錬金術の方が低い。とは言え、全く作れない訳でもない。本来は、人数的に足らないだろうと思われる部分を補うためのジョブなんだろうなぁ。
とは言え、現状そんな錬金術のお陰で大いに助かっている部分が多いんだけどね。
そんな事を話していると、春野さんが少しだけ真剣な雰囲気を醸し出した。
一体どうしたんだろう? 何か近づいて来たかな? なんて考えていたら、春野さんは重そうな感じでその口を開き……。
「ねぇ、望月君は人が苦手なんだよね? 私達って邪魔になっていない?」
と、そんな話題を振って来た。あぁ、そりゃ気になるか。ただ、邪魔かどうかと聞かれたら、今は邪魔では無い。
でもそうだな。全部を語るなんて事は出来ないけど、彼女達には少し伝えておいた方が良いのだろうか? 今後の事を考えると、ある程度伝えておかないと致命的なミスにつながる可能性だってあるかもしれないし。
ブックマークに評価等、ありがとうございますです(o*。_。)oペコッ
残念ながらビスケットとマシュマロは準備出来ていません。なので、めらめらと燃やし尽くすことは不可能です。




