不思議現象が増えました
今日は此処まで(*‘∀‘)
ゆっくりと慎重に……森の中では比較的開けた場所を探しては移動をしていく。
藪を突いて蛇を出すでは無いが、突きもせずに彼等のテリトリーに足を踏み入れてしまえば一瞬で怪我を負ってしまうだろう。いや、怪我を負うだけならマシだ、下手に毒やらなにやらで死んでしまっては元も子もない。
救いがあるとすれば、この森が何者かの手によって作られたという事だろうか? 整えられたとまではいわないが、実に歩きやすく〝何か〟が潜んでいるだろう場所も少ない。
当然だが頭上も警戒しなくてはいけない。
木の上から蛇や毒虫が落ちてくるなど当然の様にある話だ。もちろん、ドジっ子では無いと思うが太い枝に頭をぶつけるなんて話もある訳で……実に気が休まる事など無い空間と言える。
更に言うと音にも注意しなくてはいけない。
カチカチカチカチと言う音が聞こえたら、それはスズメバチ等の警戒音。もちろん獰猛な動物の足音やら唸り声もあるし、水の音や土などが崩れる音といったものもあり……あぁ! 気に掛ける情報量が多すぎる。
うがぁぁぁぁぁぁ! と、頭を掻き毟る。
平時ではこんなにも気をあちらこちらへと向ける必要など無かった。
人の多さにさえ気を付ければ、何ら問題無く過ごせたんだ……その事を考えると、どれだけ自然と言う猛威から見て、今までぬるま湯だったのかと思うばかり。
「現代っ子には辛すぎんだろ……歌を歌いながら森林浴とか、どれだけ安全な場所だったんだよ」
いや、実際のサバイバルに比べれば、今この状況もまだ恵まれた環境なのだろう。
中途半端ではあるが整えられた森、食べる事の出来る植物、今のところは安全と言える、獣などが出ない環境。
この状況であれば、ガチサバイバーな人達から目隠しをしても大丈夫なのではないだろうか。
とは言え、こちとらサバイバルマンガや動画を見た程度な、ただの一般高校生だ。正直この環境でも厳しいと言わざる得ない。……いや、漫画や動画は中途半端な知識になったとはいえ役に立っているけどな。
火の熾し方とか、水分の確保とか、地面に直接寝るのは危険だとか、そう言ったのは全てそう言った物から手にした知識だし。
「さて、スマホのバッテリーは……っと、大丈夫だな」
バッテリーのチェックをしておく。
というのも、スマホを使って俺は来た道を撮影している。それは何故かと言えば、帰る際に迷わないためだ。木にチェックポイントを付けておくのも忘れないが、こうして記録を取っておくと更に間違いないだろうし、後で見直した時に、歩いている最中には気が付かなかった〝何か〟を発見する事も出来るからだ。……例えば、食べる事が出来る木の実だとか。
視界内に入っていても遠くの場所にあるモノや、灯台下暗しと言える場所にあるモノは案外気が付かなかったりするからな。
それにしてもだ……この森側に進むのは、どうやら見えない壁と言うモノが今のところないらしい。
結構な時間進んで来たハズだ。それこそ、海辺沿いを歩くよりもはるかに長い時間を。
だと言うのに、移動限界点に到達する事が無い。もしかして内部に進むだけならば、全く制限が無いのだろうか。
だとすると、どうして海沿いのみ移動限界と言える壁が有ったのかが謎である。
これがゲームなどであれば、いわゆる〝レベルが足らない〟というモノなのだろう。もしくはシステムの壁で絶対にこれより先は何もないですよというやつ。オンゲで言うなら未実装ゾーンと言うモノもあるか。
とは言えなぁ……その割には左右の領域は糞が付くほど狭かった。
もしかしたら、今から左右に移動をしても同じ感覚の場所に壁があるのではないだろうか。……少し試してみたいが、この森の中を下手に進むのは正解とは言えないか。
とりあえず、今は真っ直ぐ進んで行くとしよう。時間を考えたらどこかで戻る必要があるだろうけど、今はまだまだ進んでも大丈夫なはずだ。
森の中を突き進んでいると、遂に日が天辺へと昇った。
途中で休みはしたが、それでも結構な距離を移動出来たと思う。そしてその証拠と言う訳では無いが……。
「森を抜ける事が出来たか……まぁ、目の前にはそびえ立つ崖がある訳だが」
そう、森を抜ける事に成功した。ただし、目の前には断崖絶壁で、どう頑張ってもこれ以上は進めませんと言われている。
きょろきょろと左右を見渡すと、そのそびえ立つ崖は森と同じように左右へと伸びきっており……何処まで行っても途切れる事が無いように思える。間違いなく俺の視界限界までは、崖と森が平行している様に見える。
ふむ、どうやら俺の冒険は此処までの様だ。まぁ、死と言う終わりでは無いのだが。
「うーむ……移動して来てみたが、なんもヒントが無かったか」
朝起きてから昼になるまでの数時間。森の中を突き進んできたが、その結果は行き止まりだった。
道中に何かあるかどうかだが、俺の見てきた限りだと何もなかったと思う。……まぁ、後でスマホの録画データをチェックする必要はあるだろうが。
はぁ……なんだろうか。骨折り損とでも言えば良いのだろうか? いやいや、何もなかったと言う事が情報とも言えるか。何せ今後こちら側に来る必要など無いと言う事なのだから。
落ちた気分を体全体で表す様に、俺は地面へと崩れ落ちた。
何も無かったと言う事で、ここまで来た疲れが更に倍になって伸し掛かって来た。あぁ、もう体が動きそうもない。
そうしながらも、これは習性なのだろうか? 目は色々と情報を集めようとする。
森の違う場所には何かないだろうか? 崖には洞穴でも無いだろうか? 空に浮かぶ雲の形はソフトクリームだな? とか。
そして、その習性を持っていた事が、俺にとって幸運だった。
俺の視界内に入って来たモノがあった。
それは崖に一部が埋まっており、何やら不思議な形をしているように見える。
重い体に鞭を打ち、「よっこらせ」と掛け声を上げて立ち上がる。
よたよたと余り力の入らない状況だが、ゆっくりとその場所まで歩いていく。
「えっと……これは〝石碑〟か? 何やら四角く何かをはめれそうな穴があるけど……」
書いてある文字は削れていて読むことが出来そうにない。
ただ、何やらこの四角い空間に何かを入れなくてはいけないという気分になる。
「っと、だめだだめだ。こういうのは簡単に触れて良い物じゃない。とりあえず、読めそうな文字は……」
何とかして削れている文字の解読を試みてみる。
「これは……〝耳〟か? こっちは〝与〟で、あ! 〝はめる〟だけは読めるな。って、これ日本語かよ!」
文字を読んでいくと、恐らく日本語だろうと言う事だけはわかった。
そして、四角い空間の近くに〝はめる〟という文字がある以上、何かを其処へ入れろと言う事なのだろう。
えぇい! ままよ!! と、何だか分からないテンションに背中を押され、俺はなんとなしに手に持っていたスマホをその四角い空間にはめ込んでしまった。
ガチッと綺麗にスマホが収まる。
サイズが全く問題無いと言う事に少しだけ疑問を覚えたが、次に起きた行動でそんな疑問は吹き飛んでいってしまった。
『ピーーーー! 登録を確認しました。お使いのデバイスはアップグレードされます』
スマホから突然そのような音声が流れて来たことで、俺の目は点になってしまった。
……一体これは何が起きているんだ? アップグレードってどういう事だよ。誰か教えてくれぇぇぇぇ! と、叫ばなかった事だけは褒めて欲しいところだ。
次からチート? をゲットと言うところでそれは明日にと(≧▽≦)
明日は4話上げる予定です。最初は7時にと言う事で……よろです!