出発前の確認
アイテムボックスを背負子に乗せ、更にそのアイテムボックスの上に俺が元々持っていた鞄を乗せる。
結構重いはずなんだけど、レベルアップでステータスが上がっているからかな? 軽く持ち上げてみたけど、荷物自体はそれほど重いとは感じなかった。
「後は悲しいけど拠点を破壊しておかないとな」
「……残念」
「でも、あいつ等にここが使われるのも癪だよね」
「当然よ。私達が頑張って作ったモノを横から掻っ攫われるなんて、あんな真似をする人達にやらせるわけがないわ!」
そんな訳で、俺達は各自が決められていた行動を開始した。
先ずは俺と女子D……名前なんだったっけ? コレも後でしっかりと対処しないとなぁ。まぁ、A・B・C・Dを間違える事はなくなったから、その内何とかなると思う。
と、そんな女子Dと一緒になって〝ウォーター〟の魔法を大量にばら撒いた。
魔法によって出来た水が、雨によって緩んでいた地盤を更に緩くする。
部屋などは半ば水が浸水していると言っても良い状況になっていて、恐らくこれだけでも使い物にならなくだろうと判断出来るのだけど。
「〝アースシェイク〟」
女子Cによる土魔法の発動。
軽く地面が波打つ様に揺れたかと思うと、その揺れに合わせて作り上げた部屋や壁もまた大きく揺れ……最後には倒壊してしまった。
「これで良し。やっぱり水魔法で地面内の水量を増やしておいてよかった」
「と言うよりも、これってもし雨がまだ続いていたらこうなってたって可能性もあるって事だよね?」
「……だから補強するって話になってた」
「確かにこれは不味いわ。次に家を建てる時はもっと地盤とかも気を付けないと!」
「そうね。後、基礎工事も大切だわ。地震大国と呼ばれた日本に住んでいたのに、その事を忘れているなんてね……本当にうっかりしていたわ」
いやいや、例え日本に住んでいたとしても、基礎工事を行おう! なんて発想が直ぐ出る高校生なんて居ないと思う。
俺も雨が大量に降って地面がぬかるんで居たからこそ、「あっ」と気が付いたし。
今回の件で分かったけど、俺達にははっきり言って知恵が全く足りていない。勉強によって知識としては有っても、ソレを使う術と言うか思い出す事が困難なんだと思う。言ってしまえば、実戦経験が足りてないという奴かな。
そしてそれは、人に対してもなのだと思う。……まさか、クラスで笑い合っていた人達がこうも豹変するなんて、誰も思っていなかっただろうし。あ、俺は共に笑い合っていたなんて事は無かったけど。
そう考えると、このまま女子を信用して……っと、まてまて、この四人は大丈夫じゃないか。うん、敵でないのははっきりしているんだから。
駄目だな。ふとした拍子にまだマイナスの思考へと陥ってしまう。これは、今後の事を考えると気を付けなければいけない事だろうね。何せ信用問題にかかわって来るから。
「そう言えば、現物の矢は足りる? 一応だけど予備も結構作ってあるけど」
「大丈夫。矢筒のお陰で管理も楽だしね!」
それは良かった。この中では俺の作った錬金アイテムを除いて、唯一の物理アタッカーは弓を使う女子Bだけだ。
なので、矢自体は充実させているつもりではある。とは言え、数に限りがあるのも事実なんだよね。
「魔法が通用しない相手に対して使うって感じでやっていくよ。なるべく、普通のモンスターには魔法の矢とか皆の魔法に頼るつもり」
「……任せて」
「基本は私の土魔法で何とかするわよ。土術師だから威力も他よりも高いのだから、安心して頂戴」
「はぅ……ヒーラーの私には出番がないよ」
「なるべく弱らせてから、止めの一撃を任せるわよ……ヒーラーのレベルが高くないと怪我をした時に怖いのよね」
ポーションはあるけど、ポーションには中毒がある可能性もあるからね。……今あるのは低級のポーションだから、そうそう滅多な事は無いと思うけど。
兎に角、なるべくポーションは女子A用と言うか、緊急時用と言う事にしておきたい。なので、ヒーラーは重要な役職。だからこそ、レベルは上げておいて欲しい。
「一応、これを渡しておく」
そう言って渡したのは、ボムベリーとカエンタケで作った簡単な焼夷弾と、ボムベリーとムクロジで作ったシャボンボム(毒)。
威力は燃えるか毒を与えるから結構強い。と言うか、火や毒によるスリップダメがあるから威力はソコソコのお手軽な投擲武器。
「良いの? 今は量に限りがあると思うんだけど。生産するにも素材の確保が厳しくなるし」
「安全を買うと考えれば安いから」
一人で投げるよりも二人で投げる。と言うか、俺には初級とは言え魔法がある。なので、別に投擲武器を使わなくても問題は無い。なら、戦闘力が皆無に近い女子Aに渡すのが一番良い判断になると思うんだ。
「ただシャボンボムは毒属性だし、焼夷弾は火属性だから使い道には気を付けて」
「そうだよね……下手に味方に当てるなんて真似は出来ないし、焼夷弾の場合は森に火が付かないようなタイミングじゃないとだね」
個人的にはFFが起こる可能性は限りなく低いとは思っているよ。だって、皆後衛のジョブだしね……とは言え、それでもゼロと言う訳では無いから気を付けて貰うのは大切な事だと思う。
「そしたら最終確認よ。もし戦闘になるような事になれば、まず私の土魔法で壁などで相手との距離を作る。そして、魔法や弓で狙っていくって感じで良いかしら」
「……最適」
「このメンバーだとそれしかないかな」
女子Cの言葉に、各々がYESと答えた。もちろんだけど、俺も肯定するように首を縦に振っておく。
「……後は道中の休憩」
「タイミングは余裕がある状態かしらね。テントを張るならまだ日が落ちてないタイミングが良いわ」
「あ、そうだよね。夜になってからの作業になると、暗くて色々と手間取りそうだもん」
「地面に杭を打つなんて作業もあるからね。下手に打ち漏らしたら手にダメージが入ったりすることもあるみたい」
……女子が逞しい。
俺が言おうと思っていた事を、自主的にどんどん話をして行ってくれる。俺は現状、ただ頷くばかりだ。
しかし、こう見ると女子も元々持っていた明るさ? を復活させていっているのだろうか。
俺が最初に見た時は、もっと疲れ切っていたというか、暗い感じだったハズなんだけど。……もしかしたら、あいつ等が来た時にやり返したことで、何やら吹っ切れたのかもしれないね。
「望月君何かほかに注意する事ってある?」
「そうだね……移動中に注意する事だけど、足元と頭上両方に警戒が必要」
「……何故?」
「どちらにも敵が潜んでいる可能性が有るから。何せ今まで居なかった存在が解放されているって事は、毒蛇や毒虫が潜んでいる可能性もある。虫に関しては確認していないけど蛇は間違いなく居ると思う」
「あ、海だけどコブラみたいなのいたよね」
海に関しては、蜘蛛による制圧がなされていなかったから最初からいた存在なんだけどね。
でも、そんな蛇が海にも居たと言う事で、それが陸にいないなんて事は無いと思う。特に森なんて、奴等のテリトリーと言っても良いはずなんだ。
「だから、まずスマホの着信音は切っておいて、で移動中はなるべく会話をしない方向で」
「……暇になる」
「雪……音は重要だからね? 敵対しそうな生物がまず最初に警告音を出すのは基本だから」
「ハンドサインが必要かしら……でも、そんな手法を皆が知っている訳ではないわよね?」
「なら、簡単なのだけ決めておこうか。ストップとか頭上や足元注意ぐらいは共有しておいた方が良い」
本当なら、森歩きと言う事で音を限りなく無くす歩法とかも出来る様になったらとおもうけど、正直な話、時間が足らないよね。
今までの狩りやレベリングである程度は出来ると思うけど、今後の事を考えると……もう少し俺も足音とかを消せるようにした方が良いかなと思う。
とは言え、今は簡単に出来るハンドサインを決め、さっさと移動を開始するべきかな。何時までもこの場に留まると、それだけ時間が勿体ないからね。
ブックマークに評価などなど、感謝の極みなのです!クワッ( ゜Д゜)
皆さん確認はしていますか? 出掛ける際に、ハンカチやティッシュにスマホなど忘れ物は無いか……と。まぁ、リアルでの忘れ物ならリカバリーが可能ですが、この状況だとリカバリーは難しいですからね。
しっかりと、話し合いをして確認するのは必須でしょう。