その頃の女子達 ~女子生徒Aの視点~
女子の視点です。結構胸糞な展開もありますが、なるべく表現は軽くしているつもりです。
私達4人が助かったのはある意味奇跡だったと思う。
私こと、春野 エリカは、修学旅行のバスに乗っている最中に突如眩い光に襲われ、気が付けば謎の海辺に立っていた。
バスの椅子に座っていたはずなのに何故? と思いはしたものの、私の運はその時は良かったのだろう。私の親友達もまた同じ場所に居て、その足元には私達の荷物が有ったのだから。
夏目 七海。
私の親友の一人で、日焼けとショートカットがチャームポイントなスポーツ女子。
私達の中では一番アグレッシブなんだけど、向こう見ずな点が玉に瑕。でもまたそれが、可愛い点でもあるんだけど。
秋山 桔梗。
ザ・委員長と言った感じな子。眼鏡とロングヘアーが良く似合っている。
少し控えめなんだけど、此処と言う時には自分の意見を通そうとする芯の強さも持っている感じかな。
冬川 雪。
色白美人さん。表情があまり変わらないミステリアス女子。
言葉も大抵一言二言程度なんだけど、なんでだろう? 私達は彼女の言いたい事が通じるんだよね。何か不思議な力でも持っているのかな? って思ったことも。
この三人の親友が私の近くにいたから、私はその場であわてる事も無く落ち着く事も出来た。そしてそれは他の三人も同じだったみたいだけど……周りはそうも言っていられなかったみたいで。
「何が起きてるんだよ!」
「バスは? ねぇ、バスに乗ってたよね!!」
「おい、誰だよこんな悪戯をしたのは!」
叫ぶクラスメイト達。
普通に考えたら彼等の反応が当たり前なんだと思う。私達はそんな彼等を見たと言うのもあってかな? 逆に落ち着く事が出来たんだけども、落ち着けば落ち着くほど気がつく事もあるんだよね。
「ねぇ、どう見てもクラスメイトの人数足らないよね?」
「言われて見れば、もしかして半数以上居ないかんじ?」
「これはおかしい。いや、バスの中に居ない時点で既に怪奇現象が起きてはいるのだけど」
「……考えるだけ無駄」
私の言葉に七海が賛同し、桔梗はおかしいと言った後に「うーん……」とうなりながら思考をし始めた。
雪にかんしては……思考を放棄したのかな? それとも、無駄だと割り切って今後の事でも考えているのかな。
「とりあえずなんだけど、これって協力していく必要があるよね」
「あ、エリカ見て見て、先生も居るから直ぐに皆落ち着くんじゃないかな?」
「……先生は茫然としてる」
「あれはダメな大人ね。雪が気が付いたけど、先生は目が逝ってしまっているわ」
あ、あれぇ? 先生なんだからこういう時はしっかりとクラスを纏めてくれないと!!
でも、先生は桔梗や雪が言う様に、なんか変な方へ視線を彷徨わせながら動こうとしてないよ……一体これってどうなるの。
そんな風に考えていたのが、まさかまさかまだ幸せと言える時間だったなんて、この時は考えても居なかった。
ただ、こんな目に遭うなんてって感じで、この状況が不幸の絶頂だとか考えていたんだけど……それは違ったみたい。
――ザザーン。そんな波の音を耳にしながら、私達は今4人そろって釣りをしている。
「……魚がスレてない」
「スレってどういう事?」
「それは単純に魚が釣りやすいって事ね。本当なのか迷信なのか分からないけど、釣り人が多い場所は魚が釣れにくいみたいよ」
「ふーん……人が居るから釣れないなんてあるんだ」
いつも通りのやり取り。いや、魚釣りの話題は初めてなんだけど、私達の基本は、雪が一言ぽつりと言って、私か七海が質問をして、その質問に桔梗が答えると言ったサイクル。もしくは、最後に雪がぽつりと呟く感じかな。
こうして4人で、海を前にしていると心が穏やかになって行く気がする。
そして、穏やかになって行ったからこそ、望月君には悪い事をしたと思う。だって、彼にお願いをして助けてもらったのに、私達は彼に対して……。
「やっぱり、怯えたのは失礼だよね」
「どういう……って、あー、うん、それは確かにそうかも」
「……でも仕方ない」
「仕方ないと言っても、望月君には関係ない事よ? だって彼が私達に何かをした訳でも無いし、元凶は別に居るんだから」
そう、私達は望月君が〝男の子〟と言うだけで怯えてしまった。
そもそも、望月君がそういう人物でないと分かっていたからこそ、彼に救助を求めたというのに。
「望月君って何時も他の人との距離を空けてたからね」
「……ストレス」
「人嫌いってやつ? 学校に居る時は暗いなとか思ってたけど、こういう時は無害だってわかる」
「でもそうなると、私達が居るだけで望月君には好ましくない状況じゃない? とは言え、私達には頼る相手も逃げ込む場所も無いのだけど……」
ストレス。うん、雪の言う様に望月君にとってはかなりストレスなんじゃないかな? でもそうなら、何で私達の事を助けてくれたのだろう。
私達が全力で彼に助けを求めたとはいえ、彼にとっては私達なんてどうでもいい存在のハズ。
それこそ、あの時、同じ場所に放り出された先生や男子達とは違って……。
「……うっ。気持ち悪……」
「エリカどうしたの?」
「……思い出したら、少し」
私達は逃げて来た。
逃げる事が出来たおかげで、最悪な目に遭う事だけは避ける事が出来たんだけど、目の当たりにしたのが地獄だったとしか言えなくて……。
「忘れな、とは言えないけどさ……」
「……今は安全」
「そうね。他の子達も居たのだから忘れるなんてできないけど、それでも今は生き残るのが最優先だから」
先生は、男子達は、最初こそ紳士だったけど、やっぱり〝男〟だった、〝狼〟だった。
私達は常に距離を取っていたから異変に気が付いたのだけど、異変に気が付いたのが遅かった子や、異変そのものの中心にいた子は……彼等の欲望の捌け口にされてしまっている。
たった5日程。そう、たった5日で、秩序や常識なんてモノが全て崩壊してしまった。
救助が来ないストレス。食料が足らない恐怖。ソレだけならまだ良かった。いや、それがあったからこそ、皆は狂ってしまったのかもしれない。
例え飲食が荷物の中に有った物を少しずつ消費する事で凌げていたとしても、それでは近いうちに全て無くなってしまうのは目に見えていたから……。
ココナッツもあったから、それでも多少は補えていたけど。
それでも、あれだけ楽しく過ごして来たクラスの仲間があんな豹変をするなんて、正直考えてすらいなかった。
本当に、私達が逃げられたのは運が良かったんだと思う。
逃げながら、それでも泣き叫ぶ声が耳に入って来る。
耳を必死に抑えながら、服や肌を枝や葉で傷つけながら逃げた。怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、コワイコワイコワイコワイ………………。
そう思いながら見つけたのが、望月君だったんだ。
「謝る? でも、なんて言うの?」
「……難しいかな。多分、今は良いけど、男の子を目の前にしたらまだ震えると思う」
「……無理」
「時間が必要よね。でも……出来るなら他の子達の救助もしたいのだけど」
それは……確かに、他の子達を助けたいという気持ちが無い訳では無い。
言い訳と言われるかもしれないけど、私達もあの時は男子に追われながら逃げ回った。だから、あの場で救助になんて向かう事が出来なかった。
助けたい。でも、怖い。あの場所に行く事を考えるだけで手足が震える。あの泣き叫ぶ声が、頭の中でリピートされる。
それに今戻ったところで、私達は何もできずに彼女達の仲間入りをしてしまうだけ。
「……武器が必要」
「武器って、この場には石とか枝ぐらいしか無いよ?」
「最低限でも遠距離武器は必要よね。簡単な物であればスリングかしら? でも練習しないとダメよね。それに、出来るなら弓とかがある方が良いかもしれないわね」
桔梗の言うモノの殺傷能力が高すぎる……あぁでも、あんな事を平然と行える相手であれば、何時かは私達も狙われるかもしれないし。
いやいや、だめだよだめ! こんな考えは! 彼等にはしっかりと反省して貰わないと……って、思うんだけど、それは警察が居て秩序が保たれる世界に居たからこそだし。
「……エリカ、竿」
「え?」
「魚が掛かってる! 早く釣りあげないと!!」
あ、あぁ! 考え事をしていたら魚が掛かってた!
うーん、もしかして魚釣りって思考をするには向かないのかも。だって、素人の私でもどんどん釣れるんだもん。
ブクマに評価に誤字報告かんしゃなのです(((o(*゜▽゜*)o)))
と言う事で、女子達の名前や姿などが公開されました。
エリカは名前通りでハーフな子です。見た目は天然なくるくる毛で肩下までダークブロンドな髪をしています。目の色も少し青みが入っている感じで。と、彼女だけ表記が無かったのであとがきで公開。(何せ彼女視点ですから)
そして、彼女達が必要以上におびえる原因もまた……。まぁ、どうやら糞野郎が多くいて、そんな糞野郎に感化してしまったモノが居たようです。
まぁ、その内に天罰を受けるでしょうが……ソレはまだ先の話。
因みに、景の視点ではA・B・C・Dと認識していますが、一応Aが春、Bが夏と、アルファベット順が春夏秋冬となっています。……とはいえ、景は偶にAとBを間違えたりしますが。(本当に覚える気が無いというべきか……)




