トラなウマ。それと他の人に対する考察
安全とも言える壁や屋根がある。そして、家具はまだ出来ていないけど、寝床は室内の柱に括り付けているハンモックがある。
それ自体は良い事なのだけど……きっとそれで俺の気は緩んでしまったのだろう。
鑑定をしまくった俺は、疲労から来る疲れを癒すために少し仮眠をとる事にした。
ハンモックに揺られながら、休憩と言う仮眠をとった時に俺は久しぶりの夢を見てしまった。……勿論、いい夢などではなく悪夢を。
そして、その結果……俺はハンモックから転がり落ち、地面へと食べたものを全て吐き出してしまった。
ただ、その時何を思ったのか、吐き出した物を見て俺は「あぁ、貴重な栄養源が……」と変な思考をしてしまったが、それは一種の現実逃避だったのは間違いない。
夢の内容。それは俺のトラウマ。過去に起きた現実。
「くそ……天国か? と思えるこんな場所で、あの糞みたいな奴等の事を夢にみるとか……」
俺がボッチでいる事を選んだ理由。俺が人と関わると気持ち悪くなったり頭痛が起きてしまう理由。
その根源と言える存在である、家族や小学校時代のクラスメイトが夢に出て来た。
夢の内容を思い出して、思いっきり地面を拳で殴りつける。
あぁ、あの憎々しい顔をこうして殴る事が出来れば……なんて、何度思った事か。しかも、こうしてもう関わる事の無い場所に居るというのに、まだ俺の事を蝕んでくるとか、どれだけゴキブリみたいな奴等なんだ。
「まだ頭が重いな……」
精神安定剤でも有れば良いのだろうけど今は無いんだよな。
いや、そもそもそう言った薬は飲んだことなんてなかった。というのも、薬を処方してもらうためには病院に行かないといけない。けど、あの糞共が病院へと行くのは許可してくれるはずもなく……ただただ耐えるしかなかったんだよな。
なので、市販の頭痛薬を何とか手に入れたりして、それを飲んで耐えていたんだけど。
「ここ数日安定していただけに、今回のダメージは久々すぎてきつすぎる」
こうして、なんとか動けているのも実は一時間以上は地面で伏せた後だからだ。……体感での一時間だけど。もしかしたら、もっと経っているかもしれない。こころなしか、外が薄っすらと暗くなってきている気もするし。
ただ、仮眠をとっていた時間がどれぐらいかもわからないから、寝過ぎていた可能性もある。なので、一体どれだけ寝ていて、どれだけ伏せていたのか分からない。
まぁ、それはそれとして。
駄目だな。今は何の作業も出来ない。手の指がピクピクと震えているし、視界も少しぼやけている。
そして、先ほど言ったように頭はかなり重い。ずっとズーンとした感じがしていて、少しでもひどくなったらズキンとした頭痛に発展してしまうのではないだろうか。
ただ、救いなのは音が無い事だろう。
もし音があったらと思うと……こういう時の音と言うのは妙に頭に響く。それも不快な方向で。
特に機械音や電子音ともなると、その不快感はさらに増していくモノで……あぁ、リンクの通知音だけど、仮眠をとる前に切っておいてよかった。
あんなのが鳴り響いたら、下手をしたら発狂していたかもしれない。
そんな感じで、夢の内容から離れようと別の事を考えつつ、体は木や石になった気分で身動き一つ取らないようにしながら心身共に休めて行く。
一体どれだけの時間が経ったのか? 俺は自分の腹の音で「はっ!?」と意識を復活させた。
寝ていた訳ではない。ただ単に、ボーとしていたというか無我の境地へと行っていたというか、とりあえず、何も考えずに体を休めていた。
そのお陰なのか、お腹は空いてしまったようだし、頭の重さもだいぶ取れていた。
そして、そこで初めてスマホを取り出し、何か有ったかをチェックすると、スマホにはリンクの通知ログが大量に……。
「うわぁ……ログが凄い。もしかして、芋についてこれだけ語っていたのか?」
そう思いながら、もし違う話かもしれないし、なんなら何かの依頼かもしれないと思いリンクの会議チャットを開いてみる。
『大丈夫!? 何か大きな音がしたんだけど』
『これを見たら生存報告よろ。何か必要な物があるなら言ってください』
『……飴ちゃんいる?』
『おーい? 生きてるかー?』
……何やら女子は俺がハンモックから落ちた音を聞いていたらしい。
とは言え、俺には接触して来なかった? ……いや、違う。周囲を確認してみると、微妙ではあるが女子が来ていたのは確認出来た。
というのも、俺が吐き出しただろうモノが綺麗に処理されていたからだ。そしてそうである以上、女子は俺の生存を確認した後、俺に気が付かれない様に後処理をして去って行ったのか。
かなり気を使われているなぁ……。
なんだろうな。なんかこう、もやもやとした気分になる。こういう扱いってされた事無かったし。
なんなら、今までは俺が頭痛で倒れていようが、物を吐き出そうが、汚い物を見る様な目で見て来ていたしな。心配するなんて行為は皆無だったんだよな。
とりあえず、気分を変える為に水を一杯グイッと飲み干す。そしてついでにと頭から水を被っておく。
ひんやりとして、かなりすっきりとした気分になっていった。うん、思考も視界も随分と良好になって行くのを感じる。
「とりあえず……何か食べたいけど、先にリンクへ返信をしておかないとな。えっと「もう大丈夫。色々とありがとう」とでも返しておけばいいか」
感謝はしっかりと言葉にして返しておかねば。てか、お礼の言葉とかこの子達以外に言ったことあったっけ? 遠い過去に口にした記憶が有るような無いような……まぁ、今は思い出すのをやめておこう。下手をしたらぶり返す可能性がある。
しかし、本当に油断をしていた。
まさかこのタイミングで発症するとはな……いや、寧ろこの3週間何も起こらなかった事に感謝するべきだろうか?
この、室内と言う安全地帯の確保。灯りもイノシシから取り出した獣油で確保出来ている。なので、心に隙が出来てしまうのも当然なんだろうな。
とは言え、それでダメージを負っていたらどうしようもない。とは言え、克服しようにも……相手に何かをして克服は無理だ。現状、顔を見る事も出来ないし。
割り切るしかないんだけど、それって簡単にできる事だろうか? いや、出来るならトラウマとは言わないか。
「一度発症してしまった事だからな……下手をしたら今後また起きる可能性も……」
やばいな。やりたい事や作りたいものが沢山あると言うのに。
いやいや、人と接触さえしなければ最小限で済むはず……女子達は俺の事を考えてしっかりと距離を考えてくれているから大丈夫だろう。
なので心の壁を気にせず突っ込んでくる奴は……あぁ、クラスに一人いたけど、今そいつは近くに居ないから大丈夫かな。
ただ今後、誰と遭遇するかもわからないからなぁ。ちょっとした恐怖ではあるな。何せ女子達がこの場所へと来れた訳だし。
てか、女子達ってなんでこの場所に来れたんだ? 海辺って左右に見えない壁が有って通れなかったはずなんだけど。
もしかして、森には壁が無いとか? それとも、システムさんが何かやったのか? うーん、分からない事が多いな。だけど、彼女達がこの場所に来ることが出来たのだから、少しは警戒しておくべき事だったな。
「今までは忙しすぎて考えてこなかったんだよな……ただ、今後は気を付けないと」
対人用のトラップも必要だろうか? 何せ、彼女達は何かから逃げて来ていた。
あの時の俺は、面倒なのが来た程度にしか考えていなかったから気にもしなかったけど、今考えると彼女達が逃げてきた相手って人間では? もしかして、保護しただけでシステムのクエストが完了していないのは……。
思わずゴクリと生唾を飲んでしまう。
あー……そうか。その可能性もあるんだよなぁ。〝クラスメイト〟が〝敵〟という可能性も。
「対人のトラウマを抱えた上で、敵が人とか……どうしろってんだ」
あぁ、頭が痛い。冷たい水を飲んで更に頭からかぶった事で楽になったはずなのに、なんだかまた変な痛みが出てきた気がする。
とは言え、その可能性があるなら何か対策を取っておく必要があるか。ま、何かを作るのは錬金術師のお仕事だからな。色々と素材も手に入った事だし、レシピでも見ながら考えるとしようか。
……明日にでも。
ブックマークや評価などなどありがとうございますです!!(o*。_。)oペコッ
という事で、第二章のメインテーマと言えるモノの一つはトラウマさんです。
トラウマな夢を見た理由は、本編にもある様に心の隙ですね。安全な空間に、心が落ち着く暖かい火の光。そりゃ、ひと段落ついたと言う事でホッと一安心と感じてしまうのも仕方がないでしょう。
とは言え、そのトラウマさんの内容はまだ少ししか触れていませんが……この事をどうするかが未来のげふんげふん。
てか、この事をなんとかしないと……タグに有るハーレムさんが呼吸をしないの!!
ぶっちゃけ、簡単に如何にかなるのか? って話ですけど、それはもう物語上何とかせねばならない訳で……出来れば生暖かい目で見守ってやってください。




