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情報収集してみた結果

 いくら準備をしても、思ったように事が運ぶなんて事はそうそう無い。

 ある程度は想定した通りの結果ではあるものの、残念な事にとでも言えばいいのだろうか。


「無事なスライムの数がやけに多いわね」

「ちゅりおのブレスが直撃しているんだけどな。これは急いで落とし穴を増やして正解だったじゃん」


 秋山さんと夏目さんが実に残念そうな表情をみせながらそんな事を言った。ただそういった顔をしたくなるのもよく分かる。何せスライムたちの半数前後は氷漬けにはならずそのまま突撃をして来ているのだから。

 とは言えそんなスライムたちは、錬金人形によるランススイングやシールドチャージによって落とし穴へ。そして落とし穴の中では、1体1体丁寧にスライムを処理していっている。


 ただここで、思った以上の働きをみせているのが……。


「魔法生物と言うだけあって、マルかモロの杵がかなり有効打みたいだね」

「……ん。1対1なら完璧」


 穴を飛び越えようとするスライムに対してぺったん。穴に落とされたスライムに対してもぺったん。ぺったんぺったんと杵を使ってスライムを殴打するうさぎな精霊。

 ただそのぺったんと打ち込んだ一撃は、スライムの魔力を全て粉砕しているのか……殴られたスライムはその形を維持できないらしく、どろりと溶けて活動を停止していっている。


 とは言えこれは、スライムに隙が出来たから与えることが出来る一撃。

 穴を飛び越えるモーションをすれば、着地までは別の行動なんて出来ない。穴に落ちてしまえば、這い上がるまでは狭い穴の中で限定された動きしかできない。

 もしこれが何もない空間や、そこそこ広い洞窟みたいな空間だったら、スライムたちは自由に跳ね回り精霊達との追いかけっこが始まってただろうね。そしてそうなれば、討伐までの時間はもっと長くなっていたと思う。


「でもなぁ。最初に考えていた時以上に群れを一つ潰す時間がかかってる」

「ソレは仕方ないよ。思った以上にスライムたちのスピードが速いもん」


 中にはスライム同士がぶつかり合って、変な飛び跳ね方になったりもしている。まるでビリヤードといった感じかな。本当に面倒な動きをしているんだよね。


 そんな感じで、動けるスライム達はかなり面倒な相手なんだ。本当、全部一気に凍ってしまえばいいのにね。


「でも魔法は撃ってこないみたいだね」

「んー……そこは私達が使う魔法とは違うのかもしれないわね」


 アロー系やボール系といった、射出系の魔法を一切使ってこないスライム達。

 それぞれ違う属性の魔法をバンバン撃ち込んでくると考えていただけに、これは少し拍子抜けだったりする。


 うーん。もしかして射出系とかブレス系の魔法ではなくて、もっと違う系統の魔法を使うのだろうか。

 相手はスライムだしな。もしかしたらべったりと張り付いて、対象を分解しつつ何かしらの属性効果を発揮するとか。


「そう。例えば雷系だと相手を麻痺させて動けないようにしながら分解するとか」

「うっわ……かなりの悪夢じゃん」

「そういえば、スライム達ってジャンプしながら何か伸ばそうとして来てなかった?」


 あぁ。そういえば触手とでも言えばいいのかな? それを伸ばそうとしていたような気はする。ただ、気がするというのは、しっかりと伸ばした姿を見ていないから。

 何せスライムがジャンプした後は、錬金人形にマルかモロに撃ち落とされているからね。最後までどうなったかは目撃出来ていないんだ。


 ただ、もしその気がするというのが正解なら……あれかな? 触手によるタッチとか鞭みたいな打撃の攻撃があるのかもしれない。そして、その攻撃に属性を乗せてくるなんて方法も。


「あまり想像したくはないかなぁ」

「ちゅりおもブレスを吐く時に触手を……」

「バッカルコーンなんて知らないじゃん! 私は何も見てなーい!!」


 うんまぁ、見た目はグロテスクだからね。

 あんな可愛い姿の精霊が、よもや頭をガバァと開けて触手を唸らせつつブレスを吐き出すなんて、最初は思いもしなかったからなぁ。


「案外あの触手も凍結系のダメージがあるかも?」

「……ん。最大サイズにしたら使えるかも」

「雪、ソレをやるのは止めましょう。間違いなくエリカや七海が気落ちしてしまうわ」

「自分もじゃん」

「ん? なにか言ったからしら? 私にはよく聞こえなかったわね」


 うんまぁ、ちゅりおは小さいから可愛いという事で。

 攻撃時の姿は……まぁ、そちらを見なければいい。ただ、大きいと視界内に入ってしまうから、なるべく巨大化させる方向はなしで。


「それに、巨大化させるならマルかモロの方が良いかも? こう、大きな杵による一撃って範囲が広くなるし」

「アレだけ跳ね回られると、範囲攻撃の方が有効だからなぁ。ぶっちゃけ、私の矢では狙いにくくて仕方がないじゃん」


 素早く跳ね回る小さい物体だからね。だからスライムの回避性能は高いよ。

 でも、そんなスライムに対して、矢を命中させている夏目さんも夏目さんなんだけどね。多分、俺が普通に矢を放っても命中率は1割以下じゃないかなぁ。


「望月には投擲があるじゃん」


 投擲か。あれはスライムに対して直撃を狙わなくても良いからね。

 もちろん投擲する物は選ぶ必要があるけど。それこそ爆発物であれば、如何に素早くある程度正確に狙う事ができれば良い。スライムの通る近くで爆発さえしたら良いからね。だから地面撃ちで良いんだ。


「そんな訳で、俺に求められる物と夏目さんに求められている物では、要求の難易度が違いすぎるんだよ」

「私もレイン系ならそこまで精度を求められる訳じゃないじゃん! っと!」


 レイン系ならばと言いつつ、夏目さんが放っているのは威力が高いスナイプ系の一撃。

 ただそうしないとスライムを1発で仕留めることが出来ないし、下手にレイン系を選択したら、それこそスライム達を増やすことに繋がりかねない。これは夏目さんにとって苦肉の選択というやつかな。




 とまぁ、そんな感じで俺達はスライムを少しずつ狩る事に成功はしたんだけど……これ、思った以上に問題が多いみたい。

 何が問題かというと、それは錬金人形たちにあったりする。


「いやはや……改造は後回しにしたとは言え、ちょっとダメージが多いかも」

「打ち返してるランスや盾が溶け始めちゃってるね」


 錬金人形達が持つランスと盾だけど、スライムと一瞬触れた時にほんの少しずつ分解されてしまっているのだろう。微妙にだけど、抉られたような跡があったりする。

 そしてこのまま戦闘を続ければ、近い内にどちらも使い物にならなくなるだろう。


「思った以上にスライムの数を狩れてないのに、盾のダメージが激しいとなると……そこまで美味しいフィールドではないという事かしら」

「武器防具が揃わないとって感じかなぁ。桔梗が作った壁やゴーレムも分解されている場所があるみたいだしね」


 壁はまだ良いんだ。魔法で作った壁だからね。だからまた秋山さんが作り直せばいいだけの話。ゴーレムもまた、再度生成したら元通りになる。


 だけど錬金人形達が持つランスと盾は違う。


 一応ではあるけど、このランスも盾もブラックスミスさんと協力して作った一品なんだよね。確かに予備も有るけども、数を用意している訳じゃないんだ。

 そしてまた、造るのも時間が掛るわけで……ぽんぽんと使い捨てていい物では無いんだよね。


「これはあれかなぁ。ランスと盾を虹魔鉄でコーティングするか、スライムの分解能力を抑える薬剤でも作らないと」


 とりあえずスライム達の情報は収拾することが出来たし、改善点も見つけることは出来た。

 後はその情報を元に準備をする必要が有るんだけど……これ、虹魔鉄でコーティングって言っている時点で、またどっちが先か? って言う思考のループに入り込みそうだなぁ。

 何か対スライム用の薬剤でもあれば良いんだけど、何かないだろうか。

ブックマークに評価ありがとうございます!(๑•̀ㅂ•́)و✧

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[一言] とりあえず穴にスライム集めて塩でも
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