雨上がりと発覚する問題
雨は夜中まで降り続いたみたいで、天候が戻ったのを確認したのは次の日の朝になってからだった。
ただ昨日は作ろうと思いついたモノがあったから、なんとか作業で時間を使う事が出来たけど……もし今日も雨が降っていたら。心から晴れたことを喜ぶことにしよう。
「しかし、結構な大雨だったかぁ。地面の環境が最悪じゃないか」
外へ出て地面へ体重をかけてみる。すると、ズズと音を立てて足が少し沈んでいった。大体指1本~2本分ぐらい沈んでないかな。
むむ……これは少し危険かもしれない。この状況、昨日の昼から夜中にかけて降った雨量でこうなっている。だとすると、もし雨天がもう少し続いていたら? もし、雨季があり、その時期に突入したら?
部屋の中まで浸水してくるかもしれない!
いくら石レンガで壁を作ったりしているとはいえ、水の侵入経路が無い訳ではないからね。
それにもっと怖い事があるんだけど。この部屋って基礎工事なんてまともにやって無いから、石レンガごと地面に部屋が沈んでいくなんて事も……。
「これは補強工事に水路を作るか。それとも最悪の話だけど拠点の移転も考えないと不味いかな」
ただ、どんな方法を取るにしても、実に大きな行動となるからしっかりと女子にも相談しておかないと。……部屋自体がみんなで協力して作ったモノだからね。
よし! そうしたら女子へ連絡を。そう思った時、女子達の部屋の扉がガチャリと開いた。どうやら彼女達も起きて……と、彼女達の姿を確認した瞬間、何やらズーンとした痛みが。
次の瞬間、クラリと立ち眩みを覚えた。視界が少しだけ歪む。
やば……このタイミングで? いや、何で? そう疑問に思いながらも、女子達には気が付かれない様に自室へと戻ってから……ドサッと座り込んだ。
フーフー……と息を整える。
「〝大丈夫。大丈夫だから。……は敵じゃない〟」
そう、彼女達は僕の〝敵〟じゃない。寧ろ味方だ。
あれ? そう言えばこの言葉って……何処で聞いたんだっけ? 魔法の言葉〝大丈夫。大丈夫だから〟って。
思い出せない。でも、その言葉を繰り返していくと少しずつ気分が楽になって行く。
「ふぅ……」
思いっきり肺の中に有る空気を全部吐き出した。うん、どんどん頭の中がクリアになって行く。
しかし、なんで今までこの言葉を忘れていたのだろう。と言うよりも、なんで今このタイミングで思い出せたのだろう。
この言葉は昔よく聞いた記憶がある。何かあった度、そう言ってくれた……人? が居たよな。そして、その言葉を聞く度に少しずつ気持ちが楽になって、少し眠れていたんだよな。
とは言え、何だか記憶が霞んでいて、凄く中途半端にしか思い出せない。……ある意味、この言葉を思い出せただけでも良かったのではないだろうか。復帰が早くなるし。
「てか、連絡でやり取りをしている相手なんだから、大丈夫に決まっているのになぁ」
一昨日に起きたトラウマの悪夢後に初めて人の姿を見た。多分それがトリガーだったんだろうなぁ。後、人を見る事に対して全く心構えが出来ていなかったし。
とりあえず、自己分析はこれぐらいで良いかな。それにこれまでも、人を見ると覚悟しておけば問題は無かった訳だし。対処は十分に出来る。なので今回は、俺の隙とタイミングが悪かっただけの話。
「とりあえず連絡を入れておくか「雨で地面がヤバイ。これは対処が必要」っと。って、レスはや!?」
『確認したよ。確かにこれは大変だよね(>_<)』
『……もっちー、足が沈む』
「……もっちー呼びはもはや固定なのか。ともあれ「個人的には基礎の強化に水路を作る。もしくは拠点の移動を考えている」こう書いておくか」
後はあちらでも色々と考えてくれるだろう。
しかし、これだけ足を取られる状況だと、ちょっと探索は大変だろうか? もしかしたら森の中はもっと危険かもしれない。そうなると、下手に森の中へ入って行き、イノシシなんかと遭遇したらかなり不味いよな。
「って、よく考えたら、浜辺の地雷原やらウサギやイノシシ用のトラップ全滅してないか?」
雨対策なんてしていなかった。だから、浜辺に仕掛けた乾燥ボムベリーやカエンタケを使った竹筒トラップは、恐らく内部まで水が浸透して使い物にならなくなっている可能性が高い。もしかしたら、流されてしまっているなんて事も。
ウサギやイノシシ用のトラップもまた破壊されている可能性が高い。と言うよりも、ウサギ用は間違いなく破損していると思う。
「……この事も連絡しておくか。食料調達にってトラップを見に行ったらイノシシが暴れていましたとかありそうだし」
そんな訳で、追記をリンクのチャットにて送信しておく。
『確かに、昨日の雨量を考えると壊されている可能性は高いわね』
『地面が地面だから、今は確認に行かない方が良いのかな?』
『エリカか雪が100%転ぶわよ……』
『ちょっと!? 私そんなにドジじゃないよ!?』
『……心外』
「おおう……何やらドジっ子論争になりそうだけど、とりあえず「誰しも転ぶ可能性が高い状況だから、今は誰も見に行かない方が良い。安全第一で」と、これで良いだろう」
とりあえず、食料はまだ余裕が有る状況だし、今日は拠点周りの……というか、昨日つくった雨どいの設置に周囲の確認を行うのが良さそうだ。
もしかしたら、この場所が割と良くない立地だったなんて可能性もある訳だし。
『あ! 植えた種芋大丈夫かな……流されたりしてないよね?』
『後で確認しましょう。ただ、全部は植えなくて良かったわね。実験って事で少量だけにしておいたのよね』
『桔梗ナイス!』
ふむ、確かにこの環境での農業は無理かなぁ。ただ、試しに少量と言う手法を取ったのは本当にナイスな判断。おかげで種芋が全滅なんて事にならなかった。
しかし……なんで彼女達はリンクで会話をしているんだ? 直接会話も出来るだろうに。もしかして、既にバラバラになって行動しているのだろうか。
よし! と気合を入れる為に、頬をパンパンと叩く。そして、今一度、部屋の扉を開いて外へと出た。
……おおう。なんかちっこいのが泥団子を作っていらっしゃる。
俺は無言でスマホを手にして、高速でタップしていった。
「とりあえず「あの、彼女は何をしているのでしょうか?」と、聞いてみないとな」
『え、あ! あぁ……その、雪は泥を使って何か考えているみたいです』
うん、その〝何か〟を聞きたいと思ったんだけど、もしかして他の女の子達も全く理解していないのだろうか。
とは言え、実に楽しそうに団子を作ってるなぁ……なにやら鼻歌の様なものも聞こえてくるような。
『いつも不思議な行動を取っていて、私達にも謎に思えることもよくあるんですけど。後になってあぁなるほど! ってなるんですよ』
「へぇ、後々になって分かる系の子なのか。それなら「今は様子見と言う事で?」かな」
『はい。そんな感じでお願いします』
うん、それなら後はお楽しみって事で良いかな。まぁ、泥団子だけに割と単純な結果しかないだろうけど。
とりあえず、此処は気にせず自分の作業をやって行くとしよう。雨でこんな状況になっちゃったけど、雨自体は恵の雨なんて言葉もあるぐらいなんだから。次の雨に備えて準備をしておけば、人にとってはプラスになるしね。
その為にも女子と協力して、水の収集装置である雨どいとタンクを設置していかないとな。
この時俺は、今回の雨に関してかなり楽観視してしまっていた。何せ、部屋は無事で誰も被害を被っていなかったのだから。
ブックマークと評価などなど(人´∀`)アリガトー♪
雨の問題は他にもありました。さてさて、一体どうやって解決するのか……そして最後のフラグは!! ぶっちゃけ、フラグに関しては明日に発覚します(≧▽≦)