以前ポロリと言っていた内容が魔改造されていたじゃん~七海視点~
離島を増やしていく事で起きるだろう弊害がある。景と桔梗はそんな話をシステムと話し合っていた。
そして私やエリカに雪は、その話を「ほーん、そんなものなのか」と聞いているが……ま、殆どの事は良く分からない。
だけど話を聞いていてそれなりに理解出来る内容もある。
「て事は、やっぱり前にちょっと言っていた物を作るって事か?」
「ソレが良いだろうね。正直に言うと、あの異能者達と正面からマトモにやり合うのは無理があるから。だから俺達に出来るのは彼らに追いつかれないぐらいレベルを上げる事なんだけど……」
「上限突破が現状出来ているのは、私達とブラスミさん達だけなのよね」
私達とブラスミさん達だけという事は、クラスメイトや私達の家族達は何時かレベル的にも追いつかれるということ。そして追いつかれてしまえば、どれだけ〝慣れた〟としても生まれ持ったセンスの面でどうしても勝てない。
あの異能にレベルがプラスされてしまえば、行き着く先はどう考えても化け物とか神とか言われる領域になると思われるじゃん。
当然だけど、私達には戦う意思なんて無いし、そもそもこれ以上深く関わるつもりもない。あくまで程よい距離の協力者というのを続けていくつもりではある。
だけど、将来的にどんな事が起こるか分からない以上は、もし敵対したとしても良いようにと備えておく事が重要……なんて事を景と桔梗が言っていた。
「それに、日米以外にも国はあるものね」
なんて桔梗がちょっと暗い表情で呟いたのがとても印象的だったんだが……もしかして桔梗は、将来的に戦いが起こると確信でもしているのだろうか。
「ま、そこまで心配しなくてもいいかな? そもそもの話をすると、既に作る物のテストは終わっているみたいなものだしね」
「ん? いつの間にやったのかな」
「いやいや、ほら! 巨大ロボットを動かしたでしょ。アレを小型化するだけだからね。それに、異能者達の動きはしっかりと記録させて貰っているから……後はコアにソレを覚えさせるだけだよ」
アシストスーツやパワードスーツ。日本語で言うならAI付き強化外骨格とでも言える代物らしい。ぶっちゃけると〝人が装着する錬金人形〟という物になる。
この着る錬金人形は、パワーやスピードを強化する物なんだけど、ソレ以外にも変態的な動きを可能にしつつ、その動きによる体への負荷も軽減してくれる……ようにするらしい。うん、全く何を言っているのか分からないじゃん。
いや、言いたいことは分かるんだけど、はっきり言って何をどうしたらそうなるのかが分からない。
「ま、全身に俺の義手を装着すると考えても良いかもね。手を伸ばしたりすることも可能になるだろうし」
当たり前の話だけど、生身の手が伸びる訳じゃない。装備している錬金人形の手が伸びるだけ。
「それ、自衛官とか米軍の人達よりも、異常な異能と言える能力を手にするという事になるのではないかしら?」
流石に生身の人間には手を伸ばしたり、変形させて武器にしたりする事なんて出来ないしな。
「……全身義体化?」
「いや、それは流石に色んな意味でヤバいじゃん」
脳を取り出して錬金人形にIN! とか、ちょっと考えたくないよな。……やろうと思ったら出来そうなのが更に怖い。
「そこまではやらないよ。だからこその外骨格だからね」
景はそう言いながら、脱線しつつその外骨格人形についてのメリットを話していった。
「コレはいわば生身サイズの複座式戦闘機みたいなモノなんだよ。そもそも複座式と言うのは、1人が操縦をもう1人がレーダーや火器をといった役割を果たしていたんだけど……」
時代が進み、複座式のレーダーや火器はコンピューターへと移り変わっていった。ただそれでも、複座式の戦闘機が直ぐに廃れたわけじゃなかった。複座には教官が搭乗し指導をする為の機体として重宝されたのだとか……。
「ただ、それも今はシミュレーターが現れた事で訓練機としてすら残ってないんだけどね。だから複座式の機体は現在だと博物館とか、昔の機体を飛ばしてみよう! 的なイベントでしか使われなくなったんだけど、今ここで複座式ってのは復活するんだ。素晴らしいロマンだよね」
何故復活するのか。それは錬金人形が魔法を使えないからだそうだ。
錬金人形が体を動かし人が魔法を使う。そもそも、魔法を使う時に人は走り回る事が出来ないからね……だから魔法を使う時というのは隙だらけだったりする。
しかしそれをカバー出来る様になる。そしてソレが途轍もなく大きな事らしい。
「錬金馬に乗るでも良いんじゃね?」
「確かにケンタウロス型に乗れば動きながら魔法は使えるけど、ケンタウロスだけで全てをカバー出来るわけじゃないからね」
ケンタウロス型でもフォローできない穴をカバー出来るのが、この強化外骨格の錬金人形という事らしい。
「騎乗じゃなくて装着だものね。それも、勝手にガードや迎撃をしてくれるのよ? それも全方位からの攻撃を」
「ケンタウロス型だと前方しかガードして貰えなかったからね。そして、先程も言ったように……この複座の機能自体はロボットで戦った時に検証済みなんだよ」
だから後は人形サイズで作るだけという事らしい。そしてまた、その素材も今は良い物が用意出来る。
「この賢者の石・巴とかをコアにすれば……あの変態的な動きを再現する事が出来る人形を作れるはず」
そうなれば、例え異能者集団に襲撃されたとしても、島民達が負ける戦いにはならないだろう。なんて、景がニヨニヨととても人様に見せたらいけないような笑みを浮かべていた。……うん、とってもマッドじゃん。
「最悪、錬金人形部隊や俺達がロボットで援軍として出た時に、間に合うだけの時間稼ぎは出来る様になるはず」
戦闘職のクラスメイト達に配っておけば……ね。と、景が楽しそうに語っているのを見て、つい私は。
「景のネジが何個も外れちゃってるじゃん」
なんて思わず呟いてしまった。だけど私の考えはエリカや雪には理解出来きたようで「だね」と肯定してくれた。だが桔梗はと言うと……。
「良い方向に外れているのだから気にする必要なんて無いと思うわよ。コレは皆を守る為に必要な事だもの」
なんて、私は理解してますよなんて態度を見せた。あれ? 元々は桔梗って此方側だったじゃん。なんでそんな態度を見せているんだよ。
「そこはほら……この島には私達のお父さん達も居るもの。皆の安全を確保出来るならコレぐらいはね?」
それなら離島を増やさなければ良いじゃん……と思わなくもないけど、離島は今後の事を考えると増やさないとダメだからな。
ともあれ、景も桔梗も色々と考えすぎて頭が痛くならないんかね? システムもシステムで、何か覇気が無いしな。間違いなく忙殺されて回復が追いついていませんって感じなんだよなぁ。
もう少し肩の力を抜けばいいのに。
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