閑話・クラスメイトの現状(男子生徒A~栄太郎~)
キコキコと、弓切りを使って火を熾す。これがまたとてつもなく時間が掛かって大変な作業だ。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 火よ付け! 燃えろ、俺の心の様に!! バァァァァァァニングゥゥゥゥゥ!!」
「おーい、叫ぶとエネルギーを消費するぞ」
うるさい! こんなの気合を入れなければやってられないだろう!!
気合を入れなければ力が入らない、力が入らなければ弓切りを動かす腕の速度が落ちる! そうなると、当然だが火が付かない!! だからこそ、気合だ! 気合を入れろ俺ぇぇぇぇぇぇぇ!!
「えーたろーの奴叫びすぎぃ。暑すぎだわ……全く、それに何で私がこんなヤシの実を拾わないといけないのよ……」
「飲み水も食料も少なくなってるから仕方ないじゃない。皆で協力しないと……こんな状況簡単に死んじゃうわよ」
「とは言え、だるいよなぁ。もう少し味のレパートリィが欲しいというか」
「リィって舌を巻くな。それに仕方ないだろう。馬鹿がすでに試して食べる!! とか言って、ベリーを口に入れた瞬間爆発しただろ……本人もちょっとした怪我だけで済んで良かったが」
少し離れた位置から友人達の会話が聞こえる。会話をしながらではあるが、彼等はしっかりとヤシの実を回収してくれているようで実にありがたい話だ。
そして、会話の中に出て来たベリーを食べた奴だが、彼は今「口がひりひりするぅ……」と言いながら、頬を手で撫でている……なんで頬を?
とは言え、あんな爆発する物を口にしながらも、軽傷で済んだ程度で終わったのは実に幸運だろうな。……何故か歯にも全くダメージが無かったそうだが、彼の口は一体どういう構造になっているのだろうか。
それにしても……何故だ! 何故! 火が熾きぬ!!
かれこれ、弓切りを手にしてから三十分近く立つんだぞ? いつもはもっと早くに火が熾きたと言うのに!! 何故今日はこんなにも点きが悪いのか。
「ぬぉぉぉぉぉ!! 何故だぁぁぁぁぁ!!」
皆が、皆が各々の仕事をこなしていると言うのに!! 俺だけが何の成果も得られていないではないか!!
たった三十分、されど三十分!! 三十分もあれば、ヤシの実が幾つも手に入ると言うのに!!
「な、なぁ……さっきから言うか言うまいか悩んでいたんだが……」
「ん? なんだ! 今忙しいのだ。何か言う事が有るなら端的に話しをしてくれ」
「あ、あぁ。あのな? その種火にする為の奴……湿気って無いか?」
………………。
あっ……あぁぁぁぁぁ! だから何時もより点きが悪いのかぁぁぁぁぁ!!
誰だ! この着火剤を濡らした奴は!! てか、なんで俺はこれを手にした時に気が付かなかったんだぁぁぁぁぁ!!
「へこむわぁ……まじかよぉ」
「どんまい。とりあえず、新しいのに変えたらどうだ? それは後で干しておけばいいだろ」
「おう……そうする」
そんなこんなで、俺は着火剤を交換してからもう一度火熾しを開始。
そして直ぐに火は火種が出来上がり、それを枯れ草で包みこんでから「フーフー」と息を吹きかけた事で、枯れ草が燃え始めた。後は枝などを組み上げてある場所へ入れる事で焚火の完成だ。
「ふぅ……苦戦したぜ」
「えーたろー……お前と言うやつは。まぁいいや。とりあえずお疲れ様。さて、これで焼きタケノコが作れるな」
「タケノコの刺身も飽きて来たからなぁ。毎日毎日ヤシの実か、タケノコの刺身か、修学旅行で買ったお菓子だもんな」
「お菓子ももうなくなって来てるしな……いい加減新しい食材が欲しい」
「とは言え、ベリーみたいな目には遭いたくないしな。そうだ! 魚の方はどうなったんだ?」
「魚の数が足らんのはわかってるだろう? 量を考えると、魚を食べたとは言えんな」
男子3人女子5人が今ここに居る。他の人がどうなったか気になる処ではあるが、そんな事よりも自分達の生存の方が優先だ。……先生も来ているなら探してくれても良いだろうに。
「救助も来ないしなぁ……何時までここに居たらいいんだろうな?」
「だよなぁ。少し探索でもするべきかもな。とは言え……この人数を抱えているとなると、下手に探索でもしたら食料が直ぐにかつかつになる」
今日で一週間ぐらいだろうか? 生きるのに精いっぱいで日にちは数えるのを止めた。
数えていると、まだ誰も来ない……と、気が滅入って来るからな。それなら、日にちなど無視して日々やれることをやった方が良いだろう。
そんな事を考えながら、この友人の宗太が掘って来たタケノコを調理していく。……いや、調理なんてモノでも無いか。
ただ皮を剥いて、石のナイフで無理やり切り分けて、串を刺してから焚火に当てるだけ。ぶっちゃけ、火を通すだけというのも、刺身に飽きたから試してみているだけだ。
誰か、本当に味の変化をくれ……。
「そう言えばろ過装置はどうなったんだ? 海水から水を作るとか言ってなかったっけ」
「あー……あれか。アレは厳しいんだよなぁ。人数分の水を作ろうと思ったら結構な装置になるぞ」
「煮沸して、湯気を集めて水にするんだったよな? 塩も出来るぜ! って豪語していなかったか?」
「まぁな。ただ問題があってだな……」
宗太が言うには鍋が無いそうだ。
うんまぁ、鍋が無ければ水を入れておくものが無いか。あ、そう言えば!
「なぁ、ゲームとかでヤシの実をヤカンにしたり水筒にしてたりしたやつあったけど」
「……出来ると思うか?」
「すまんかった」
普通に考えたら無理がありすぎるか。もし何らかの方法で出来るとしても、その方法を俺達は全く知らない。ネットで調べたくても、此処だと電波が通じていないから調べる事すら不可能。
これは、マジで詰んでないか? でもそういえば! アレがあったじゃないか!!
「なぁ、料亭とかに行ったら紙を鍋にしてたりするじゃん? アレを考えたらなんでも鍋に出来るんじゃないのか?」
「確かに中に水が入っていれば紙も燃えない。だが、紙の代わりになる物が有ると思うか?」
「え? でも、そこらへんにある大きな葉っぱとかを使えば……」
「……お前、ベリーが爆発するような場所だぞ? 葉っぱに何か変な成分が無いと言えるか? そして、そんな葉っぱを利用して作った水や塩を俺達は口の中に入れるんだぞ」
お、おぅ。確かにそう考えるとベリーハードじゃないか。
下手な物を口に出来ない世界。何かで試してみたくても、今ここにはクラスメイトしかいないから下手な行動は出来ない。
「何かしらの方法はあると思うけどな……とりあえず、探索する事も視野にいれよう。何か良い物を発見するかもしれないしな」
「その為には食料調達が必要と言う訳か……てかさ、よく俺達ってココヤシやタケノコを食べれたよな」
「その二つはベリーより先に口にしていたからな。それで大丈夫だと分かったから今も食べる事が出来ているだけだ」
少しタイミングが違ったら、ココヤシもタケノコも食べる事が出来ていなかったって事だよな。その場合を考えるとゾッとする。
でも、それはあり得ない話だからな。本当に、タイミングと言うのは重要だと実感するなぁ。
「おーい! 女子達や、そろそろタケノコが焼けるぞー」
「はーい、ココナッツもいっぱいゲットできたよぉ! ってか、ここのココナッツって減らないのかな? 昨日も取ったのに、今日もゲット出来たんだけど」
「たまたまじゃなくてか? 昨日もぎ取った場所と全く同じなのか?」
「うん……たぶんだけど。実が成るのはやいなーとかおもってたけど、やっぱりおかしいよね?」
女子の一人がそう言うと、周りの女子も「だよねー」と同調している。
むむ、ベリーは爆発するし、ヤシの実は増殖するし、そう言えばタケノコも同じ場所から生えていたような? まぁ、タケノコの場合は成長が早いからそう言うモノだと思ってしまっていたけど。もしかしたら、思いっきり勘違いしていたのかもしれない。
これは確かに、宗太の言う様にこの場所を探る必要があるかもしれないな。
ブックマークや評価ありがとうございます!! (*- -)(*_ _)ペコリ
一章が終わったので、他のクラスメイト達はどうなっているのか? という閑話です。
とは言え、人数を考えたら彼等のグループ以外にも居るのですが。(景の所へ来た女子4名も違うグループから来ていますしね)
とりあえず栄太郎のこの時間帯は、景と女子4名が合流した後ぐらいでしょうか。
どうやら彼等のグループは協力して生活しているようです。
明日の第一弾は注意必要(胸糞展開有り)の為にご注意を。お口直しと言う訳ではありませんが、1時間後に次ぎの話もアップしますので、胸糞状態で放置はと言う人は1時間まってから連続で読むのをお勧めします。
という事で、明日は2話連続アップです。