ちょっとした変化
『学校にいた頃は悪かった』
『いや、こっちも塩対応だったしお互い様という事で』
現在、リンクにてこんな会話をしていたりする。
というのも、俺はブラックスミスさんから『男子専用のチャットがあるんだけど、少し顔を出さないか?』という提案を受けたんだ。
はっきり言おう。正直、くっそ面倒臭いと思った。
俺の交友範囲は現状で十分だからね。
女子達と協力して拠点を充実させつつ、皆を帰還させる為の方法を探る。後は其処に備え付けみたいな感じのブラックスミスさんが居ればいい。それで俺の世界は完結する。他はノイズでしか無い。
そう思いはしたんだけど、その備え付けなブラックスミスさんの提案だからね。それこそ邪険に扱うのは出来ない。なので俺は苦虫を大量に噛み潰したような表情や思いをぐっと飲み込み、決戦といった覚悟でその男子専用チャットに乗り込んだんだ。
ちなみに、リンクのグループチャットだけど、コレには幾つか設定を行なうことが出来る。
そしてその設定の内の1つに、グループチャットに入っていても個人のIDをゲットすることが出来ないというモノがあったりする。なのでその設定を使えば俺がグループチャットに入っても、俺と直接連絡を取り合えるのはブラックスミスさんだけというのは維持出来る。
一体どういう仕組なのか良くわからないんだけどね。まぁそういった設定が出来るというのも、俺が誘いに乗った理由の1つなんだよね。
と、それはそれとして。
グループチャットに招かれチャットを覗いてみると……まぁ実に男子らしい会話のオンパレード。
やれ女子の格好が刺激的だ! だとか、バスの運転手とバスガイドの仲が怪しいだとか、今日は○○のモンスターをワンパンで倒しただとか。そんな感じの会話がズラッと並んでいる。
で、そんな場所にピコンと俺が入室したという表示がされたわけだ。
一瞬止まるチャット。そして、ぎこちなく飛んでくる『いらっしゃい』という文字。うん、全員が間違いなく〝こいつ誰だっけ?〟と悩んだよね。俺だって間違いなく「お前誰だ!」って言いたくなると思う。
とは言え、挨拶をされたのであれば挨拶は返さねばという事で、俺も『お邪魔します』と一言告げ……チャットはそのままフリーズ。うんまぁ仕方ないよね。こういった時になんて会話をしたらいいかわからないもん。
ただ、そんなチャットに救世主は現れる。そう、我らがブラックスミスさんだ。
ブラックスミスさんは、俺の事を『最近仲良くなったんだ。しかも! こいつと組むとロマン武器が作れるんだぜ!!』みたいな事を言いつつ場を盛り上げてくれた。
すると次第にチャットも盛り上がり出し、一体どんなロマン武器なのか? とか、島特有の会話とも言える『ジョブやレベルってどんなもの?』なんて話題も出てくる。
……まぁ、レベルについてはある意味シークレットみたいなのは暗黙の了解らしく、一種のネタ振りみたいだね。『レベル幾つ?』という問に対して『それは言えないなぁ。お前も言わないしな』と返すのが礼儀? うん、よく分からない。多分過去に何か有ったのだろう。マウント合戦とか。
ワイワイと盛り上がるグループチャットだったが、何やら俺が誰かなのか気がついた人が居た。そう、それが今お互いに謝罪合戦をしている相手で、えっと名前が確か……そうそう、A君だ。
学校時代の俺といえば本当に誰かとの関わりが嫌で、声を掛けてきても声を掛けるなオーラを出して近寄らせなかった。
だがA君君は、学校に来ているのだから皆仲良く! とでも考えていたのだろう。彼は度々俺へ会話を仕掛けてきたんだよね。
当時は気が張り詰めていたからか、俺もリバースすること無く徹底抗戦と意気込むことで学校での生活を切り抜けていた。
だがそんな俺に対してコレでもかという猛攻を行い、精神をガリガリと削ってくる。うん、本当に当時はよくリバースしなかったなぁと思う。
そんな精神的な戦闘? を繰り広げてきたA君だが、なんの変化があったのか、俺に対してストレートな謝罪をして来たから、これはもう仰天だ。
だってそうだろう? 絶対自分の考えが正しい正義マンみたいな彼が、あの時は……なんて言うと思う? 思わないよね。
だから俺も、このグループチャットの誘いを受けた時に考えたのが、また何か突っ込んでくるのか? という考えだったいるするんだけど……なにやら全くの別人になってしまったかのようなA君。
『いやな……どうして相手がそういう態度を取っているのかも知らないのに、土足で踏み込む真似ってのはアウトだった』
何やらこの島に来てから、彼のアイデンティティをぶち壊すような何かがあったのだろう。
そして周りの男子も何が有ったのかを知っているのだろうね。彼が語っている最中は、皆は茶化すこともなく黙っている。
学校時代の俺なら……「知るか。俺に関わらなければそれでいい」とか考えて、無視を決め込んだりしてただろうなぁ。
この島に来た当初ならどうだろう? 「そう」と一言返して終わりかな? 女子達と関わるようになってからだと……うんまぁ、島に来た当初とあまり変わらないかな。ちょっとそこへプラスして「ま、頑張ってね」とかそんな感じで返したかもしれない。
なら今は?
『お互い思うところはあるけど、ブラックスミスさんがわざわざ場を用意してくれたわけだしね。ここは以前の事は全部水にでも流して、新しい武器とかの話でもりあがらないか?』
コレぐらいは言える。うん、随分と俺も女子達やブラックスミスさんに変えられてしまったようだ。
『って、ちょっとまてwww ブラックスミスさんって何だよ!!』
『おいおい……確かに職業は鍛冶師だからその通りなんだけどさww』
あ、何やら俺のブラックスミスさん呼びで場が盛り上がってる。うんうん、実に良いことだ?
『……こいつ、一向に人の名前を覚えないんだよ。鈴木さんなんて運転手さんだぞ?』
『あ……そう言えば、学校にいた頃はA君って呼ばれていたような』
『となると、ブラックスミスさんは記号呼びじゃないだけマシなのか?』
『ブラックスミスさんだから、記号呼びだとB君だな! 俺達もそう呼ぶか?』
『や・め・れwww』
なんだろうこのノリ。俺にはよく分からないけど……うん、別に悪い気はしないかな。
そんな事を思っていると、ブラックスミスさんから俺に対してチャットが飛んできた。
『望月……お前絶対今呆けてるだろ』
『んー、まぁ半分ぐらい?』
何故にブラックスミスさんは俺の状態が分かったのだろう? 特に変な事は言ってないはずなんだけど。
『あー……なるほど。望月ってそういう感じなのか』
『理解した。そしたら望月が乗れそうな話題。やっぱりロマン武器か? その話でもしよーぜ!』
『あ、俺どうしても欲しい武器があるんだけど!!』
何かよく分からないけど、皆になにか俺の事を理解されてしまったようだ。……こいつらエスパーかなにかなのか?
ともあれ、男子でワイワイと盛り上がるチャットだけど、本当に今までこういうのを体験した事がないからなぁ。なんだかとても新鮮ではある。
確かにスマホとかでのゲームとかで不特定多数の相手と会話をすることは有ったけど、こういった空気になったりはしなかったからなぁ。会話の内容も全部ゲームの事だったりしたしね。
『なぁなぁ、望月とブラックスミスさんw でロマン武器が作れるってんなら、ファン○ルとか作れんの?』
『ブラックスミスさん言うなwww あー……そうだなぁ。それは厳しいけどビッ○ならいけるんじゃないかな? 望月はどう思う?』
『んー……ワイヤーを上手く使えばいけるかも』
なんだろう。女子達と協力して色々作り上げていくのが一番良いと言えば良いんだけど、コレもコレで中々面白いかな。あれだね。ブラックスミスさんと2人でやっていたことの延長みたいな感じかな。
ま、作るのは俺とブラックスミスさんだけどさ。色々と案がポンポン飛び出てくるのは見ていて気持ちが良いかもしれない。
ブックマークに評価ありがとうございます!(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ♡...*゜




