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空洞だったのがいけないのだよ

 ――電光石火。


 正にそのたとえ通りといった感じかな。

 一体何が電光石火なのかというと、タイムリミットが来ている〝はちゅ〟が全力全壊だぁ! と言わんばかりの攻撃を、爆発や魔法の集中砲火を浴びているゴーレムへ仕掛けたんだ。


 「キキィィィーーーー!!」と、頭にキンキンと来る甲高い鳴き声を叫んだと同時に、バリバリと全身から雷を放出し始めた。

 そして上空へとジャンプしたかと思うと「洞窟内で落雷が!」と思わず叫びたくなる。そんな普通に考えたらあり得ない現象が。


 なんてことはない。はちゅは自ら纏った雷と共に、ゴーレムへと雷速で体当たりをぶちかましたんだ。


 送還のタイムリミットが間近なはちゅはこう考えたんだろうね。〝ここで一気に次へと繋がる一撃をゴーレムに与えておこう〟なんて。

 その証拠と言って良いのか分からないけど、はちゅが行った落雷という体当たりは地面に大きなクレーターを創り出している。

 いやいや、落雷でそんな事にならんやろ! と思うかもしれないが、事実クレーターが出来てしまっている。……まぁこれは落雷で出来たと言うよりも、雷の速度で体当たりをしたからなんじゃないかな。


 そんなクレーターの中心にはゴーレムが大の字になって横たわっていて、はちゅがそんなゴーレムの上で追撃の回転尻尾アタックを行っていたりする。


「……新技チャンス」


 そんな中、冬川さんがポツリと新技なんてワードを呟いた。

 一体何をするのか? と思っていると、冬川さんはちゅめらを召喚し、何か聞き取れない言葉を呟いた後にパン! と拍手。


 瞬間。目の前にいたちゅめらはその姿を消し、ちゅめらが居た場所には何やら格好良い……いや、可愛いポーズをしているはちゅが現れた。


「え、え、え?」

「どういう事じゃん?」

「ちゅめらは……っと、あぁ! そういう事ね!! 雪。新技と言うのは召喚した精霊達の位置を交換するものかしら?」

「……ん。正解」


 混乱する春野さんと夏目さんの横で、秋山さんが何をしたのか気がついたらしくその内容を口にすると、冬川さんが正解と言いながら大きく腕で丸を作った。


 なるほど、精霊の位置を変換する。それによって、ちゅめらとはちゅの居た位置が入れ替わったという事か。

 しかし何故ちゅめらなのか。確かにはちゅはもう時間が切れるから他の精霊に任せると言うのは分かるけど、この騎士甲冑モードなゴーレム相手にちゅめらは厳しいというのは散々言って来た。なのに冬川さんはちゅめらを選んだ。


「……ん。見て」


 そう言って指をさすのは、先程まではちゅがいた場所。そしてそこには……。


「あー! 理解出来た! この状況でちゅめらがあの位置に現れたらこうなるのも当然じゃん!!」


 思わず夏目さんが叫んだ。うん、でも叫びたくなる気持ちもわからなくはない。


 だって其処には、巨大化されたちゅめらがゴーレムを片方の前足でおもいっきり踏みつけている光景があったから。


 考えてみて欲しい。クレーターの中心で大の字になって横たわっていたゴーレムだけど、ただ横たわっているだけじゃない。

 だってそうだろう? 落雷の勢いと同時にはちゅの体当たりを受けたんだ。そしてその勢いはクレーターを作る程のもの。であれば……。


 Q:ゴーレムの体はどうなっている? A:地面に半ば埋まっている。


 と、そうなるわけで。更に其処へちゅめらの巨体から来る重さを片方の前足に乗せゴーレムを踏めばどうなるのか。うん、ゴーレムは身動きが取れなくなってしまうよね。


「……あたっくちゃんす」


 足だけをジタバタと動かそうとして藻掻くゴーレムの姿をみて、冬川さんがファイティングポーズをしながらそう告げた。


 確かにこれは最高の状況だ。知らず知らずなのは間違いないのだけど、どうやら冬川さんは最適解を選んだと言える。

 というのも、この状態で一番問題になるのは重装甲パーツ達で、いくらアタックチャンスだとしてもパーツ達が自由に動き回れたのであれば、そのチャンスは完全に潰されてしまう。しまうのだけど、今はそのパーツ達の動きに統率性が無くなっている。

 パーツ達の動きだけど、なんと言えばいいのだろう? 人に置き換えて言うなら……そう。


「目隠しの状態になってしまい、手探りで動いている?」

「確かにそんな感じかしらね。これならちゅめらへの攻撃もあまり無いはずよね」


 恐らくだけど、本体である騎士甲冑なゴーレムがちゅめらに踏まれたことで、パーツ達の視界が皆無な状態なのかもしれない。

 冬川さんにそんなつもりは無かったと思う。巨体なちゅめらで踏みつけ、ゴーレムを復活させないようにしただけというのが正解じゃないかな。だけど冬川さんは……。


「……ん。思った通り」


 などと言い放った。しかしその目は左右に泳いでいる。


「雪……あなたねぇ。まぁいいわ。最高のタイミングが出来たのは間違いないものね」


 たしかにその通りだ。このタイミングを逃せば、また撤退しなくてはいけなくなる可能性もある。なのでここは万全を期すためにも……。


「2体の錬金馬は突撃。ゴーレムを大盾で抑えつつドリルアタック。もう2体はパーツの動きが予測不可能になったから、念の為に皆のガードで」


 更に錬金馬でゴーレムを抑え込ませながら、ゴーレムの体を掘削させる様に指示を出した。


「うげ……また歯医者じゃん」

「……耳栓モード」


 耳を抑える女子達。うん、でも今は戦闘中だからね? コレぐらいの音は気にしない方向でお願いしたいなぁ。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ドスンドスンと重装甲パーツ達が地面へと落ちていく。

 その光景をみて、漸くフィールドボスであるアイアンゴーレムの討伐が完了したと思い、アイテムポーチからスマホを取り出し確認した。


 うん。どうやらゴーレムは完全に沈黙したらしい。これでストーンサークルフィールドをやっと1つクリア出来た。




 ゴーレムをどうやって倒したのか。それは割とあっけない終わり方ではあった。


 ゴーレムへと突撃していった錬金馬達は、藻掻き抜け出そうとするゴーレムの足を大盾で押さえつけると、ドリルを使って甲冑へ穴を開け始めた。

 前回の時とは違い、ドリルは破損する事無く小さな穴を空けていく。そしてその小さな穴で綺麗な円を描くと、錬金馬は描いた円の中心をコン! と叩いた。すると円形の部分がポロリと甲冑内へ落ちていく。


 作り出された円形の穴の大きさ。それは、俺が使っている爆弾達よりも大きいサイズだ。そして、その大きさという事は? そう、俺はある程度ゴーレムに近づいた後、その穴に向かって大量の爆弾をクイックスローで投擲。


 こんぺいとう1号に試作型・雷光爆弾や焼夷筒といった爆弾達が次々と穴の中へ。そして、ある程度爆弾が穴の中へと投入された後は、その穴を錬金馬が大盾で塞いだ。そして塞いだ後に起こるのは爆発だ。

 ドォン! と爆発音がした後、甲冑の中で爆弾達の爆発が連鎖したのだろう。爆発音が連続で響き渡る。

 中にはキンカンだのガンガンだのといった、何か硬いモノが反射する音も。これはこんぺいとう1号の棘が、ゴーレムの内部で跳ね回っていたんだろうね。


 ゴーレムの内側にあるだろう弱点に対して爆発による固定ダメージが連発。更にそこへ焼夷筒による炎のスリップダメージと、棘による追加の固定ダメージが入った。



 そしてその結果が、今こうして目の前に落ちているゴーレムのパーツ群。……これ、回収出来るのかな? ともあれ、これで漸くストーンサークルフィールドを1つ攻略する事が出来た訳だ。

 でもここって、フィールド環境とかを考えたら一番簡単だったはずなんだけどなぁ。その割にはかなり苦戦を強いられた気がする。


 この後のフィールドでは、マグマや水の中にいるボスとかを相手にしなくちゃいけないんだよね。一体どうしたらいいのやら……とりあえず、次の攻略先はまだ比較的楽だと思える渓谷をチョイスするつもりだけど。


「それでも、この先の事を考えるとなぁ。攻略出来たけど、出来たからこそ頭が痛くなりそうだよ」


 勝利で喜ぶべきタイミングで、思わず先の事を考えて愚痴ってしまうのは……仕方ないよね。

ブックマークに評価ありがとうございます!((*_ _))ペコリ

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