虹魔石と虹魔鉄
虹色に輝く魔石。
以前に試しで作ったものは〝良品質〟だったという事もあって、1つ作った後は手をつけずに居た。しかし、絶好調! と叫びたくなる今のこのテンションならば、間違いなく高品質を叩き出せるはず!!
なんてテンションで錬金術をやったのが良かったのか、それとも悪かったのか。うん、時間すら忘れて錬金術に没頭したため……今、錬金台の上や周囲には虹色の魔石がゴロゴロと転がっている。
「……やり過ぎ」
ジト目で俺を見てくる冬川さん。しかしそれも当然だろう。何故なら彼女もまた、この魔石に埋もれているのだから。
「てか、退避しなかったの?」
「……名前を考えていたら何時の間にかに」
冬川さんも人のことを言えないじゃないか。
スライムのネーミングを決めかねていたら、周囲の状況に気がつくことが出来ずにいたとか。てか、そこまで埋まっていたら、明らかに気が付くと思うんだけどね。
「……どうでもいい。とりあえずヘルプ」
「はいはい。近場の物からチェストへ入れるしかないなぁ……ちょっと時間が掛かるけど大丈夫?」
「……ん。問題ない」
むしろ魔石の方に問題がありそうだなぁ。
なにやらスライムが魔石をジーっと見つめているんだよね。これはあれか? 「お一つちょうだいな」とか、そういうヤツだろうか。
スライムだからなぁ。色々と雑食的なところがあっても不思議じゃない。だから魔石をモグモグと食してもなんらおかしくないと思うんだ。
しかもここにあるのは全て全属性の虹魔石。うん、スライムと同じ属性だからね。そりゃ彼の興味を惹くよなぁ。
これはアレだな。放置していたら、あっという間に魔石が無くなっていましたなんて事になってもおかしくない。うん、急いで全てを収納せねば。
専用のチェストにどんどん魔石を突っ込んで……っと、おや? なにやらこの魔石は他のとちょっと色合いが違うような。ふむ、どれどれ? っと、あぁ、なるほど。どうやらこれは最初の内に失敗した〝良品質〟のやつか。
「よし、スライム君。どうやら魔石が気になっているみたいだね。この魔石なら好きにしていいよ」
「ぷりゅ!?」
俺は〝良品質〟の魔石をそっとスライムに差し出してみた。
すると彼は、ものすごく嬉しそうにしつつそっと触手の様に体の一部をこちらへと伸ばし、「本当に良いの?」とちらちらと俺の事を伺いながら、俺の持つ魔石をその触手でツンツンと突いたりしている。
うん。ナニコレ可愛い。あれか? おねだり下手な子供か? 別に良いんだよ。俺があげると言っているんだから、遠慮なんてせず持っていけば良い。
そういう気持ちで、俺はスライムに対してうんうんと首を縦に振りつつ、手に持った魔石をスライムの触手にそっと握らせてみた。
ぱぁぁぁぁ! と波打つ様に輝くスライム君。うん、どうやら相当嬉しいらしい。
虹色がウェーブしているんだけど、どういう訳か目に痛いとかそういうのはない。と言うか、虹色といってもそこまではっきりと〝虹!〟というわけでなく、なんと言えばいいんだろう? もっとこうさりげない感じの輝きとでも言えばいいのかな。
こう、水とか油とかに薄っすらと映るような虹みたいな。
そんな事を考えながらスライムの挙動をみていると……なにやら棘がある気配が。
「……むぅ。ずるい」
「ずるいって……何がずるいのさ」
「……ボクのスライムに餌付けした」
え、これって餌付けなのか? いやまぁ、確かに魔石でも食べてしまうんじゃないか? とは考えはしたけどさ。別に餌付けってわけでもないと思うんだけど。
むしろ、他の魔石を食べてしまわないためにという、緊急避難処置的な意味合いでもあるんだけど。
「……とても喜んでる。ボクがやりたかった」
あぁ……これはあれか。スライムと仲良くした事に対して嫉妬したんだな。本来なら自分の方がスライムと仲良くしたかったのに!! とか、そういうことなのだろう。
「あー……うん。そういう事なら、えっと他にある〝良品質〟の虹魔石は後で冬川さんに渡しておくよ」
「……むぅ。騙されない」
「いやいや。騙すとかじゃなくて、次からは冬川さんが渡せばいいよってこと」
どうせまだまだ〝良品質〟の魔石は数回に1度は出来てしまうしね。こればっかりは100%に現状だと出来ないから仕方がない。
むしろあれだ。スライム用の魔石が出来ると考えればそれで良いんじゃないかな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
虹魔石を大量生産してから数日。今度は虹魔鉄を大量に生産してみた。
ただやはりと言うべきか……スライム君はこの魔鉄にも興味を示したんだよね。実際には魔石の時よりも興味津々といった感じ。うーん、仲間とでも思っているのだろうか。
というのも、この虹魔鉄。実は〝良品質〟の時とは打って変わって、全く別物じゃないか? と思うような状態になっていたりするんだ。
「何で固体だった魔鉄がこんな形状になっているの?」
「んー……イメージがスライムに引っ張られたとかかなぁ」
そうなんだ。今、目の前にある〝高品質の虹魔鉄〟は、液体金属……いや、粘体金属とでも言いたくなる形状をしている。
「粘土よりも柔らかい感じね」
「くにゅっとしてるから、色々な形に出るじゃん」
錬金術を使わなくても、自由に工作が出来る虹魔鉄の高品質。しかしこのままだと、全く使いものにならないんだけど……どうしたら良いんだろう。
「何かをしたら硬化するとかってあるのかしら」
「魔力を流してみるとか?」
これは色々試さないとならないだろうね。ただ、自由度が高すぎて何からどう試したら良いのやらといった感じなんだけど。
とまぁ、そんな金属に対してスライム君が恐ろしいほど興味を示しているのもまた……頭が痛い。
何せ前に渡した〝虹魔石〟だが、彼は一通り遊び倒した? 後、その魔石を体内に取り込んてしまったんだよね。あれだ、きっと予想通りに魔石を食べてしまったのだろうと思われる。
という事は、こうしてまた興味を示しているこの虹魔鉄は、やはり彼にとっては餌なのだろう。きっと今頃「どんな味なんだろう?」とか、そんな事を考えてみるに違いない。
とは言え、今回は彼にこの魔鉄を渡す訳にはいかない。何せ虹魔鉄はまだまだ数が足らないんだ。
それに、粘体化したことで、現状だと作りたい物も全く作ることが出来ていないし、この虹魔鉄は〝良品質〟ではなく〝高品質〟というのもある。
だからそんな輝きながらこちらを伺ってきても、1つたりとて渡すことなんて出来ないからね? 何時かその内、虹魔鉄も飽和することがあるかもしれないけど、今はまだその時じゃない。だからそれまで良品質の虹魔石で我慢して貰いたい。
それにしても、粘体化した魔鉄か……この状態だと、コーティング材としてはかなり使いやすいように見えるけど、別にもうコーティングとして使いたいとは思わないしなぁ。
折角〝高品質〟で作り上げたんだから、これをそのまま使いたいんだけど。
あぁでも、凝り固まった考え方は捨てたほうが良いか。どうせだから色々と試そうといったんだ。それなら、コーティング的な感じで試すのもありかもしれないね。案外それが正解かもしれないし。
ブックマークに評価ありがとうございます!ヾ(*´∀`*)ノ




