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人形をそんな用途で作ってません

 息を呑んだ。思わず「あ、あ、あ、あ」なんて単語を連呼しそうになるぐらいの緊張感。

 何故そんな空気が漂っているのかだが、それは今、俺の目の前には春野さん達が勢ぞろいでじっとこちらを見つめてきているからだ。……いや、睨みつけてきているぐらいの真剣な表情と言ったほうが良いかもしれない。


 何も言えずにただそんな彼女たちを見ながら身構えていると……春野さんがスーハーと深呼吸をした。そして再びキリッと真剣な表情に戻し口を開いた。


「望月くん……ううん。景くん! このまま会話を殆どしない状態ってのはとっても良くないと思うんだ。それでね、先ずは以前の感じを戻すのが良いと思うんだけど」


 確かにそれは俺も思っていた。

 でもほら? やっぱり事が事だけに皆それぞれ思うところがある。特に家族が揃っている春野さん達は、家族との兼ね合いもあるはず。

 何せ内容を言ってしまえば、ハーレムを公認しろ! って、島の神様と言っても過言ではないシステムさんがそう告げた訳だからね。それも、彼女たちの母親の前で。

 だからこそ、心の整理がつくまで少し距離を置いて、リンクを使ってのやり取りを行うのがベストかな? なんて考えていたんだけど。


 どういう訳か、彼女達からこうして突っ込んで来られてしまった。それもかなり真剣な表情で。


「景くん。さらなる爆弾なのだけど、どうやら異世界側にもマスター権限を持っている〝人〟は居ないそうよ。そして、新たに増やす予定も無いと言われてしまったわ」

「という事は、何か手段が無いかな? って考えるのは無駄って事でおっけ?」

「オッケーじゃん。システムさんが言っている事だからなぁ……残念ながら現状お手上げ」


 両手を上げてヒラヒラと手を振る夏目さん。あー……これはマジで、全員を受け入れるかそれとも切るかを選択しろって事か。

 ただ切った場合。彼女達の進める道はブラスミさんの場所しか無い。そしてそうなると……うん、ブラスミさんは間違いなく胃がやられてしまい早々に潰れてしまうだろうな。


「やっぱり祝福っていう名の呪いだな。全く自由という物がないじゃないか」

「……もっちーは自由恋愛するつもりだった?」


 それは全く無いなぁ。自由が無いとは言ったけど、それは俺の事じゃなくて冬川さん達の事だからね? 前にも言ったが、俺自身はもともと誰とも付き合いとかをするつもりなんて無かったし。


「望月は望月って事か。あ、景だったな」

「……もっちーはドールマスター。という事は……はっ!?」

「そっちの趣味は無いからな」


 いやいや、なんで皆して疑いの目を向けてくるんだよ。別に俺はドールラブな性癖は持ち合わせてないから。

 確かにロマンって事で、錬金人形を大量に作ってヒャッハー! と楽しんではいるけども、それは決して性的な部分じゃないからな? ロボットロマンとかそっちの方面だから。


 あ、でもアル達みたいな魂を持つ人形の核を作れるという事は、それこそ理想の彼女を作ることも可能となるのか。うん、よくネタにある「俺、彼女を作る!」ってヤツがガチで実現可能だな。

 あぁ……だからこそ、彼女達は俺に対して疑いの目を向けているのかもしれない。うん、俺は決してそちら方面の人間じゃないから。


「でもほら、人形を侍らせているし……」

「言い方!!」

「人形ハーレムだよね」

「あくまで俺は製作者だからね? それに、その人形も全て人型じゃなくてモグラとかクレーンみたいなのとか、ベルトコンベアとかもあるから」

「海や塩湖は人魚ハーレムじゃん」

「彼らには性別が無いから。それに水中作業ばっかりやっているから、殆ど関わりがない状態だよ?」

「……もふもふロボットがほしい」

「オッケー。それは作っておくよ。それで形は犬型? それとも猫型?」

「……両方」


 若干1名なにやらオーダーをして来たけどソレは良いとして。

 そんなに疑われるような真似はしていないはず。だからコレは悪ノリだよね? そうだよね。全てを本気で言っているって事は無いと思いたいんだけど。


「5割ぐらいじゃん?」

「むしろ5割も本気だったのか……」

「私はそこまで本気で言ってないよ? ちょっともしかしたら程度だから!」

「もしかしてと疑惑は覚えたと」

「え、2人とも冗談じゃなかったの? 私はてっきり、コレを切っ掛けに以前みたいな会話が出来るようにというステップだと思っていたわ」


 あ、秋山さんが初めて天使に見えただと!? いやまて、天使ってお前の事じゃないからな? だから脳内に直接「私みたいだということは、とても知的でクールということですね!」なんて叫ばなくていいから。




 て、あれ? なんだか今、普通に会話してないかな。

 確かにまだちょっとぎこちないと言うか、照れとかそういうのは有りそうだけど。それでも、無言で過ごした数日の事を考えると……これは大きな一歩なのでは?


「……ん。もふもふは全てを救う」

「いや、今は何処にももふもふ要素なんて無かったから」

「……む。ボクがオーダーした」


 それはまだ手元に無いからね? 作られても居ないものでもふもふセラピーなんてあり得ないから。

 ただまぁ、これで彼女達とも普通に会話が出来そうだね。でもやっぱり以前とは違う感じにはなりそうだけど。何せ現実を突きつけられている状態だからね。そりゃ、嫌でも先の事を想像しちゃうものだし。だから意識せず、以前みたいな関係ってのは難しいと思う。


 それでも、何もしない状態よりはマシって事で良いのかなぁ? まだまだ色々と解決しないといけない問題は沢山有りそうだけどね。


「気にし過ぎるよりは良いんじゃね? ほら、こう当たって砕けろ的な!」

「砕けたら駄目でしょ……まぁ、どういう意味で砕けたらってのも有るけど」

「……常識を砕く?」

「それは砕いたらダメなやつじゃないかなぁ? あ、でも異世界が来たら常識がガラッと変わっちゃうかもね」

「今も既に、今まであった常識が覆っているわよ。お陰で鈴木さんや島の外に居る人達は東奔西走な状態だもの」


 当たり前が当たり前じゃなくなる時が来るかもしれないかぁ……ま、俺は島に居るから外のゴタゴタは完全にスルーさせて貰いますけどね。


「離島を作ったり何かあったら錬金人形部隊を派遣する準備をしているのに、スルーすると言い切れるのは何故かしら」

「それはそれ。この島を守るために必要な事だしね」


 この島は俺にとって天国みたいな場所だからね。そりゃ、全力で守るために何でもするよ。




 しかしアレだな。会話が出来るように戻ったのは良いけど……これって、問題を棚上げした状態なのでは? 根本的原因は解決していない訳だし。

 とは言えだ。この問題の解決って……うん、考えるのはやめよう。なんかドツボにハマりそうな気がするし。結局、俺と彼女達が袋小路の状態で抜け出せないという状況に変化は無いからね……。





「あ、そうそう。私達も名前呼びで慣れるようにしていくから! 景にだけ私達の呼び方を変えさせるのも変じゃんか。だから景も私達の呼び方には注意しろよ? 特に親がいる時とか紛らわしくて仕方ないからな!」


 おっと、どうやら彼女達が俺の名前を呼び直したのはそういう理由だったか。俺側は紛らわしいなんて状況は無いんだけどね。やっぱり片方だけがってのは微妙だから、お互いにってのを徹底するって事かな。

 確かに前にも言われたのに、結局は苗字に〝さん〟付けで呼んでたからなぁ。ま、今回の事を切っ掛けにって事なのかな。

ブックマークに評価ありがとうございます!ヾ(*´∀`*)ノ

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[一言] ファービー的なものはもふもふロボット枠に入りますか()
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