かにのみそし……神のみぞ知る~エリカ視点~
カニの爪をその手から離さない雪をみて、私は思わずため息を吐いてしまった。
「雪……それはまだ食べることが出来るか分からないから、今持っていても仕方ないよ?」
「……茹でれば大丈夫」
「いやいや、それは大丈夫かどうか分からないじゃん」
大抵の物は火を通せばいける! なんて言うけども、そんなハズがあるわけがない。
熱を通したって毒は毒のままという物だっていくらでもあるし、熟成どころか腐りきったものはいくら熱を通しても無駄。
ましてや、こんなモンスターが落としたドロップ品だなんて、一体何が起こるかわからない。
「前にも言ったけど、鑑定ではどっちとも出なかったからなぁ……多分だけど、そもそも食べるとか、そんな前提は全く無いと思うんだよね」
だよね! きっと島? も、コレを食べるなんて考える人がいるとは思わなかったんだと思うよ。
まさか、あんな気持ち悪い見た目をしたモンスターの部位ともいえるドロップ品を食べたいとか、誰一人として考えるはずがない。
恐ろしいのは雪……と言うか、日本人のDNAってやつなのかな?
「毒があろうが何とかして食べてしまう民族だもの……雪みたいなのが居てもおかしくはないのだけど」
「まさか身近にいるとは思わなかったじゃん」
フグの毒があろうが、見た目がグロテスクなタコやナマコだろうが、なんでも食べることが出来るようにしてしまう。恐ろしいまでの食への意識というか拘りというか……。
きっと雪は、そんな食べ物に対して、最初にチャレンジした人達と全く同じ人種なのかもしれない。
「とりあえずアレだ……ここは先人に習って、しっかりとチェックしてからかな」
「え……望月くんも食べるつもりなの?」
「いやいや! 俺はちょっとって思うけど、このまま放置したら知らない間に冬川さんが食べちゃうでしょ……それなら安全を確保しておいたほうが良いかなって」
「なるほど! たしかにその通りじゃん。でも、一体どうやってやるのさ?」
「それは簡単だよ」
そう言いながら望月くんは、カニのハサミっぽいドロップ品の殻を砕き、中身を取り出した。
「え、もしかして食べるの?」
「いや、食べないから。これはこうして……ぽいっとな」
「……あぁ!?」
取り出したものを遠くへと投げ捨てた望月くん。それに対して、なんてことを!! と言わんばかりに声を上げる雪。
そんな雪は叫んだ後、望月くんをうらめしそうに睨んでいるんだけど……これってあれかな? 望月くんが最初から調べる気など無く捨てるためにやったとか、そう考えていそう。
「そう睨まない。望月くん、あの投げ入れた場所ってモンスターが居る場所よね?」
「そうそう。まずはモンスターでね」
なんだか分かり合っている望月くんと桔梗。そしてなんのこっちゃ? と首を傾げているのが七海と雪。そして私はというと……。
「あれだよね。動物実験的な」
「そうそう。犬とか猫は食べられないけど、人なら食べられるってパターンは多いからね。まずはモンスターに食べさせたらどうなるのか? 次に最初のフィールドにいたウサギとか狼にでも試した後パッチテストかな」
「……パッチテスト?」
「あれ? 島に来た時にやらなかったっけ? って、あー……あの頃は食料が足らないからって忘れてたかも」
望月くんが島に来た当初の頃を思い出し「やらかしてたなぁ」と言いながら、額に手を当てて天を仰いだ。そしてそんな望月くんをみて、桔梗も「完全に頭から抜けていたわね」と言いながら、地面を見つめている。
えっと、この2人がこんな態度をとるなんて、もしかして相当にやばい事を私達はやっていたってこと?
「見た目が同じでも全く違う可能性もある存在を、ただ火を通しただけで食べていたもの……」
「下手をしたら全滅していた可能性もあるんだよなぁ」
今でこそ、島の初期地点は安全かつ食料を十分似確保できる環境が整えられていた。と言うのが理解出来るけど、島に来た時にそんな事がわかるはずもないよね。と、2人は語り合っている。
えっと、それって、私達が気が付かない内に毒を大量に摂取していた可能性があるってことなのかな。
「そうなるかな。だから、こうして無人の島とかに来た時は、まず食べる事が出来るのかどうかを調べる為にもパッチテストが必要になる」
「えっと、パッチテストってあれだよね? 手とかに乗っけて放置するやつ」
肌に触れさせてアレルギー反応が出るかどうかを見る。
アレルギー反応が出ると、蚊に刺された時とかみたいになったりするんだけど、ひどい場合は大きな水ぶくれみたいになったりとか、爛れてしまったりとかするみたい。
勿論だけど反応が出たものは食べる事が出来ない。
「肌で試した後もまだまだ続くよ。少量だけ口の中に含んだままにしたりとか、それを食べた後は何時間も他の物を食べないとか」
思ったよりも苦行だった。
ただ、それだけやって初めて安全に食べる事が出来るみたい。あぁ、だから島に来た時の事を考えて、2人はこんなにも青ざめちゃったんだね。
「ま、過去のやらかしは仕方ないし、今は生きているから、この事は今後の教訓にするから良いとして」
「問題はそのハサミよね」
「……はっ!? コレを食べるのに必要な時間」
テストをすると言っているから、かなりの時間が必要になるんじゃないかなぁ。何せ鑑定をしても全くわからない物なわけだしね。
だから望月くんは〝先人に習って〟って言ったのかな。
「テストの終わりの方は、ほんの少しだけ齧って、当分はごはん抜きだね」
「……がーん!」
さて、そこまでして食べたいのか? と言われると、普通なら微妙と答えると思う。思うんだけど、私達の雪は違った。
「……がんばる」
「いやまぁ……頑張ってもらうのも良いんだけど。はぁ、ここまで言ったら諦めると思ったんだけどなぁ」
「諦め無いのよね。ただ、毎日しっかりと食べてもらわないと、いざという時動けないわよね」
「何か道具とかでも作ったり、鑑定の質が上げられたら良いんだけどなぁ」
た、多分鑑定には期待出来ないんじゃないかなぁ。
コレばっかりは鑑定のレベルを上げてもどうしようもないと思うんだけど。だって、絶対モンスターを食べるとか、島にとっては想定外だろうし。って、あ! そうだ。
「システムさんに質問したらどうかな? モンスターは食べることが出来るのか? って」
「あー……それも有りかな。ガイドさんや、システムにお手紙宜しく」
《……仕事じゃないんだけど》
「そこはほら、俺のスマホに寄生しているからってことで! 出来るよね? 何時もこっそりとゲームをプレイしているみたいだし」
《う、うぐ……まぁ、一応は出来るよ。で、文面はどうするの?》
……望月くん。いつの間にガイドさんと仲良くなったんだろう。てかガイドさんは、こっそりとゲームをやってたりするんだ。
私は全く気が付かなかったけど、私のスマホ内にいる子もやっていたりするのかな?
ちらりと自分のスマホを取り出して、ガイドさんがどうしているかを見てみる。
《どうしました?》
「君はゲームをやったりしてないよね?」
《……してませんよ?》
なんか妙な間があったような気がするんだけど。
なんだろうね? このスマホに入ってきた雷獣っぽいガイド達。すっごく自由にのびのびとやっている気配がするよ。
もしかして、通信しながら対戦プレイとかやってたりするんじゃないかな? 今度こっそりとその状況を見てみたい気もする。
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