頑張ってもどうしようもない事はある。とは言え、それが良い方向に転ぶこともよくある話。
リフレッシュした俺は、猛スピードで作業を行っていった。
石レンガで山を作り、蜘蛛に対する秘密兵器を作り、なんだったらあのフードコブラに対する道具だって! ……蛇特効の武器ってなんだ?
よくあるのはスネークキャッチャーと言う、あの長い棒で先が蛇を挟むように出来ている奴だけど、今回の蛇の太さ的にアレでは物足らないだろう。
それに、材料は木材か竹になるから強度の不安もあるし、そもそもアレは捕獲用の道具。なので、討伐用という訳ではない為に、今回必要とはいえない。
そもそも、海の中に居る存在だ。一体どうしろと言うのだろうか……。いや、もしかしたら偶々海に居ただけだったとか? 普段は陸に居るなんて事もない事は無いかもしれない。
こういう時は一人で考えるよりも……と言う事で、俺はリンクを使って女子生徒達へ話題を振ってみる事にした。
『蛇対策は何かある?』
こうやって一文を打ち込んでおくことで、後は勝手に盛り上がってくれるだろう。そしてその中から良さそうな案を見て、道具が必要なら道具を作ればいい。
一応自分でも考えてはみるが、三人集まればなんとやら。一人で悩むよりも、きっと良い案が出て来るに違いない。
とは言え、良い案が無いのだろうか、皆の回答も今の所パッとしたモノが無かったりする。これは時間を掛けるしかないだろうな。
そういえば、女性陣は基本的に戦闘職を選んだらしい。
となると、あのフードコブラも戦闘スキルで何とかしてしまうのでは? と期待してしまう部分もある。
俺自身も戦闘が出来ないと言う事は無いのだが、やはり火力的な面で言えば劣ってしまう。素材さえあれば、何か素敵な道具も作れるだろうけど、残念ながら現状はその素材が限られている。
「今あるのは、石・ボムベリー・カエンタケ・毒草あたりか? 攻撃力がある物と言えばだけど」
他は基本的に飲食物。塩だったり水だったりココナッツと、基本的に武器にするようなものではない。
前の探索で少し森の奥へと行ったけど、攻撃に使えそうな〝くさ草〟は手に入れて来ていなかった。
入手していれば、もう少し攻撃アイテムに幅を持たせる事が出来たかもしれないけど……ちょっとあの草をなんの対策も無しに持つのは嫌だったからな。手や鞄に臭いが付着しそうだったし。
「っと、そう言えばコレも出来たんだよな……一応鑑定しておくか」
作り出したのはただの弓。
弦だけはちょっと頑張って作ったんだけど……さて、鑑定内容はどうなるだろうか。
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竹の弓(最低品質)
竹で出来た弓。ただし弦はウサギの腸で作ったカットグット。
ねぇ? なんで腸はソーセージにしなかったの? 食べ物が第一何でしょう? ねぇねぇ?
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弦に関して言えば以前レシピだけ調べて放置していたけど、今回弓を作ると言う事で挑戦してみた。
そして……うん、システムはいつもの様子で、これは安心して良いのだろうか。
ソーセージにしなかった理由は、はっきり言って腸詰にしただけで出来るかどうかわからないのに、試す気にならなかったからだ。てか、ウサギの腸でも大丈夫なのか?
ポーションで洗浄でもしたら、使えない事は無いのだろうけど……食で冒険はしたくないからな。下手に食材を土に還すような真似はしたくないんだ。
例え、今はウサギの燻製が余っていると言っても、何時その在庫がなくなるか分からないし、そもそも食糧調達が出来なくなる可能性だってある。食料に関しては余裕を持たせておきたいんだ。……例え、同じ肉が続いて飽きが来るとしても。
「ま、とりあえず弓の調子を試してみるか」
システムに挑発されたから食について脳内で語ってしまったが、今は出来上がった弓が優先だ。
植物の繊維で作った糸を使っても良かったんだけど、此処は折角なのでという事でウサギの腸にしてみたが……さてさて、威力はどんなものだろうか。
因みに、矢は少し問題がある。
というのも、鳥を発見していないために鳥の羽が無い。なので、矢羽が用意できていない。……完全に欠陥品の矢である。
鏃だけは石を錬金術で作ったから何とかなったんだけど。
そんな訳で、試射をしてみたんだけど……。
弓を使って矢を放つと、ヒューンと飛んで行った後、的に当たらずに地面へポスっと突き刺さった。
……うん、飛距離も無ければ安定性も無い。流石最低品質の弓と矢である! 自分の実力は、まぁ棚上げ。
一応言っておくが、ステータス的な事を言うのであれば、弓を引くぐらいは余裕で出来る。レベルアップでパワーも上がっているから、弓が引けないと言う事は無いんだ。
では何が問題か? よく言うDEXとか器用値、これも恐らく問題は無い。ジョブスキルレベルを上げた際に、器用度が上がっているしな。
という事は、間違いなく、俺側の問題はほぼほぼ無いはず! と、判断出来ると思う。
「これはあれか? 弓系のジョブやスキルを持っていないとダメだとかそういうフラグだろうか。試射自体も十数回目だしなぁ……」
弓を扱う為に必要だろうステータスは問題無いと思うのだけど。
そう言えば、石槍や石斧を振った時も、何かパッとしない気がしたんだよな。こう、思ったように動かせないというかなんというか。
となると……もしかして、俺は今後どんな武器もまともに使えないのだろうか。
……確かにその可能性は高い気がする。となると、錬金術師の武器ってなんだ? 魔力と杖だろうか。それで戦闘をしろと? かなり厳しい気がするんだけど!
「魔法とか、初級しか使えないって書いてあるしなぁ」
こうなると、さっさと女子を救った際にいっていた、ボーナスであるスキルが欲しいところである。
一応魔法でも戦う事は出来ると思うが、もう一つ何か手が欲しい。なんでもいいから! 出来れば、錬金術師として良い組み合わせが出来るモノで!
しかし、そう考えると……この作った弓どうしよう? 俺には使えない物を作ってしまったと言う事になる訳だし。
うーん……と頭を抱えていると、スマホから呼び出し音が鳴り響いた。
「ん? 女子達だけど何か有ったか?」
スマホの画面をタップしてリンクアプリを起動。するとそこには女子達からお願いの文字が。
『それって弓ですか!? よろしければ使わせて頂きたいのですが!!』
何やら凄い勢いを感じる文字である。
なんでこんなにも? ジョブやスキルが無いと使えないのだけど……と考えたのだが、その答えは女子から送られてきたチャットで理解した。
『実は七海が弓系のジョブでして……ただ、弓が無いからどうしよう? と』
あぁ、なるほど。女子の一人が弓系ジョブを選んでたんだっけ。……すっかり忘れてた。
しかし、そう言う事なら譲るのも有りだろう。何せ俺には全く使えない代物であることは間違いがない。……とは言え、この弓は残念な事に……。
『この弓、試しで作った最低品質なんだけど?』
『いえ! 有るだけでも!! 自分達でも木と蔦で作ってみたんですが……はっきり言って全く使えない物が出来上がってしまっていて……』
『自作は既にやっていたんだ。でも、コレも微妙だよ?』
『先ほどちらっと見えちゃったんですけど、私達が作った物よりもはるかに飛んでましたよ! 私の作った弓なんて……手前でぽろりでしたから……』
『……ボクのは後ろに飛んだ』
……まて、後ろに飛ぶ弓とか、ある意味とんでもなく凄い弓だと思うんだけど!?
とは言え、武器として考えるなら、後ろに飛ぶと言うのは確かにダメだ。それなら、俺の作った弓の方が良いと言うのも分かる。
『……弓と矢はいつもの場所に置いておくから、そっちで回収しておいて。もし気になる点があったら書き込んでくれ。少し調整してみる』
『ありがとうございます!!』
弓が使える戦力が増えるのは良い事だしな。
魔法が効かなくても物理ダメージは通るなんて敵も居るかもしれないし。ここはしっかりと腕を磨いてもらうとして……。って、よく考えたら俺用の武器を考えていたはずなのに、そっちは全く解決していないじゃないか。
うーん、本当に攻撃力不足についてどうしたモノか。そろそろ魔法にもスキルポイントを振った方が良いのかもしれないが……錬金術をカンストさせたい気もするし。あぁ、悩みが尽きない。
ブックマークに評価などなど、何時もありがとうございます!!<(_ _)>ペコペコ
自分の為にやったのに、人の為になってしまった。そんな話。
割と良くあるのは私だけでしょうか? 作ったけど自分には合わなかったとか、買ってみたは良いけどとか。そして、誰かが欲しかったものだったり、何んとなく上げたら喜ばれたみたいな。
ネトゲでもあるんですよねぇ……個数を間違えて同じアイテムを買っちゃった。あぁ、こんなにいらないよ……なんて思ってたら、知り合いが欲していたなんて。
悲しいような良かったような……そんな気持ちになっちゃいます(-_-;)
因みに、女子が見ていた理由ですけど、そりゃ石レンガで壁を作ってる作業中なので……近くで試射してたら当然見られるわな。