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面倒なのは表で騒いでいるヤツらだけでは無いのです

「あちゃー……やっぱり待ちきれず動く人も居るよね」

「人と言うよりも国かしら?」


 やれやれといった具合に、大きな溜息の音がモニタールームの中で響き渡った。


 さて、彼女達は何に対して溜息を落としたのかだけど、それは最近全く無くなっていたはずの〝海中からの侵入チャレンジ〟が再開された事に対してだ。

 国が〝離島〟についての情報を公開したからね。だから、その真偽を確かめる為にもと行動を開始したのだろう。そして、上手く上陸でも出来れば儲けものとでも思ったんだろうね。


 一切、この島の領域内に入れなかった事を忘れて。


 ともあれ、自衛隊や米軍が出入りをしているのだからと、もしかしたら特別なルートがあるのでは? と考えてしまうのも分からなくもない。

 ただ、行動に移すかどうかはもう少し考えろよって話なんだけどね。


「ただどうも、これ自衛隊の潜水艦や米軍の潜水艦も同じような事をしているみたいだよ?」

「……内ゲバ」

「指揮系統が違うというのはありえるのかしら……」


 どこぞの誰かが大金の山でも築き上げたのだろうか。それとも強権を振るったのだろうか。

 どちらにしても、日本にも米国にも、どうやら面倒な輩が裏で力を振るっているみたいだね。それこそ、俺の家族だった奴らを操っている者より面倒そうな相手が。


 ただどの道、パスが無い船や人は離島に到着すること無く、領域外へと飛ばされるんだけどね。だから、どれだけチャレンジしても意味が無いし、バラ撒いた金の無駄なんだけど。まぁ、相手にはそんな事は分からないか。


「ただ、汚職に手を染めた人達が居る可能性が高いって事だよね」

「畠山さん案件かな? でもこれで、また胃を炒めちゃうんじゃないかなぁ」

「……炒めるだと美味しそう」

「人の胃だと思うと食欲は失せるじゃん」

「……間違いない」


 俺としては牛の胃でも食欲は失せるけどね……だって見た目が見た目だから。うん、まるっと1個の塊はね。アレは絶対に画像検索をしたらダメやなつだから。それこそ、4つある中の1つには、うにょりと虫でも出てきそうな見た目をしているし。

 いやまぁ、好きな人は好きで良いんじゃないかなとは思うけど、俺は食べたいとは思わないって話。


「……見てみたい」

「さすが悪食。蜂の巣とかでもそのまま、むしゃりと食べちゃいそうだなぁ」

「……興味は微妙にある」


 微妙に有るんだ。ただ、その話はテイムした蜜蜂達には言わないようにね? 絶対悲しい表情になるだろうから。


「と、食の話は横に置いておくとして。日本政府の方は畠山さんの管轄だから良いんだけど、米国とか他の国はどうしたら良いんだろう?」

「普通に考えたら畠山さんを通してって話になるのだけど……」

「シーサーペントの所為にして撃沈させるとかって手もあるじゃん」


 いやいや、七海さんは分かっててソレを言っているでしょ。そんな事は無理だって。


 確かにシーサーペントが1体放流されたからね。だから、モンスターの仕業に見せかけてと言うのは出来なくはない。更に言うなら、もう1体お代わりで放流するなんて手もある。

 ただ、下手に撃沈してしまうと、有る事無い事を結びつけて少しでも揚げ足を取るなんて真似をしてくるのが政治とか外交。そして、少しでも自分達の利権を確保しようなんて動いてくるんだよね。


 ぶっちゃけ、俺達にとっては外で利権争いをされても別に問題は無い。無いんだけど、その余波を受けてしまった畠山さんが担当から外れるなんて事にでもなったら話は変わる。


「アレだけ話が出来る人は少ないからね。もし畠山さん以外の人が担当になったら、鈴木さんの胃が更にマッハで消耗されちゃうよ」

「やっぱりダメかぁ。撃沈して救助して、後は脅すとかでもすれば楽なのになぁ」

「七海……それってマッチポンプって言うんだよ?」


 あれ? 分かって言ってたと思ったけど、全く違う方向で事を考えていたみたいだね。しかも、その考えが島に馴染んだものになっている。実に頼もしいと言うべきか、少し攻撃的過ぎると言うべきか……。


「ともあれ、七海さんの発想は〝異世界の国相手〟なら最初に考えるべき方法だけど、こちらの世界だったら悪手だから」

「モンスターとの戦い続きで、少し考えが脳筋の方へとシフトしているわね。ここらで少し思考をリセットした方が良さそうね」


 そしてそれは、島に来た人達全員に言える事だろうね。

 一応、島の機能を使って戦闘でのストレスを軽減するような魔力を垂れ流している。だからなのか、割と脳筋な発想に繋がりやすいのかもしれない。何せ、力を使うのにストレスを余り感じないのだから。


 とは言えなぁ。この機能を切ってしまうと、今度は戦闘行為に対してストレスの蓄積がマジでヤバい状態になるんだよね。

 何せ、一度その機能を切って戦ってみたんだけど……思った以上に胸や胃に重いモノを感じたんだ。


「平和を謳歌していたのだから当然と言えば当然よね」

「もし最初からこのストレスフリー機能が無かったらと思うと……」


 島に突然飛ばされた学生達の大半は、廃人になっていた可能性が高いよね。そして何とか意識を保つことが出来たとしても、PTSDになっていたと思う。

 なので、この機能を切るという選択肢は無い。無いのだけど、ストレスを感じない分その手の行為にリミッターが無いのと同じな訳で。


「理性とか道徳を大切にしましょうって話になるかなぁ。レベリングをしている時点でどうなの! って言われそうだけど」

「そこはしっかりと、素材を大切に使うという事で」


 使える物は骨でも便でも何でも使う。貯蔵することは有っても余らせて捨てるような真似は絶対しない……と、しっかりと最低ラインを引いておかないと。そうしないと、命に対する考えがどんどん軽くなってしまう。

 そしてそれは、最終的に自分の命すら軽く考え始めるような事に繋がりかねない。その為にも節目節目でしっかりと思考をリセットしていく必要があるかな。


「特に流されやすい七海とかには重要よね」

「ぐっ……確かに元から脳筋と言われたら否定出来ないけども! そこまで戦闘馬鹿じゃないじゃんか」


 ブーと口を尖らせながら文句を言う七海さん。

 だけど君、さっきの発言はモロに戦闘馬鹿とも言える発想だったからね? 確かに、耳元でブンブンと飛ぶ羽虫を打ち潰したくなる気持ちは分かるけど。


「相手は羽虫じゃなくて人だからね?」

「……虫も一つの命」

「ソレを言い出したら、空気を吸うのも1歩踏み出すのもアウトだと思うよ」


 人の命だけが特別なんて事は言わないけどね? だけど、人を叩き潰したらかなり面倒な話になるから。なので、今このタイミングで戦闘寄りの思考から会話寄りの思考にシフトしないとね。


「鈴木さんなら大丈夫だとは思うけど、彼も最近はレベリングに集中しているからなぁ」

「自衛隊や米軍の人の成長が凄いもんね」


 戦闘技術は俺達の方が低いけど、魔法とか対モンスターについては俺達の方が先に携わって来たしね。簡単に抜かれる訳にはいかない。勿論ジョブのレベルも。


「ともあれ、自衛隊や米軍の人が頑張れば頑張るほど、横から伸びる手も増えそうだよね」

「現状だと畠山さんしか頼れないからなぁ……」


 とは言え、他に頼れる人を増やせるのか? と聞かれたらNOなんだけど。下手に〝本島〟の存在を知る人を増やしたくないからね。


 さてさて、本当に横から手を伸ばしてくる相手はどうするべきかな? 七海さんにはあの様に言ったけど、最悪はマッチポンプも考えるべきかもしれないね。

ブックマークに評価ありがとうございます!(๑•̀ㅂ•́)و✧

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― 新着の感想 ―
[一言] 「と、食の話は横に置いておくとして。日本政府の方は畠山さんの管轄だから良いんだけど、米国とか他の国はどうしたら良いんだろう?」 一々、些細なことを気にしますね。相手側からは一切手出しできな…
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