洞窟の中に潜むものは……
暗くジメッとした洞窟の中は、鬱屈した気分になるような感覚に陥っていく。
明かりを灯し、その光を視界内に収めることで洞窟の攻撃……攻撃なのかな? とりあえず、洞窟の特性に対して抵抗しながら、皆でなるべく明るい話やフィールドの攻略についてを会話しながら前へ前へと進んだ。
勿論だけど、モンスターが発する音や気配を聞き漏らしたりしないように、極力小声で周囲に気配を配りつつだけどね。
「まるで特殊な特性がストーンサークルのフィールドにはありそうね」
「……湖も行動が制限された」
「見た目からして、火山も暑さやマグマで足場が制限されているじゃん」
「渓谷は川の流れとか起伏が激しいよね。もしかしたら風で飛ばされたりもするんじゃないかな」
彼女達の語った内容を纏めて考えてみると、どうやらストーンサークルのフィールドって攻略者を前へと進ませないようにするような何かがあるのかもしれない。
現に今だって、行き先が真っ暗な上に気分だって暗いなにかに陥れようとし、俺達の心や脳内に「さっさと戻れ!」と訴えてくるような何かが有る。
湖と違って、物理的よりも精神的な面での進行妨害だけど、間違いなく効果は覿面だろうね。……俺達でなければ。
「モロのコミカルな動きと光のお陰で、正直言っちゃうと割とっていうかかなり気分は落ち着いていくよね」
「……踊るモロ」
先頭で軽快なステップを踏みながら杵のハンマーと言える部分を輝かせているモロは、そんな杵を掲げながら「ぷぃぷぃぷぷぅぃぷぃぷぃ♪」と不思議な歌を歌っているんだよね。
こんなモロを見て、俺達の気分が回復しないわけがない。……わけがないんだけど、ちょっとだけ問題がある。
「なんだかドラゴンでも出てきそうなリズムだね」
「……速い?」
「餅餅もちつき杵杵じゃん?」
「それ以上はやめましょう? 誰も救われないわ」
うんまぁ、なんで彼女達がそのネタを知っているのだろう? ソレの元ネタはちょっとだけ顔が青ざめちゃう様な内容があるんだよね。
だから話題を変えないとなにやらヤバい予感がするから、その話題は棚の上どころか何処か遠くへ飛ばしておこうか。
なんて俺の気持ちが通じたのか、どうやらこのフィールドにおける雑魚モンスターの影がチラリと光に照らされ一瞬だけ浮かびあがった。
「うっわ……マジか。ここの雑魚モンスターって結構ヤバそうだね」
「ん? なにか見えたの?」
「ちらっとだけ目視出来たんだけど、多分あの姿はゴーレムだと思う」
洞窟だからだろうか? きっと属性的に土属性なんだろうね。もしかしたら、この鬱屈させてくる何かもあるから闇属性もあるかもという考えは有る。ただ、俺はちらりとゴーレムっぽい姿を捉えた。だから土属性なのは間違いないと思う。
「確かに洞窟だものね。土属性がメインでゴーレムが主力というのはありえるわね」
「でもゴーレムが相手だと、桔梗は同じ属性だから面倒じゃん」
「……相殺?」
「ま、なんとかなるわよ。土属性を使って足止めだって出来るのよ? 実際フィールドボスだったゴーレムは落とし穴に落とせたもの」
確かに石碑フィールドのボスだったゴーレムは落とし穴に落として嵌める事が出来た。だから土属性が完全に通用しないわけではないというのは分かる。でもなぁ……。
「確かにフィールドボスではあったけど石碑フィールドのだからね。ここはストーンサークルフィールドだから、雑魚の方がボスより強い可能性は高いと思うよ。それに、湖と違ってあのゴーレムは群れていないみたいだし」
群れていないということは多分この洞窟の場合だと、量より質といった感じのモンスター配置じゃないかな。そしてそうなると、雑魚とは言え石碑フィールドのボス寄り強いという可能性は十分にある。だってレベルがそもそも違うしね。
「だから、落とし穴に落とすことが出来ても自力で簡単に出てくるなんてことも有ると思う」
「それは確かにそうね……でもどうやって倒そうかしら?」
「ちゅめらの水で一気に押し流すのが良いかも」
こんな狭い場所だからね。大きなゴーレム相手ならちゅめらのブレスを避けることなんで出来ないだろう。
「後は俺達の魔法だけど、果たしてどれだけ威力が出るのやら……」
ストーンサークルフィールドのモンスターだからなぁ。しかも量じゃなくて質だもんね。となると、俺達の初級魔法程度では雀の涙とか焼け石に水といった感じじゃないかな? まぁ、やらないよりはマシだろうけど。
「ま、そこは私に任せるじゃん!」
「七海の魔法弓に頼るのが一番ベストなのかな」
夏目さんが一番のダメージディーラーになるのは間違い無いだろうね。彼女が一番属性という点でみたら攻撃手段が豊富だしね。秋山さんの土魔法が微妙な場所では、彼女が一番の稼ぎ頭になるのは当然だろう。
「それじゃ、ここはアクアショット系の魔法弓技で狙い撃ちじゃん!」
「レイン系とかの範囲はちょっと厳しいフィールドだものね。うーん、それなら私はなるべく射線を更に限定出来るようなフィールド作りにするべきかしら」
洞窟だからなぁ。上に矢を放って雨のように降らせる弓技は使えないよね。
それにしても秋山さんは、火力を出すよりも確実に弓が当たる様にと、地形を操作する方向でフォローするつもりのようだ。
おそらく洞窟の広さを、人1人が通れるかどうかという広さにしたりするつもりなのだろう。……何せそうしておけば、ゴーレムは俺達の方へと移動するのが厳しくなる。まずはその壁を破壊するところから始めないといけないからね。
確かにこの1人しか通れない道にするというのは、確かに安全に狩りが出来る様になりはする。だけど、実はデメリットもある訳で……逃げる必要性が出じた時は、1人ずつしか通れないという難点もある。
壁を消せばいいと思うかもしれないが、その作った壁を消すのにもやはり少し時間が掛かる。その場合、1人ずつさっさと逃げるのか、壁を消してから皆で逃げるのか一体どっちが速いだろう。うん、あまり大差がないんじゃないかな。
ただまぁ、そんなピンチな状態というのは中々無いんじゃないかなとも思う。だってそんな状態って、バックアタックを食らってしまった時になるわけで、勿論後方もしっかり警戒しているからね。背後から襲ってくるヤツが居ると分かって、わざわざ逃げ道を防ぐ訳がない。
ま、それでも事故ってしまった場合は仕方ないから、その時はどうするかというのも考えておく必要はあるだろうけど。
ただ、最悪の場合は錬金馬を取り出して壁にしてしまえばいいだろう。少しの間耐えてくれさえすれば、何とか出来る余裕はあるはずだから。
なんて事を考えていたら、隣からものすごく気になる言葉が俺の耳へと飛び込んできた。
「そう言えば、ゴーレムって事は錬金人形の核が大量ゲットできるかもしれないじゃん」
夏目さんの放った言葉は、俺の脳内にものすごい電撃を走らせる事になった。それはそうだろう? だって錬金人形を大量生産出来る可能性があるんだよ。
これはもう、大量にゴーレムを狩るしかないでしょう!!
「目標はレベリング及びゴーレムのコアを大量にゲットすることで異論は無いよね?」
にっこりと笑みを魅せながら、俺は女子たちに今回の目標についての変更を言ってみた。
「も、望月の笑みが怖いじゃん……」
「錬金術に没頭している時と同じね。とてもいい笑顔だわ……」
「はぁ……七海が余計な事を言うから。これ、もう止められないよ?」
「……もっちーが覚醒」
なんだか女子達が一歩引いている気がするけど……うん、気にしたらいけない。だって錬金人形を大量に作れるということは、それだけ拠点周りで働かせる人形や戦闘に使える人形が増やせるわけだからね! 後々のことを考えれば、ここでコアを大量にゲットすることは間違いなく良い事なんだよ。
ブックマークに評価ありがとうございます!ヾ(*´∀`*)ノ
なぜ彼女達がそのネタを知っているのか? それはだいたい望月くんとブラックスミスさんの所為。
武器開発時に文章のやり取りをしているはずなのに、盛り上がりすぎて大きな声であれやこれやと独り言を言ってしまっているからです。その中の中に「ランラン♪」な槍の舞があっただけです。




