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女子生徒達の冒険~女子B(七海)の視点~

「まったくもー……私の頭にダイレクトヒットだよ!!」


 紙飛行機が突き刺さった後頭部をさすりながら、私はエリカ達と一緒に道……道なのかな? とりあえず目的地へと向かって歩いている。

 その目的地というのは望月が教えてくれた場所で、どうやら其処へと行けば何やらとってもスーパーなパワーが手に入るのだとか。


 私から見た望月。

 彼ははっきり言って、この状況になるまで完全に空気な存在だった。クラスでも居るのか居ないのか分からない。そんな男の子。

 ただ言えるのは、他の男子と違って厭らしい目を全く向けてこないと言う事だろうか。言ってしまえば人畜無害。


 だから、逃げた先に彼が居たのは私達にとってはとても運が良かったと思う。


 確かに男子という時点で、体は恐怖で拒絶反応を見せたし、それで彼に対してちょっと失礼な態度になってしまったような気もするけど。

 でも、望月の奴はそんな事を一切気にしていなかった。……と言うか、私達の存在を迷惑とすら感じていたようにも見える。


 ……それ、男子として大丈夫? と逆に心配になったのは内緒だ。


「これがラブレターとかなら風流というかロマンティックでもあったのに」

「……何時の時代?」

「うーん、私達のおばあちゃん世代?」

「七海は彼に何を求めているのよ……」


 飛んできた紙飛行機をひらいてみれば、その中身は情報提供だったんだよね。

 書いてあったのは、地図にスマホのアップグレードとそれが行われる場所。そして、絶対に森の中へは入らない様に! とでかでかと書かれた注意事項。


 もしこれが他の人であったら、直接口で伝えろよ! と言う話なんだけど。


「望月は絶対に人を避けてるよなぁ」

「うん……そうだね。避けている上に、ちょっと顔色も悪くなるし」

「釣り竿とバケツを貰った時も、結構怯えていたように見えるわ。あれは相当な拒絶反応が起きているのかも」

「……アレルギー?」


 過去に相当な事が有ったのか、それとも対人アレルギーなのかな。

 確か、アレルギー反応と言えば認知されていないものも多くてびっくりした事あったな。太陽光とか水とかお金アレルギーなんてモノもあるらしく、大抵そういうのは他の人に理解される事が少ない。……色にもアレルギー反応を見せる人がいるんだって。


 もしそうならと私達は四人で会話をして、望月への接触は極力避ける事にした。


 もどかしい気持ちはあるんだよ? だって、こうして安全な場所を提供してくれているんだから。こう、お礼に色々手伝うべきだって気持ちもあるしね。

 でも、それで彼の体調を悪くしてしまっては意味がない。そう判断した私達は、彼の口から何か言ってくれるのを待っていたんだけど。


「まさか最初が遠征だなんてね」

「でも、今後の事を考えると、そんなスーパーパワーがあるなら手に入れておくべきよね。それに、少しでも早く力をつけておけば、それだけで私達の武器にもなる訳だし」

「……間違いない」


 魔法や超能力みたいなモノがあるのは、既に望月がやっている行動で何となく理解している。

 だから、望月のこの情報は全く疑ってなどいない。寧ろ、お礼をするべき事が増えたと頭を抱えていたりするんだけどね。


 ただ、私達は逃げてきた身だ。そして、それと同時に助けたいと思っている子達も居る訳で。


「身を守る為にも、救助を待つ為にも、この不思議な力は絶対に必須かな」

「でも、あっちがその力を手にしている可能性もあるよね?」

「それは考えても仕方のない話だわ。私達は私達の出来る事をやって行かないと、そもそも今はスタートラインにすら立っていないと言う事になるから」

「……もっちーより遅い」


 遅い。うん、そうだ。私達は望月よりもスタートが遅い。

 私達が逃げ出した時には、あいつ等もまだこの力の事を知らなかったみたいだけど、私達が逃げている間に発見している可能性だってある。

 もしそうなると、その力に対する理解度などの差は開いているなんてことも……。


「……もっちーへのお礼は後」

「そうよね。彼へのお礼はスマホをアップグレードした後に、それぞれの能力で行うのがべストよね」

「ジョブがあるって紙には書いてあるけど、一体どんなのがあるんだろうね」

「エリカは何でも出来るから。こう、総合職的な感じのが良いんじゃない?」

「それを言ったら七海は弓とか? アーチェリーやってたじゃない」


 どんなジョブを選ぶのか。そんな話で悩む私達。

 だけど、それはただの気休め的な会話で……正直不安でいっぱいなんだよね。


 これによって、何かとんでもない変化が起きてしまうんじゃないか? とか、私達にもちゃんとスマホのアップグレードが起こるのだろうか? とか。


 だって望月のやつ。私達が力を手にしなければ追い出す気なんじゃないかな? なんて漠然とした思いがある。

 いや、そもそも無理を言って居座っているのは私達だから、何時追い出されてもおかしくはないんだけど。そして、その事で文句なんて言えない。


 でも、私達がジョブをゲットできなかったとなれば、それは私達が使えない子という証明でもある訳で……。


「七海どうしたの? 顔色がちょっと悪いよ」

「大丈夫だよ。ちょっと変な声が聞こえた気がしただけで、ただそれって木が軋んだ音だったみたい」

「な、なーんだ……変なのがいたりした訳じゃないんだ」

「……心配しすぎ」


 ふぅ……何とか誤魔化せた。

 私の顔色が悪くなった本当の理由を言う訳にはいかないよね。だって、顔色が悪くなったのは盛大な自爆だったんだし。


 〝使えない子〟などのワード。それはあいつ等が周りの人に理不尽な事をする為に使ったワード。

 「料理がまともに出来ない」とか「収穫した木の実が少ない」とか、そういったとってつけたような理由で、あいつ等は自分達のやる事を正当化し始めた。

 そして、必ず「お前は使えない奴だな」とか「この無能者が」と口にしていたんだよね。


 やばい。どうやら私もソレがトラウマになっているみたい。


 これは、望月の事を言えないよね。私もエリカ達以外は、このままだと拒絶してしまいそうな気がするし。


 でも、そう考えると望月の過去は一体どんなものだったのだろう? あれだけの拒絶反応を見せているんだ。もしアレルギーでも無いとすれば、それは相当な心の傷を負ったように思える。

 と言うよりも、もしアレルギーと言うだけなら会話は出来るハズだから、多分、間違いなく、彼の過去は……。


「七海今度は難しい顔をしてるよ?」

「え、あー、うん。そうだね、一体どんなジョブにしたら活躍できるかなぁって」

「ふーん。ジョブの事を考えていたのね。確かに、選ぶジョブで使えるスキルが変わるみたいだから、かなり慎重に選ぶべきなんでしょうけど」


 何やら桔梗が私を訝しんだような表情をしながら、それでもジョブの話に乗って来た。

 うぐっ……これは、私が全く違う事を考えていた事などお見通しなのだろう。本当に桔梗はこういう事に対して察しが良すぎる気がする。


「……もふもふが良い」


 そして、相も変わらずと言えば良いのかな。

 雪は雪で自分のワールドを形成中だ。きっとこの子は使えるだとか強いだとか関係なしにジョブを選んでしまいそうな気がする。



 そんな会話をしながら森の中に有る道を所々で休みつつ移動した為か、太陽は既に天辺から少し傾き始めていたりする。

 ただ、そんなタイミングで私達は森の中から出た。そして、私達の目の前には断崖絶壁が……。


「す、すごい壁」

「これは、左右にもずっと続いているわね。これは此処で行き止まりと言う事かしら」

「……木と壁が並走」

「と、とりあえずこの場所に石碑があるみたいだから、まずはそれを探そうか」


 目的地に到着したのなら、次にやるのはスマホをアップグレードする為に必要な石碑を探す事。

 手紙には道から真っ直ぐ行った場所に在るって書かれているけど……正直、本当にあるのか凄く不安を覚えている。

ブクマに評価などなど誠にありがとうございまっす!(o*。_。)oペコッ



と言う事で、女子Bこと七海の視点でした。

彼女は割と猪突猛進な子……だったのですが、この地に来てから色々と考えてしまっているようです。

まぁ、そりゃそうだろう。トラウマ級の出来事が起きたのだから。

とは言え、四人一組で支え合ってきたためか、割と浮き沈みは激しくても回復自体は早いようです。



そしてさり気なく主人公の事を望月呼び。

因みにですが、エリカは望月君。桔梗も望月君。雪は何を考えているのか〝もっちー〟呼び。

ただ、関係が変われば呼び方にも変化が起こるかもしれません。ですが、現状はこんな感じです。(約一名は変わらない気配がありますが)

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この4人は自分らがされて嫌な事を主人公に対して少量の善意とあわよくば便利に使ってやろうという欲望でやろうとしてる。 元の世界で他人と交流するのを嫌がっている事を知っていたくせにそして実際何の交流もして…
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