必要が無くなったと思ったのに、必要になるものって有るよね
よっと! 声を出しながらジャンプをし、大きい岩をよじ登る。道が道だから、起伏が激しくてどうしようもない場所もある。なので錬金馬が此処では使えないんだよね。
「ほい、冬川さん。手を握って」
「……ん」
レベルアップをした身体能力でも簡単に登れない岩が道を塞ぐ。なのでこうして皆で協力して登っている訳なんだけど……。
「……むぅ。皆の身長がうらやましい」
冬川さんは微妙に身長が足らずにジャンプで届かなかったりするんだよね。
だから誰かが上から彼女の手を取り引き上げているんだけど、彼女はその事が微妙に不満らしい。
「ちゅんめにも騎乗出来ないのが辛いよね」
「錬金馬と違って、精霊なら飛び越える事が出来そうな気はするんだけどね」
むしろ空を飛ぶ事すら可能じゃないのかな? と思うんだけね。どうやら現状は無理みたい。もしかしたら今後で出来るようになるかもしれないけどね。
なので呼び出せる精霊は、基本的に2体が斥候で1体が護衛と言った感じかな。斥候はいつものペアで、護衛は現状だとマルかモロの何方か。彼らなら崖だろうがかんだろうがぴょんと飛び超えるのも楽だし、魔法が来ても杵でかき消せるからね。
「うーん、七海はなんかすっごく楽そうだよね」
「ジョブ的にだけど、足場が悪い所でぴょんぴょん移動して隠れながら狙撃ってのも基本能力って事かもな!」
ジョブ的にかぁ。
確かに弓を使う訳だしね。ただ、その弓と言っても魔法の矢を撃つ弓だけど……とはいえ弓は弓だし、そうなるとハンターとかレンジャー色が強いってのはあるかもしれない。隠密スキルも付いてきていたしね。
まぁ、隠密は悪路を走破出来るようなスキルではないけどね。あくまで隠れてコソコソなスキルなんだけど。そういったスキルがあるって事は、やっぱり森の中とかで木の上に登ったりしながら、こそこそと狙撃しろって事になるのかな。
「逆に私達は辛いわよね……」
「魔法職だもんね。支援魔法でカバーしてるけど、そういったのもフィールドからしたら織り込み済みなのかも」
土魔法でスロープでも作ればいいじゃん! と思うかもしれないけど、ぶっちゃけそれをやろうと思ったらフィールド全体を魔改造しないといけないレベルになるからね。ある程度は魔法無しで進まないといけないんだよなぁ。
以前、フィールドを魔改造するような事をしたじゃないか。って話も出てくるけど、あんなのまだ可愛いレベルなんだよね。このフィールドをやろうと思ったら……それこそ魔力がいくら有っても足らない。
そしてその理由というのが。
「フィールドを操作する為に要求される魔力がおかしいのよね。他のフィールドに比べて数倍はいるもの」
「フィールドを改造して移動させるのを制限しているって事かもね」
とまぁ、そんな訳で土魔法による改造は不可能らしい。いや、不可能と言うわけではないけど、とてつもないレベルの時間と魔力を要求されるといった感じかな。
地形を操作しない系。それこそただの攻撃魔法とかなら問題無いみたいなんだけどね。その場に残る系とかもアウトみたい。
「ロープを大量に持ってこればよかったかも」
「土魔法で移動は何とかなるって考えてたからね。ロープとか存在すら忘れてたよ」
探索用に必須といえるアイテムって、全て魔法で何とか出来るから不要だって事で持ってくるのを止めちゃったからなぁ。
それらをポーチやボックスの肥やしにするぐらいなら、それこそ消耗品である矢弾やら爆弾やらを大量に持つほうが良いと考えちゃったんだよね。いやはや、万が一ってのをよく考えるのに、何でこの事に関しては考えなかったんだろう。
「……食料が一番大切」
「あー……うんまぁ、冬川さんのポーチやボックスは食料がいっぱいだよね」
我らの食料輸送員は冬川さんが胸をはってそう言い切る。
まぁ、彼女以外も各自が数日間は大丈夫と言えるだけの食料は持っているけどね。単独で行動しなければいけない状況になった時の事とかを考えてだけど。
「私のポーチやボックスには石やら土が多いのよね」
「土魔術師だからね。それを持っていれば、どこでも魔法を万全に使えるし」
多分だけど、この渓谷を攻略した後にお世話になるだろうね。だって残っているフィールドはといえば、塩湖と火山な訳だし。
ちなみに、この持ち込んだ土や石を使って魔法で地形操作をしようとしても、このフィールド内だと魔力の消耗は跳ね上がるらしい。
「一応キャンプの材料はあるから、テント用のロープはあるけど……」
「数が足らないじゃん」
フィールド中に使うほどのロープは無い。そしてそのロープを使ってしまえば、テントを張る事が出来なくなってしまう。
勿論だけど予備のロープはある。あるけど、それはあくまでテント用の予備なんだよね。
「こりゃ、一旦もどってロープとそのロープを固定出来る杭みたいなのが必要かもなぁ」
「杭ってあの鉄で出来てる岩に突き刺すやつ?」
「そうそうそれ」
「あぁ、ハーケンの事ね。でもそれは大丈夫じゃないかしら? ロープを固定する程度の出っ張りを作るぐらいなら、魔力的には問題ないわよ」
なるほど。大規模な工事をしないのであれば問題無いって事か。それなら用意するのはロープだけで十分かもしれない。
「ともあれ、この先を見る限り……えぇ、ロープは必須になりそうよね」
「なんだか滝の横を登らないといけない場所もあるよね」
「大きな滝って訳じゃないけど、それでも4階建てか5階建ての家ぐらいには感じるじゃん」
ジャンプで飛び越えられたらどれだけ良いことか。いや、むしろ飛行機でも作って……ってそれは無理か。
こう、もっと楽に移動出来る方法でも有れば良いんだけどなぁ。錬金馬の足回りとかを魔改造してどうにかならないかな?
うーん……こう、例えばワイヤーフックを飛ばして、それを使って移動するような感じのものとか? あ、でもそれを作るなら別に錬金馬に装備させなくても良いのか。自分達で使えば良いしね。
フックショットによるロープアクションかぁ。それはそれで忍者的な感じがして面白そうではあるけど、問題はどうやって射出したフックを回収するかとかの問題もあるんだよなぁ。
固定させた物を遠隔で外す必要があるんだよね。……うーん、こう、ワイヤーを伝って魔力を送る。で、その送られてくる魔力に応じて形が変わるようにするとか? うん、それなら出来なくはないかもしれない。
「……もっちー?」
「望月くん……この場で考え込むのはちょっとどうかと思うわよ」
「あ、ごめん。ちょっと攻略方法に使うアイテムを考えてた」
やっば。モンスターが現状出てきていないとはいえ、ここはいつ戦闘が起こるか分からない場所だったね。
とりあえず考えるのは拠点へと戻った後にするとして、今はどうするかなんだけど。
「もう少し進みながら調査をするか、もう戻るかだけど」
「そうね……とりあえず何もなしなんてのは嫌だし、そこら辺の石とかを回収していくのはどうかしら」
「……鉱石?」
確かに鉱石があるかもしれないか。それも、属性魔鉄とかが。
それなら少し崖を掘削してというのもありかもしれない。あぁそうか! こういう時に錬金馬のドリルを使えばいいのか。てか、それがドリルの正しい使い方だしね。
もしかしたら一気に色々と手に入るかもしれない。出来れば面白くて使えそうな鉱石が手に入ればいいなぁ。
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