進んでは下がっての歩み~七海視点~
開き直ってからは景と普通に会話が出来ている? いいや、それは違うね! だって結局の所、私達が抱えている問題は何一つ解決していない。
そしてそうである以上、何か有った時に過剰反応してしまうのは仕方ないよな。あの冷静沈着が服を着ているような桔梗だって、気が緩むとあっという間に制御不能な状態になる。
唯一なんの変化も見せていないのは雪だけど、雪は雪で表に出さないだけ。ふとした瞬間にフリーズをしていたりする。
そうなんだよ。意識するなって言われた所で、意識してしまうに決まってるじゃん!
「心の叫びだねぇ」
「作業に集中している時とかは良いんだけどなぁ……気が緩むとダメだぁ」
「ある意味当然と言えば当然よ。戸籍としては別なのだけど、肉体的にはあの修学旅行の日から2年は過ぎているもの」
「……ん。肉体的には18~19」
そう言われてみればそうなんだよな。たださ……雪の見た目なんだけど、何で中学生ぐらいにみえるんだろうな? 島で生活して少しは成長したんだろうけど、ほぼほぼ変わらないんだよなぁ。
「……失礼な事を考えてる」
「べ、別に誰も小学生高学年が中学生にもなるかぁ……とか思ってないじゃん」
「……語るに落ちた。……七海はなんて酷い。ボクはもう大人に片足を突っ込んでる」
思いっきり上目遣いなジト目で見てくる雪。うん、どうみてもお察し下さいというヤツだ。これ、中学1年や2年ぐらいの人達と前倣えをやっても雪は……うん、やめよう。何だかこれ以上は踏み込んではいけない気がする。
てか、本人はまだまだ! と言っているけど、これ以上の成長は望めるのか? もう打ち止めって気もするんだけど。てか、第2成長期は普通に過ぎているんだよなぁ。……雪のやつ、成長期が来なかったのだろうか。
「……伸びた。約4cm程」
キリッとした感じで言わなくても。因みにそれ、伸びとしては少なすぎるから。女子なら約8cmほど伸びるって言われていたりするからな? だから、雪の伸びは普通の半分なんだけど。
「七海はがっつり伸びてたよね」
「エリカと桔梗は平均って感じか?」
「覚えてはいないのだけど、そんな感じだったはずよ」
となると、やっぱり雪が少し……な。
「……むぅ。まだ、まだある。ボクには第3の成長期という望みが」
グッと拳を握って宣言する雪。ただそんな雪を、私達は何とも言えない……いや、言っちゃいけない。そんな空気にやられてしまったのか、突っ込みたくても突っ込めない。ただ悲しい視線を送るぐらいしか出来なかった。
だめだだめだ。この話題は悲しみしか生まない。というより、元々は違う話をしていたはずなのに、何故か雪の事へと脱線してしまった。
よし! ここは話題を戻すとしよう。
「それで桔梗さん。何か良い感じで普通に過ごせる様になる方法とか無いですかね?」
「七海……人任せはどうかと思うわよ。もう少し自分でも考えてみたらどうかしら」
「そうは言っても、七海と同じで私も全く想像出来ないなぁ。気持ちが緩んじゃうとどうしてもね……でも常に気を張るってのは疲れちゃうし」
「……時間を待つしかない?」
やっぱり単純なのは慣れるまで頑張れって事か。でもそれだと、何時何処で心臓が破裂するか分からないじゃん。
「それはちょっと言い過ぎじゃないかなぁ。心臓の鼓動が聞こえる程度なら分かるけど」
「……ん。破裂じゃなくて動悸。更年期障害?」
「まだそんな年齢じゃないからな!」
「じゃれ合いは其処までにしてね。それで、雪が言うように時間を掛けるのがベターなのは間違いないわよ。ただ、どうしてもと言うのなら方法は無くもないのだけど……間違いなく、絶対に誰も選ばない手段ね」
な、なんだよその禁断の技的な感じの手段って。はっ!? まさか……景に何かするつもりじゃないよな? こう、口に出して言えないような真似を!
「いや、そんな非道な話じゃないわよ。あ、でもある意味では非道ではあるかもしれないわね」
「や、やっぱり桔梗……私、桔梗はそんなヤツだなんて思ってたんだからね!」
「思っていたのね。七海、あなたと過ごした日々は楽しかったわ……でももうだめね。あなたは知りすぎたのよ」
き、桔梗……そ、そんな! 私達の友情は! 共に苦難を乗り越えて来た信頼と信用は!! アレは全て幻だったとでも言うのか? そんなのってあんまりじゃん!!
「……茶番は何時まで?」
あ、雪が私と桔梗の事を冷ややかな目で見てる。何時もと表情は変わらないけど、アレは若干引いている時の雪だ。
「こほん。えっと、微妙に興に乗ってしまった芝居はこの程度にするとして。話は単純よ? 本当に……ね」
そんな前置きをする桔梗だけど、その目は実に何処か遠くを見つめている。
あれ? もしかしてそんなに厄介な方法なのか? だけど単純なんだよな。いったい桔梗はどんな方法を思いついたんだろう。私には全く思い当たるモノなんて出て来ないな。
なので、私は桔梗が次に出す言葉を黙って待った。しかし桔梗は、本当に何処を見ているのやら……そして、いったい何を考えているのかすら読めない。そんな表情をしながら、口を開く気配が無い。
「……んー。もしかして、もっちーに被害大?」
雪がそう質問をした。すると、桔梗は雪の方へとゆっくり顔を動かしてから口を開いた。
「ある意味ではそうとも言えるかもしれないわね。えぇ本当に……我ながら、こんな案を出せるなんて反吐が出るわ」
な、なるほど。桔梗は自己嫌悪をしていたのか。だから、何処か遠くを見つめながら黙り込んでいたと。しかし、桔梗が自己嫌悪をするレベルの方法とはなんだろう。しかも凄く単純なやり方なんだよな。
「あ、もしかして……そういう事?」
エリカが何かに気がついたようだ。ただ、思いついた後にはエリカの表情も微妙に曇ってしまった。
あ、あれ? もしかしてこの場で分かっていないのは、私と雪だけか?
「……ボクは最初から予想済み」
「え? それマ?」
「……ん。答えは単純。問題を無くしてしまえば良いだけ」
「その方法が分からないんだけど?」
私がそう返すと、雪は「ヤレヤレ」と言ったポーズを取りながらとんでも無い事を口にした。
「……ハーレムでの結婚をシステムに決められた状態、だけど以前と同じようにボク達は過ごそうとしているのが問題。なら、以前と同じ過ごし方にしなければ良い。……そう。形だけでも結婚してしまえば良い」
「は? ちょっと待て。何でそれで解決に繋がるんだよ。余計に悪化してるじゃんか!!」
「簡単な話よ。今の状態だと別の道がある〝かも〟しれないという考えで行動をしているわね。でも、形だけでもそうしてしまうことで、逃げ道をなくし覚悟を決める必要がある。所謂、心の〝背水の陣〟というやつよ」
捨て身過ぎんじゃん!! それ、景だけじゃなくて私達にも大ダメージじゃねーか。
あぁ、でも納得はした。どうして桔梗があんな表情をして居たのか。そして、エリカが思いついたと同時に曇ったのか。そりゃ、私達の事もだけど、景の事を考えたら精神的に大ダメージだよな。
てかさ。何で雪はそんな何とも無いと言った感じで居られるんだ? この方法に気がついたんだよな?
「……ん。ボクともっちーはもふもふメイト。それは絶対に変わらない事実」
何だそれ。全く意味がわからないんだけど!! 何そのもふもふメイトって。もしかして私達もそのメイトになれば、そんなにダメージを受けずに済むのか? それなら、是非にも仲間入りしたいんだけど。
「……魂のメイトだから、直ぐになれる訳じゃない」
なるほど……雪のそれは当てにならないと言う事だな。
しかし、どう考えても採用が出来ない案か。意識をしないようにする為に結果を作っちまえば良いとか……はぁ、どう考えても本末転倒過ぎるだろ。
確かに手っ取り早いだろうけどさ、でもソレに伴うデメリットを考えるとなぁ。
うん、やっぱりこういうのは時間をかけるのがベストなんだろうな。例えどのような結末になったとしてもだ。……きっと私は焦りすぎて居たんだろう。このままだと、何処かのタイミングで大ポカをしてしまうかも! って。
これはあれだ。焦ったらそれこそ馬鹿な発想をしだすからな、3歩進んで2歩下がる精神で行こう!
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