最近の望月は……~七海視点~
――望月のヤツが変だ。
私達はそんな会話をベッドの中に入った後に始めた。
それもこれも、雪が「……違和感」と突然いい出したことが最初で一体どんな違和感が? と聞いてみたんだよな。
そしたら、望月の行動がおかしいからという事らしいんだけど正直私には分からなかった。ただ……。
「……もっちーの物作り」
「えっと、望月くんが錬金で生産に熱を上げるのは前からじゃないかな?」
「……ん。違う」
一体何が違うというのか。
望月が寝食を惜しんで錬金術に熱中するのは以前から。私達が望月に声を掛けに行かないといけないのは、もはや常識と言ってもいいレベル。
なので何らおかしい事などないと思っていたんだ。でも雪が言うには「……もっちーがオーダー品」と言うではないか。
そこで私とエリカは「はっ!?」とした。
そういえばそうだ。望月の性格というか性質? からして、他の男子……それこそブラックスミスさんと呼んでいる高田からの願いかつネタ武器であったとしても、そうそう大量のオーダー品を作るのか? と疑問がある。
だって望月はなんと言った? 望月のやつは間違いなく「それらは全部オーダー品だからね。そのうちブラックスミスさんに渡して、そこからそれぞれの手に渡る予定だよ」と言ったんだ。
「あれらのネタ武器は、高田の為じゃなく他の男子の為に作ったってことだよな?」
「あ……そう言えば、前に華ちゃん達からクレームがあったに気がつくべきだったよね。望月くんが他の男子の為にものを作ったって事」
「……もっちーだから、ありえない」
そうだよな。確かにエリカが言っているように気が付くことが出来る事が以前にもあった。なのに私達はそれを見落としてしまっていた。
そして雪が言うように、以前の望月ならどれだけネタ武器の為とはいえ、やり取りの無い男子の為に物を作るなんてありえない。いや、やり取りが多少有ったとしても、早々作ろうなんて判断はしないはずだ。
他人の為に何かを作るぐらいなら、もっと拠点を拡張出来る何かを作る。望月はそんな事を考えるタイプだからな。
なるほどなるほど。そう考えると、望月のやっている行動というのはめっちゃおかしいじゃん! って話になる。
「何か有ったのかも?」
「……和解?」
「いやいや、和解も何も敵対すらしてなかったじゃん。どちらかと言うと不可侵条約?」
学校にいた頃の望月は間違いなくそんな感じだった。男子相手でも近寄るなってオーラを振りまき、会話すら拒絶していたからな。
そんな望月が拠点内で生産をしているから会話は当然していないだろうけど、こうしてアレやコレやとネタ装備をせっせと作っているんだよなぁ。
「高田くんが裏で頑張ってくれたのではないかしら? 彼とはリンクで連絡を取り合う仲ではあるのだから、恐らくグループチャットか何かに望月くんを突っ込んだのよ」
「あー、そっかぁ! そこで、割と他の男子も話せるかも? ってなったのかもしれないね!」
「……ネタ武器談話?」
それはまた……確かにある時期からだけど、望月って気分良く生産行動をしていたからなぁ。恐らくそれぐらいの時からグループチャットで盛り上がっていたのかもしれない。
「私らも女子専用のグループチャットがあるからなぁ。男子オンリーなのがあっても可笑しくないじゃん」
「女子は全員が入っている訳じゃないけどね……」
「それは仕方ないわよ。彼女達の事を考えるとね」
あの女子達はチャットが出来るような状況じゃないからなぁ。
若干1名がバーサーカー少女な感じになっているから、なるべく彼女から目を離せないもんな。だから、彼女達にはグループチャットに目を通す時間なんてあまり無い。
一応1名ほどグループチャットに参加しているけど、今の所最初の挨拶以外は一言も発していない。
「とりあえず女子のグループチャットはいいとして、望月くんの変化自体は悪いことではないのだから喜ぶべきではないかしら?」
「……ん。でも違和感」
「確かにちょっと変な感じじゃん。でも、楽しそうで何より!」
「そうだよね。ただちょっとだけ寂しいかも?」
確かにエリカの言う〝寂しい〟は少しだけ理解出来る。今までなら、皆で色々と考えて一緒に行動して来たから、それが突然違う人とってなるとね。
でもそれは望月にとって、とても良い変化だというのも間違いない。無いんだけど。
「……ちょっともにょる」
「もにょ? モヤるじゃなくて?」
「雪は嫉妬でもしている? 私達のもっちーが!! って感じで」
「私達の望月くんじゃないでしょ……」
雪の腕の中で、はちゅがもにょーんと顔を伸ばされ被害にあっているけど……それはスルーしておこう。
何気に可愛いんだけど、ついつい目が行っちゃうんだけど! これを指摘すれば、もにょーんと顔を伸ばされるのは私になってしまいかねない。だから、ここは、涙を飲んで! はちゅに被弾して貰っておこう。
「き……きゅん」
うっ……うるうると瞳を潤ませながら、はちゅが私達の方を見つめている。
もにゅんもにゅんと伸び縮みする顔はとても可愛い。だからこのまま眺めていたいのだけど……眺めると、その助けを求める視線とも交わってしまう訳で。
「ゆ、雪。もう少し、はちゅに対して手加減をしたらどう?」
「……はちゅ?」
思わずと言った感じで、エリカは雪にはちゅの事を指摘した。すると雪は、自らの顔の前にはちゅを持ち上げ……じぃぃぃぃぃっとはちゅを見つめ始めたではないか。
数分間のにらめっこ。はちゅはなんとなくだけど、だらだらと汗を垂らしているようにも見える。いや、汗なんて垂らす訳が無いけどな。もふもふな動物をベースにした精霊だし。でもなんだかそう見えてしまう。
うん。無表情から繰り出されるにらめっこというのは、とてつもなく圧が凄い。そりゃ目も反らしたくなるし、汗も大量に出てしまう。それが至近距離なら尚更。
でも残念な事に、はちゅは雪によって固定されている訳で……。
「きゅ、きゅきゅーん!」
結果。はちゅは雪に対して愛想を振りまく事にしたらしい。
持ち上げられた体がぶらーんと垂れながらではあるけど、はちゅは雪に向かって手や尻尾を振ってアピール。更には、先程私達にやっていたようにうるうるとした瞳による見つめる攻撃。
そんなはちゅを間近で見ていた雪は……。
「……もふ!」
はちゅの可愛さに陥落したのか、はちゅのお腹にもふっと顔を埋めた……なんだかとても気持ちよさそうじゃん。
しかし、雪は寂しく感じてしまったんだろうな。こう、例えるなら〝怪我をして飛べなかった小鳥を癒やしたら、いきなり飛び始めた〟と、そんな感じだろうか? ちょっと違うか。
まぁでも、その被害がはちゅに行くのはなぁ……モフられて楽しげだからな。はちゅもはちゅというやつだ。
ただこれは、雪とはちゅの相性が良いというやつでもあるじゃん。なので見ていて楽しいな。
「ともあれ、目出度いことでは有るからお赤飯でも炊くじゃん?」
「いやいや、お赤飯は違うんじゃないかなぁ……」
とりあえずお赤飯は冗談だし、そもそも材料が無いから作れないじゃん。とはいえ、ちょっとぐらい明日は贅沢な夕食でも良いと思うんだよな!
ただ、作るのはエリカだけど献立ぐらいは皆で考えても良いよな? そうだなぁ……とりあえずケーキとかの甘い物系が久々に食べたい気がするじゃん。
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