とうとう来てしまった
――ザーザー
俺は今、部屋の窓から外を眺めている。
と言うのも、この地に来てから三週間と二日。ついに雨が降って来てしまったからだ。
初めての悪天候。そして本日の作業予定が全て変更と、実にタイミングの悪い話だなぁと思う。
「昨日だったらなぁ……石鹸やら布やらを作る為に錬金術祭りをしていたのに」
錬金術を行うには素材が必要。だがしかし、作るべき物は昨日に全て作ってしまい、そしてまた材料も殆ど消費してしまった。
なので、今の所は何か実験をしようにも素材すらないという状況。
蜘蛛の魔石やら毒などもあるけど……これはまだ俺には扱わない方が良いだろう。なんとなくジョブやスキルレベルが足らない気がする。
「しかし、バケツをひっくり返したような雨だなぁ……これ、どれぐらい続くんだろう」
朝は快晴だったハズなのに、昼に近づいた辺りから一気に天候が変わってしまった。
作業としては、昼過ぎ辺りから森の中へ採取しに行こうと思っていたので、完全に予定が狂ってしまっている。朝から昼までは……まぁ、体調の様子見と保存食を作るための準備などを行っていた。
と言う事で、現在俺には仕事が無い……。
「あ、女子の方は大丈夫か? 確か、外で何か色々とやっていたみたいだけど」
とりあえず、ここはスマホを使って連絡を入れてみよう。作業とは言え、近場で何かをやっていただけみたいだから、直ぐに部屋へと戻る事が出来たと思いはするけどね。
「えっと……「雨が降って来たけど、そっちは大丈夫?」っと、まぁこんなもんで良いだろ」
リンクアプリを使って安否を確認する。
なんだろう、とても新鮮な気分になるなぁ。なんて思っていたら、直ぐに「ピコン♪」と通知音が響いた。
『皆無事に避難できました(`・ω・´)ゞ』
「(大丈夫! とサムズアップしているウサギのスタンプ)」
『望月君の方はどう? 水が落ちてきたりとか無い?』
雨漏りが無いかと問われたので、ふと天井を確認してみる。
今の所は天井から水が落ちてきていると言ったことはない。無いのだけど、作った屋根は実に簡単な構造だ。だから、何時水が浸透して来てもおかしくはない気もする。
因みに、屋根の構造は木の板を斜めに張りつつ何枚かを段状にしていて、更にその上に大きな葉っぱを乗せているのだけど、やはり不安は残るモノ。何せ材料が木と葉だし。
あ、後窓はガラスが無いので木の板を開閉できるタイプだったりする。……ガラスも作りたいなぁ。
「「今のところは大丈夫」っと、とりあえず彼女達の方も漏れてきてはいないのかな。あ! そう言えば、雨水を収集する装置を作りはしたけど、外に出してないや。……一応出しておくか」
初期のころに作った装置なんだけど、雨が全く降らないと言う事で室内放置されている状態だったんだよね。
うん……初期に作った物だから、本当に簡単な装置。しかも、集める場所にはペットボトルと殆ど集める意味が無いような? と思わなくもない。
だけど、折角作ったし、どんな感じになるのか見て見たい。なので一応外へと出しておいてみる。
「あぁそうだ。雨が降るならもっと大量の水が貯めれる用にするのもありだよな」
例えば、屋根に雨どいを作ってその先にタンクを用意する。勿論変なモノが入らない様にと、ろ過装置なり虫などの侵入が無い様な構造を作らないと。
例え水を煮沸して使うとしても、蚊とかが湧くようなタンクにはしたくないしね。目指せ飲用出来る水。
よし! 作るべき物が思いついたぞ。と、色々設計などを考えていたら、スマホから「ピコン♪」と通知音がしたので今一度チェックをしてみる。
『雨、激しすぎると思いませんか? これ、海とか大丈夫でしょうか』
どうやら女子達は海が気になるらしい。
ふむ……確かに、ここまで雨が激しいと海の動向が気になるのも分からなくもない。
荒れて波がいつも来ない位置にまで押し寄せて来るなんて事もあり得る。とは言え、このタイミングで「海が気になる!」と外に出る訳にはいかない。
これだけの雨だからね。何が起こるか分からないという以外にも、雨に晒され風邪でも引いてしまえばアウトだ。……ここには医者も風邪薬もないから。
ポーションは有るけど、それが病気に効くかどうかも現状確認が出来ていないしね。……確認の為に病気になってみるとか冒険すぎるし、ポーションを飲んで治らなければ馬鹿な事をしたとしか言いようがない。
「俺も気になるけど……「気になるかもしれないけど外には出ないでね」っと、後は「風邪を引いたら手の打ちようがないから」とも書いておくか」
とにかく、こういう生活だと病気は最大と言える天敵なんだよね。後は寄生虫。どっちも、今の段階だと対処のしようがない。
後々には錬金術を使って、病気や寄生虫もなんとかできるポーションを作るつもりだけどね。もしかしたら、回復魔法の中にも使える魔法が生えるかもしれない。
だけど今は無い物ねだり。だから女子にも絶対に外には出ない様にと忠告しておく。すると……。
『了解! 今日は大人しく雪の指導を受けながら裁縫しておきます('◇')ゞ』
『……私の見せ場』
『(怖い! とウサギ同士が抱き合っているスタンプ)』
『そのスタンプ、風邪の事だよね? 雪の事じゃ無いよね』
ふむふむ、女子達はやる事をしっかりと見つけているようで何より。
晴耕雨読と言うぐらいだし、雨が降っている最中は家の中で大人しくしておくのが一番。……まぁ、彼女達の場合は読書ではなく裁縫だけど。
『望月君は何かやる事が有るの?』
「あー……「さっき見つけた。雨水の収集装置を作る予定」っと、これで俺が外に出ないってアピールにもなるかな」
外に出るなと言った口で外へと出たら意味が無いからな。
とは言え、俺は昨日の錬金術祭りで室内作業の殆どをやってしまっていたからな。女子達もそこが気になったのかもしれない。暇すぎて外に出たりしないよね? みたいな感じで。
『そっか、やる事が有るなら雨でも問題ないよね!』
『でもこの雨、何時まで続くんだろう? 明日も明後日もとなったら流石に厳しいよ』
『室内での仕事が無くなってしまうわね。裁縫も簡単な物が多いし、ミシンとかも使わないから今日中に出来てしまうでしょうし』
『……四人でやるから更に終わるのは早い』
確かに雨が続いたら困るよなぁ。
特に娯楽がある訳でも無いし、てか、女子は四人いるから色々と会話したりして時間を潰す事が出来るだろうけど……。
俺の場合はそんな長時間の会話とか無理! ネトゲとかの知り合いであれば別だけど!! なんなら、スマホアプリでゲームが出来れば……って、此処普通の回線は繋がって無いんだよなぁ。
「……ゲームでも作るか?」
いやいや、一人遊びしか出来ないのに、ゲームを作っても意味が無いよ!! いや、でも……女子の気晴らしにはなるのかな。
俺の場合は作業時間が出来るから、それで時間を潰す事が可能だし。うん、割とゲームを作るのは悪くない発想かもしれない。
……スマホ用のアプリゲーでも作れたらいいけど、それは無理だしなぁ。でも、もし作れたら対戦とかで混ざる事も可能かもしれない。
まぁ、錬金術でスマホのアプリを弄るのは流石に無茶が有り過ぎる。……システムさん何とかなりませんかね?
「しかし、この雨は本当に何時になったら止むのかな? それに、他の人達はどうやって凌いでいるんだろう」
まぁ、ジョブが有るから大丈夫じゃないかなとは思うけど。
三週間はあったんだし、流石に如何にか雨風を凌ぐ方法を見つけてはいるよね。……まぁ、敵対して来る相手が居るとしたら、この雨で戦力ダウンをして時間が稼げているといいなぁ。
ブックマークに評価などなど、ありがとうございます!!(≧▽≦)
雨はマジで危険です。
立地条件的にも、海が近いと言う事もあって気になる話……まぁ、他にもいろいろと問題はありますが、それはまた後にでも。
そして、雨による最大の敵の一つが風邪でしょう。この環境下で病気になってしまえば……下手をしたら死者が出て疫病祭りになる事も。
だからこそ、雨風が凌げる場所作りを急いだわけですが。ただ今まで雨が降っていなかったので多少の油断はあったかもですね。