遠征準備の道具作り中は、女子達は皆暇なので別のことをしています
皆で作ったお菓子を食べて正気度を回復。と言いたいけど、何かその前に思いっきり正気度を削ってきた物が有ったんだよね。
そしてそれ自体は満場一致でアイテムチェストの中へ。若干1名不服そうな顔をしていたけども、それはそれ。
ただ、そんな事件? があったからか、後から食べたお菓子はとっても美味しく感じた。いやまぁ、元から美味しいものを作り上げたつもりでは有るけどね。
そんなお菓子達だけど、思った以上にとんでもない物だという事が発覚した。というのも、お菓子達によるスタミナやら魔力の回復量や、それ以外の効果が割と大きいものが有ったんだ。
確かに。医食同源といった言葉がピッタリというぐらい、この島でとれた作物を料理して食べるとポーション的な効果を発揮する。するのだけど、俺達が予想していた以上にお菓子の効果は絶大で……。
「違和感を覚えたのだけど、魔法を使った事で理解出来たわ。これ、魔法の威力が上がっているわね」
「走る速度もちょっと上がってるじゃん」
一時的なものでは有ると思う。だけど、その一時的なものであったとしても、基礎スペックが向上する。なんてドーピングなんだ! という話だけど、鑑定してみた結果、お菓子たちは危険な薬物という訳でもない。なので、戦闘前に軽く食してというのも一考の余地があるだろう。
ただ、危険は無いけど違う意味で危険かな? 良いものだと思い食べ過ぎれば……ね。そこはお菓子だから、横にもドーピングされる可能性がある。そう考えると、女子達には特に危険なお薬かもしれない。
とは言え、流石ポーションの材料になる果物を使っただけは有るといった感じかな。
これをもっと上手く加工したら、お手軽に強化出来る物が作れるかもしれない。さしあたって、簡単に食べることが出来るクッキーとか飴とかが良いかもしれないね。
そう考えると、錬金術でのやるべき事が増えたかな。とりあえず、各種ポーションは開発と改良をするつもりだったしね。
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アップルパイを一切れ掴み、それを口に運んで咀嚼する。
ドーピングされた魔力を使い、錬金杖で鍋の中を思いっきり掻き回す。
『……なんでも魔力が多い方が良いという訳ではないのですが』
『ケッケッケ、コレも実験だろう』
そう。これは実験。
確かに適量というものが有るというのは分かっている。だってそれは肥料の事で嫌というほど理解したからね。ただそれでも、色々と試してどうなるのかと言うのは知っておきたい。
それにもしかしたら、思わぬ産物というものが出来るかもしれないしね。
そんな訳で、今まで以上の魔力を込めて、丁寧に鍋をかき混ぜるとあら不思議!
「てってれー……っと、うわぁ、名状しがたい物の出来上がり」
『スライムか?』
『目や牙があるスライムですね』
錬金術でモンスターを作ってしまった! というわけではない。ただ、色々と混ざりきらない素材達が中途半端なゲル状になって一塊になっただけ。
だからこのスライムもどきも生きているわけではない。うにょりとなんて動いてなどいないしね。
とは言え、なるほど。魔力量が多すぎた場合は、素材が正しい錬金反応をしないという事なのか。
今までは魔力を多く注いでも、誤差の範囲内で収まっていたのか作り出した物の品質に差はあった。だから、こうしたトンデモナイ失敗という反応をみたのは今回が初めてかもしれない。
何せ今まで失敗したとしても物は出来ていたからね。ただ、鑑定してみた結果、品質が〝使えないゴミ〟になってただけで。
しかしこの失敗作。一体どうしようか? このまま破棄するにしても、下手に女子が見ればまた正気度を削ってしまうよなぁ。
得体のしれない物体という点で言うなら、冬川さんが作り出した〝空を見上げる暗黒物質〟と大差が無いし。
『いや、あれは魚が生きていたからな? こっちは動いてないんだぜ』
『見た目のインパクトは同じかと』
悪魔がさり気なくフォローしてくれているけど、天使の言う通りなんだよね。
それに、コレを持って運んでいれば、移動の振動でコレもプルプルと動くだろう。そうなると、傍から見れば得体のしれない生き物が運ばれているようにも見えてしまう。
うん、やっぱり見た目のインパクトは全く同じだ。
「よし、これはこのまま錬金鍋で処理して錬金台を動かす為の魔力にしてしまおう」
こんな物は人知れず処理してしまうに限る。
女子達は今頃外でとある実験中だしね。すぐに戻ってくるなんて事は無い。
『あっちは上手くいってるのかねぇ』
『塩害をどうにかする試みでしたっけ。上手くいきますかね』
それは分からん。分からんけど、少しでも農耕地は増やしたいからね。だから思いついたことはやっておきたい。ま、失敗前提の試みでもあるからね。気長にやっていく感じかな。
で、そんな女子達がやっている実験なんだけど、それはとっても単純な物。
先ずは秋山さんが魔法で壁を作る。これはあれだね。潮風の直撃を防ぐため。それだけで何とかなるとは思ってないけど、無いよりはマシだと思う。……モンスター対策じゃなくて自然対策に壁を作るなんて考えても居なかったけど。
次に大量の植物を植えた。これはすぐに枯れてしまうのでは? と思うかもしれないけど、ここで活躍してくれるのが〝1日で育ってしまう肥料〟だ。
土地にある塩分を、一気に吸い上げてもらえば、それだけ土地の塩分濃度が下がるのでは? という単純な試み。
本当にパッと思いついた案だから、上手くいってくれると良いなって感じかな。
ちなみに、暗黒物質を作り出した冬川さんは、白ウサギのモロと一緒になってヒーヒー言いながら植物を植えたりしている。
食べ物を粗末にした罰だそうだ。✗✗料理の✗は罰を受けるという意味だったのだろうか。
ともあれ、この試みが上手く行ってくれたら、この島でも食物の生産量が増える。是非とも成功してほしいよね。
あぁ、それにしても、こっそりと隠して確保しておいたお菓子が実に美味しい。
バレたら色々と言われそうだけど、そこはあれかな? 魔力を増やして錬金術をやってみたかったと言えば大丈夫だと思う。
実施にやっている訳だしね。けっしてお菓子が食べたいから確保したという訳ではない。
だからちゅー太よ、そう見つめないでもらいたいなぁ。
まぁ、此処に来たのが精霊1体だから皆にバレている訳ではないけど……ここは精霊をお菓子で懐柔しておくべきかな。
ブックマークに評価ありがとうございます!(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ♡...*゜




