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やってやる!!(意気込みだけ)

 さぁ、いざ決戦だ! そんなのは気持ちだけで、行動自体は超が付くほどこそこそとだけどね。


 と言うのも、俺は今、ある場所の草むらに姿を隠している。そして、其処からとあるポイントの様子を眺めているんだ。

 一体何をやっているんだ? と疑問に取られる行動だが、決して女子達を覗いている訳ではない。そんな事をしたら、俺自身にダメージが入るだけだからな……自爆する真似をするはずもないだろう。


 やっているのは俺が作ったトラップを眺めているんだ。

 そしてこのトラップは、ぶっちゃけ手動で如何にかするタイプなので、張り付いていないといけない。だからこそ、こうして隠れながら眺めているという訳だ。

 獲物が来るまで、じっくりと、息をひそめて……大丈夫。ここは奴が周回する場所ではないから、ここなら安全だ。

 そう自分に言い聞かせつつ、流れる汗を手で拭きとる。うぅ……汗で視界が滲んでしまう。


 恐怖? 武者震い? 焦り? 高揚? 沢山の感情が入り乱れて、もう心臓はバクバクだ。少し静かにしてくれ! と言いたい。

 手だって時折ブルブルと震えている。治まれ俺の左手!! と、中二患者的な事を言いたくなるレベルで。


 「すー……はぁー……」と、深呼吸をしながら気持ちを静めようと努力するが、それで静まるのは少しの間だけ。

 待機していると言う事で、やはり思考が脳内でぐるぐると巡りはじめ、再び心臓やら震えが「また来たよ!」と挨拶をし始める。

 全く、こんな状況はさっさと終わらせてしまいたいな。心臓も手も足もうるさいし。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 奴が来たのは、俺が隠れてから太陽が30度ほど移動してから。……結構待ったな。まぁ、狩りとなると一日以上待つこともよくあるって話だし、これは早い方なんだけど。

 そして奴はと言うと、いつもの巡回コースに異物を発見。すぐさま、キシャー! と足を上げて威嚇するのだが……。



 ただ、その異物と言うのは、俺が獲って捕まえておいたウサギだ。

 そして、そんなウサギは木にロープで括り付けられているから移動範囲も実に狭い。ぴょんぴょんと跳ねて移動しようとするも、ピーンと張ったロープが邪魔をして「グェ」と言わんばかりに、地面へと突っ伏したりしている。

 ただ、何を思ったのか。奴はそんなウサギを見てから、上げていた足をフルフルと震わせ……リズムを刻んで踊り始めた。


 な、なんだろう。俺の目には、蜘蛛が「るんた♪ るんた♪ るんたった♬」とステップを右へ左へと踏んでいる様に見えてしまう。


 一体これはどういう事だろうか。奴は、蜘蛛はあれか? ご飯だご飯だ! とでも喜んでいるのだろうか。

 ただ、このウサギはどう見ても違う人の手によって捕らわれているのは間違いない話で……ま、まさか! この蜘蛛、他人の手柄を横取り出来ると喜んでいる!?

 いわゆるハイエナ行為。他人の労力でゲットした獲物を食らうのは最高ダゼ!! とでも言うのだろうか。



 因みに、ハイエナは誤解されがちだけど、ブチハイエナの場合は自分で狩りをしっかりとしている。それも成功率はかなり高い……と聞いた事があるが、中にはライオン〝が〟獲物を横取りする事もあるそうな。

 そしてまた、他のハイエナだけども〝サバンナの掃除人〟と呼ばれ、腐肉を漁っているのだとか。


 それはさておき。


 そんな行為を平然と行おうとしている蜘蛛だが、奴はじわりじわりとダンスを踊りながらウサギへと近づいて行ったかと思うと、おもむろに尻をウサギの方へ向け、ピュルルとお尻から糸をウサギに向けて噴射した。

 糸が絡まるウサギと、楽し気に腰をフリフリさせながら糸を振りまく蜘蛛。……俺は一体何を見せられているのだ。


 そして、一頻り糸でウサギを絡めた後、蜘蛛はウサギへと近づき、べっとりと絡まっている糸を巻き巻きとし始めた。


「今だ!」


 蜘蛛がウサギと糸に夢中なので、ここがチャンス! と、俺はトラップを起動させる。


 グイッとロープを引っ張ると、バサッと蜘蛛が居る地面から網状に作ったロープが現れ、蜘蛛をウサギごと空中へと巻き込んでいった。


 ぷらーんぷらーんと、網目に張られたロープが蜘蛛とウサギを包み込んだ状態で木から吊り下げられている。

 ふはは! これで我が計も成功せり! と、気分は上々だ。ただし、この状態であればまだまだ蜘蛛は生きている。今もまた、網から抜け出そうとジタバタと足が動いているのが見える。……まぁ、網の隙間から足が出ていて、それらがこっちにこいと招こうとしている様にしか見えないけど。


 とは言え、これで後は最後の仕上げをするだけだ。


「そしたらこれを取り出しまして……最後のデコレーションとして、蜘蛛に噴射します!」


 取り出したのは竹筒で作った水鉄砲。グッと取っ手を前に押すと、竹筒の先に作った穴から、中にある水がピューと勢いよく出る仕組みだ。

 た・だ・し! 中に入っているのは水などでは無い。


「まずは第1射。射出!」


 グッと押した取っ手が竹筒の中へと入り込み、中にあった液体が勢いよく蜘蛛へと降りかかる。

 そして、その液体を浴びた蜘蛛は……先ほどとは違った動きを見せ始めた。


「ギャギャギャギャギャ!!」


 何処から出しているんだ? と問いただしたくなるような音? 声? を発しながら、蜘蛛は網の中で猛烈に暴れた。

 ただ、それだけではダメだったようで……ならば、第2射撃てぃ! と言わんばかりに、俺は鞄の中に入れてある竹筒を取り出し蜘蛛へと発射していく。


 さて、この水鉄砲の中身だけど、察しの通りで以前俺が簡単に作った虫除けだ。とは言え、あの時作った物とは少々違っていて、今回用意したのは錬金術製品であると言う事。

 余計な成分やら何やらを排除したうえに、思いっきり濃度をアップさせた殺虫剤と言う訳である。


「しっかし、品質は最低品質だからなのか、この蜘蛛もしぶといな」


 足へ、顔面へと水鉄砲内の殺虫液をぶっかけるも、蜘蛛の生命力が高いのか、品質が悪い為に攻撃力が低いのか、蜘蛛はじたばたと暴れた。


 しかし、しっかりと用心をしていた俺。当然だけど、水鉄砲のストックは結構な数を用意して来ている。

 2射でダメなら、3も4も……なんなら10ぐらいまであるぞ! と、全てをぶっかける勢いで水鉄砲を交換しながら殺虫液を蜘蛛へとプレゼント。



 そして、7射目ぐらいになってようやく、蜘蛛はぐったりとし始めた。足も心なしかピクピクとしか動いていない。


「漸くと言った感じかぁ……これはまだまだ錬金術のスキルレベルを上げないといけないかな」


 今回〝も〟残念な事に、作ったものは全て最低品質だった。……全く、何時になったら低品質にあがってくれるのやら。


 とは言え、そんな最低品質のアイテムであっても、数さえあれば強敵は倒せると言う事が分かった。


「ではでは止めと行こうか」


 そう言って、俺は蜘蛛の頭に柊の杖を向けた。


「ウサギ以外に魔法を使うの初めてだけど……と言うか、なんならこの杖を生命体に使うのも初めてだが」


 ウサギに使ったとしてもオーバーキルになるだけだからな。オーバーキルになってしまえば、可食部分が無くなってしまう。

 という訳で、杖を初めて使っての攻撃。さてさて、一体どうなるのやら。


「〝ロック〟」


 火の魔法を使う訳にはいかないので、此処はいつも通りの〝ロック〟を。

 発射された石の塊が、暴れる事すらできなくなった蜘蛛の頭へと吸い込まれて行く。


 グシャ! と、何やら余りに耳に入れたくないような音が聞こえたかと思うと、蜘蛛は完全に機能を停止したらしい。


 そして、その瞬間。スマホからけたたましく連続して音が鳴り響いた。


「うるせぇ……こう、もっと余韻とかなんだとかあるだろうに……」


 そう思いつつも、ちらりとスマホをチェックして見ると……。


 俺は思わず「うわぁ……」と声を出してしまった。何故なら、其処にはシステム通知のログが大量に流れていたからだ。

 あぁ、これ全部チェックするのはちょっと面倒だな。そう考えながらも、蜘蛛を倒せた嬉しさで思わず頬が吊り上がってしまう俺だった。

ブクマや評価ありがとうござい! まぁす!! _(._.)_ぺこっとな



という訳で、トラップによる蜘蛛狩りです。

えぇ、ガチ戦闘をしたら、絶対に勝てない相手なので……とは言え、レベリングがウサギしかいない状況ではどうしようもないとw

まぁ、前々からしっかりと策を練っていたので出来たという訳ですね。


しかし、ダンシングスパイダー……ちょっとかわいい。いや、見た目がグロテスクな奴なのであれですが。

ハエトリグモのダンスとか可愛いですよ? 前に何処かで動画を見てほんわかしました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 蜘蛛って節足動物だし、海老や蟹の仲間だよね! って話を聞いたりするけど、これ食べるのかな? こんだけでかいなら食いではあるだろうし、肉と言えば兎ばっかだったからなぁ。 あと、素材もゲット? …
[一言] >奴が来たのは、俺が隠れてから日が30度ほど移動してから。 30回も日が動いてから!?一ヶ月も!? と勘違いしかけましたが、角度か。
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