病院と赤ちゃん~エリカ視点~
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ヒーラーである私は病院へ交代制で勤めている。そして、現状だと島最高峰の回復魔法の使い手だからか、私の出番は結構多いんだ。
ただ……回復魔法が必要ではない場面だと、どうしてもあちこちから注意をされてしまう事も多々あって。
「エリカ様。こちらを」
「はいっと……えっと、ここを広げてっと」
「もっと優しく丁寧に、それでかつ素早くです。そうしないと、赤子のポークビッツ様が風邪をひかれてしまいます」
ぽ、ぽーくびっつって……しかもソコに様を付ける必要はあるのかなぁ? と、こんな感じで、医療介護用の錬金人形達にダメだしを受けながら赤ちゃんの面倒を見ていたりする。
「若い子が頑張る姿は良いもんだ」
「どれ、ちょっくらコツでも教えようか」
「今のオシメは昔のとは全く違うから。どちらかと言うとアンタが教わる側になるんじゃないかい?」
それに加えて、病院を集会所にしているお爺ちゃんやお婆ちゃん方の見世物になっていたりもする。そして中には……。
「将来の自分の子の為にも、今のうちにしっかりと学んでおくんだよ!」
なんてお節介をやいてくる人もいて……。
「お姉さま方。気が散ってしまいますので静かに応援をなさってください」
「やだよぉもう! こんなばーさんを捕まえてお姉さんだなんて」
「最近のロボットはお世辞も上手いんだねぇ」
医療介護用の錬金人形に嗜められつつも、その言葉に一喜一憂している。
私はそのタイミングで、ささっとオムツ交換を終わらせるんだけど……これ、割と日常的な光景だったりするみたい。私以外のヒーラーの子も、同じ様な事を言われているんだって。
「うふふ。私の気持ちが分かったかしら?」
「あ、姫ちゃんこんにちは」
「……アナタまで私の事を〝姫ちゃん〟と呼ぶのね」
あー……その呼び方はもう島共通の認識だから仕方がないかなぁ。アダ名と言うか、一種の呪いみたいなものだと思って諦めてもらうしかないかと。
「こほん……呼び名の事はいいわ。この際、開き直ってしまうとして。例の物は出来たのかしら?」
「うん。景くんがさくっと作ってくれたよ」
「……本当、とんでもなくチートよね。アナタの男は」
「お、男って……そんなんじゃないよ?」
姫ちゃんはなんて事を言い出すの……。思わず喉に何かが詰まるかと思ったよ。ともあれ、今はそんな事よりも! 景くんが作ってくれた物の事の方が大切。
「赤ちゃんに使う物だから、これでも調整が大変だったみたいだよ」
「へぇ……それで、コレの使い方は? っと、ふーん。なるほどねぇ」
姫ちゃんはそう言いながら、私が持っている道具をジロジロと眺めている。きっと鑑定でもしているんだろうね。
ちなみに。私が景くんから教えてもらった鑑定結果はこんな感じ。
――――――――――――――――――
魔力吸引機・乳幼児用(高品質)
特徴:やさしさと闇属性
魔力過多に陥った乳幼児の為の吸引機で、3段スイッチ式になっており、弱・中・強と変更出来る。
仕様における注意。
1:ヒーラーもしくは鑑定スキル持ちが居る時に使う事。
2:強は緊急時用なのでなるべく使わない。(基本的に強のスイッチにはカバーがついている為、間違って押す何て事は無い。もしカバーが壊れたら、直ぐ修理に出す事)
3:吸引のし過ぎに注意する事。魔力も体を作る為に必要なモノなので、少なすぎても問題が起きます。
――――――――――――――――――
現状だとこんな感じの結果だったりする。
あ、後3に関しての内容についてだけど、これは今後はって事だろうね。魔力が当たり前にある世界になれば、当然だけど魔力も体を作る要因の1つになるし。
「ふーん……思った以上にしっかりと出来ているわねぇ。鑑定結果は説明書として書いておくのが良いかもしれないわね」
「使い方を指導する時に伝えはしますけど、無いよりは有ったほうが良いでしょうね」
魔力過多はね……残念ながら回復魔法じゃ意味がないからね。だからこういった魔道具が必要になるんだ。そもそも、魔力過多を起こしている子に回復魔法なんて、それこそ火に油を注ぐようなものだしね。
「今までは魔力過多で体調を崩している子を見ているだけしか出来なかったのだけど……これで何とかなりそうね。本当、アナタに頼んで良かったわ」
「作ってくれたのは景くんだけどね」
「彼もアナタに頼まれたからこれほど早く作ってくれたのでは?」
「赤ちゃんの事だからね。誰が頼んでも一緒だったと思うよ」
時間経過で治るとは言え、万が一が無いとも言えない。そもそも、苦しんでいる姿を見ていたくないって事で、皆がどうにかならないか? って考えたんだよね。
そこで、姫ちゃんが私に「道具とか作れないかしら?」って聞いてきたんだ。そして出来たアイテムがコレだったりする。
「えっと、先ずは自分で試してみるわね。このラッパの口みたいな部分を腕に押し付けてスイッチをONっと……お、お、おぉぉ。な、なんかちゅうちゅうと吸われている感じがするわよ。何かしらコレ……そうね、例えるなら赤ちゃんに指をしゃぶられている感じ?」
赤ちゃんに試す前に自分でってのは分かるけど……その顔はどうにかならないかなぁ? 少し見せられない表情になってるよ。
「だ、だってこれ……くすぐったいもの」
「私が試した時はそんな事なかったけどなぁ」
もしかして人次第って事なのかな? もしくはジョブとか。
ほら、私のジョブはヒーラーだからね。どちらかというと魔力を外へ出すジョブ。だけど姫ちゃんは鑑定士だから、外に魔力を出すって事はないんだよね。だからこれ、ただたんに慣れてないだけでは?
「うふ……うふふ……ま、まぁ。コレはしっかりと使えるわね。あ、吸引した魔力はどうなるのかしら」
「魔道具を動かすエネルギーになるよ。ほら、持ち手の部分にバッテリーパックみたいなのが有るでしょ。其処に溜まっていくから」
「なるほど……という事は、このバッテリーの規格にあう物なら他の魔道具も動かせると言うことかしら?」
そうなるかな。とは言え、赤ちゃんの魔力だからね……ぶっちゃけ、チャージ出来る量も微々たるものなんだけど。
「それもそうね。私達の魔力を吸わせる訳じゃないものね」
そうそう。だからその吸引機を動かす程度の魔力しかチャージ出来ないよ。
「と、吸引機に関してはソレでいいとして。そろそろこの子達のお母さんが戻ってくるね」
「あら、もうそんな時間なのね」
運動や休息に談話……中にはレベリングに出かけているお母さんも居たりする。彼女たちは体と心の健康の為にって事で、こうして自由に動ける時間をしっかりとキープしているんだよね。
そしてその間、私達やお爺ちゃんお婆ちゃんが赤ちゃんの面倒を見ている……っと、島全体で赤ちゃんを育てているって感じかな。
ただそれも、魔力が有りモンスターが居るなんて状況下である事が大きな理由。
皆、何か緊急事態が起きた時に直ぐ動ける様にって事だね。そして、その時の為にもお母さん達の体力やレベルは必要って事らしい。
更に言うと、魔力がどう反応するか分からないからって事で、赤ちゃんは全員病院で育児中なんだよね。お家に帰れないのは少し申し訳ないんだけど……その分、皆でしっかりと見守るって感じかな。なので病院の守りも実はかなり堅かったりする。
「さて、今日はおしっこを掛けられなかったから着替えなくて良いかな!」
「……けっこう皆ぶっ掛けられているものね。私もどれだけ被害にあったことか」
あぁ、やっぱり姫ちゃんもオムツ交換でやられちゃったんだ。でもまぁ、皆元気に育っているって事だからね。嬉しい悲鳴って事で……そう言うことにしておこう。




