何がアイデアになるか分からない
鵺が空を飛んでいてとても面倒くさい。出来ればさっさと地上に降りて来てほしい。だから奴が降りてくるまで何とか耐えよう。
いやいや、なんでそんな待ちの構え的な考えをしていたんだろうね。降りてこないのであれば、無理やり降ろせば良いじゃない。
だけど普通に撃墜するのは難しい。何せダメージとなる攻撃が、夏目さんぐらいしかないからね。彼女も何度か魔法矢で鵺を射抜いてはいるんだけど……。
「決定的なダメージにならないじゃん。やっぱりレイン系だと範囲と数の威力だからかなぁ」
確実に命中させる為にと、夏目さんはレイン系の弓技を使っている。
ただ本人も言っているように、レイン系は一発の威力に特化させず威力を分散して範囲と矢の数を増やしている技。なのでどうしても1本1本の威力は低い。そして数が当たってもその1本のダメージが低いから、耐えられる相手には総ダメージそのものも低くなってしまう。
同じ量の魔力を使うのであれば、一撃必殺と言える1本に魔力を集中させた方が威力が上がるのは当然だよね。だってその分だけ相手の防御を貫通させられるんだから。
数値にしてみれば簡単な話。相手の防御力が10だとして、1本に魔力を固めた場合は12の威力。レイン系で分散させたら2のダメージが6本と考えれば分かりやすい。うん、2のダメージを幾つ当てても10ある防御力を貫く事は出来ないよ。
そんな感じで、夏目さんはこの天候の中で空を飛び回る鵺に対して、確実に命中させる為にレイン系を使っているわけなんだけど。
低ダメージを連発した所でと本人は思っているって事なんだよね。とはいえ、スナイピングしようにもそのタイミングが殆どないのがね。
「てか、そもそも空にいる相手を撃ち落とそうと考えるものじゃないか。あいつを引っ張れば良いんじゃないかな」
「でもどうやって引っぱ……って、あぁ! そういう事ね」
アイテムポーチから1つの道具を取り出す秋山さん。どうやら彼女は俺の言いたい事を完全に理解してくれたみたいだ。
そう。俺はこの攻略を始める前に見た夏目さんと冬川さんの行動を思い出したんだよね。そして秋山さんも同じ光景を思い出したのだろう。
「そうそう。降りてこないならワイヤーフックで捕まえればいいじゃないって奴だね。2つワイヤーフックを使えば完璧かな」
「それに、向きを逆の方向へ引っ張っていけば確実に地面に降ろせると思うわよ」
四体を掴んで4方向に引っ張れ! とは言わないだけマシかな。
「ワイヤーの部分がミノムゥの糸だから、電気が伝わるって事は無いけど……雨で濡れるから、それがちょっと問題かな」
「雷撃を纏われたら電気が流れてくるかも」
ともあれ、そこは錬金馬で対処するかな。
こちらも濡れているのが問題ではあるけど、錬金馬の腰の部分に装着してあるグレポン。これをワイヤーフックに換装することは可能。
で、そんなグレポンの装着する場所は、電気どころか魔法が伝わらないようにと細工はしてある。だから、天候さえ良ければ問題ないんだけど……やっぱり雨がなぁ。
「とは言え、引っ張るのも錬金馬にやって貰う方が早いからね」
「……駆け抜ける」
道が悪いとはいえ、川の方以外ならばある程度は走り抜けられる。それに、ワイヤーをMAXスピードで引っ張れば更に効果は乗るはず。
問題があるとすれば、鵺のパワーに錬金馬が負けないか? という物なんだけど、そこは俺達が鵺に対して横槍を入れていけば何とかなるかな。
そんな訳で、本来の使い道じゃないワイヤーフックアクションを再度と言った感じかな。まぁ、ワイヤーフックを2つぐらいダメにしてもね。元々4つあるから、フィールドの踏破には支障が出ないと思う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
鵺の右の前足と左の後ろ足に鉤爪が食い込んでいる。そして、その状態でおもいっきり引っ張られたからか、斜めに伸びたような格好で地面に伏せっていたりする。
「ヒョーヒョー」と薄気味の悪い鳴き声を出しながら、こちらを見て威嚇している。
「鵺さん、アナタ雷撃はどうしたの? と、雷を纏う事なんて出来るはずもないか」
「あはは……それを聞くのはどうかと思うよ」
それもそうかな。
一体どうして鵺が雷撃を纏えないか。それは、地面に奴を引き摺り降ろした時なんだけど、俺は奴が降りてくる位置に爆弾を仕掛けておいたんだよね。うん、爆発後に固定ダメが大量に入る〝こんぺいとう1号〟を。それも5個ぐらい。
そんな爆弾を仕込んである場所へ、雷撃を纏った鵺が降ってきたら? うん、そりゃもう一斉に大爆発だよね。それも、地面と鵺の体で〝こんぺいとう1号〟をプレスした状態で。
今頃、鵺のお腹は大量の棘が突き刺さっているんじゃないかなぁ。そしてその棘がじわじわとダメージを与えていっている。更に言えば、右前足と左後ろ足が引っ張られている状態だから、起き上がって棘を抜く事すら不可能。
そりゃ、また何かしら爆発したら! と考えて雷撃を纏う事なんて不可能だよね。しかも伏せっている状態だから、爪での攻撃とかも無理だ。なので奴に残っているのは、ブレスと蛇による攻撃ぐらいなんだけど。
「奴の眼の前に壁を用意してやれば、ブレスは何とかなるよね」
「だからって鵺の口の前に錬金馬の大盾を設置しなくても……」
これならいくらブレスを吐いても、その全てを防ぐ事が可能だからね。
「蛇は接近しなければ大丈夫だしね」
「地上であれば毒液飛ばしも飛距離が足らないからね」
毒液を飛ばしてくるのは上空だからこそ絶大な威力を発揮することが出来たんだよね。ま、俺達はそれを盾で防いでいたけど。
ともあれ、蛇に関しては現状驚異は無い。なので後は……。
「遠距離から狙撃していくじゃん!」
「顔と胴体と尻尾を同時に攻めたら良いのよね」
「……まずは蛇」
うんうん。ここで蛇の尻尾が独立するような状態になったら面倒だからね。なので倒す順番は間違えないようにしないと。
そんな訳で、俺達は鵺に向かってそれぞれの方法で一斉に攻撃を開始した。
さり気なく、ボロボロな錬金馬が鵺の顔に向かってドリルを伸ばしていたのは……うん、見てないよ? 何も見てない。ちょっと頭や歯に響きそうな音が聞こえてきているけど、これもきっと気の所為という事で。
……錬金馬達は一体なにを掘削したんだろうね?
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