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急がば回れ

 足がほしい。そう思ったのは石碑フィールドの新しい場所をアタックした時に、次のフィールドまでの出入り口が倍ほどの距離があったから。

 倍の距離があるということは、それだけ1つのフィールドに掛かる時間が増えてしまう。そうなると、道中安全ではない場所でキャンプをしなければいけないなんて可能性も出てくる。なので、移動速度が上がるような何かが欲しい。そう考えるのは自然だと思う。


 以前からちょっとした案はあった。なにせ冬川さんが実にかわいい馬に騎乗しているからね。彼女だけが他の人よりも移動速度が早い状況で、それに合わせるためには自分たちも何かに乗る事ができれば良い。

 とは言え、今まではその何かを用意することが出来なかったんだけど……。


「出来た! これはもう完璧じゃないかな」

「……おー」


 テイマーが居ないからチュンメーをテイムすることは不可能。牛は居るけど、流石に牛に騎乗しての移動は違うし、動物タイプの馬は居ない。

 それならば! と思っていたのが馬を錬金人形で作成するということ。

 ただ、今まではゴーレムの核が足らなかった。運転手の人から貰ったものも合わせて2個しか無かったからね。


 でも! この石碑の新フィールドをアタックし、フィールドボスがゴーレムだった場所もあったお陰で、ゴーレムの核が4個手に入った。

 それならば作るしか無いでしょう! という話なんだけど、そこで問題になったのが素材なんだよね。

 強度を考えると鉄などで作りたい。でもそれだと全く量が足らない……と言うことで、俺たちはストーンサークルのフィールドに飛び、そこで女子達が海底採掘をし、俺は必死に錬金術を行った。

 そして出来たのが……。


「馬なのかしら?」

「馬じゃないよね……」

「これ、ケンタウロスじゃん?」


 女子達が何か違うと言っているが、コレは馬です。ただ人の形をした何かが付いているだけで。


「説明をすると、どうせなら戦闘能力も欲しかったからね。そもそも、錬金人形は前衛を作る予定でもあったし」

「あぁだから2体は大きな盾と槍? を持っているのね」

「槍って言うほど尖ってないじゃん。どちらかと言うとランス型の棍棒?」


 槍にみせた鈍器というのは間違いない。だって俺が武器を作ると刃は全部潰れた状態になっちゃうからね。そして多分だけど、鈍器としても鍛冶師が作ったものよりは劣ると思う。まぁ、無いよりはマシレベルかな。

 それに、槍の事を言ったら盾だって似たようなもので、アレはただの鉄板だ。


「素材は鉄やアルミにステンレスだね」

「水属性の鉄は使わなかったの?」

「アレで作ろうと思ったら、全く量が足らないよ」


 水属性の魔鉄は確かに結構量がとれた。とは言え、それは武器を作るという意味で考えたらであって、こんな大きな錬金人形を作るとなると一体分にもならない。なので、現在はインゴットにしてアイテムチェストの中で塩漬け中。


「精霊石はどうしたのかしら?」

「そっちはそもそも量が少ないから、4人おそろいのお守りを作っておいたよ」


 水属性のアミュレットとでも言えばいいだろうか? 残念なことに精霊石は全部で4つしか手に入らなかったからね。まぁ、精霊石は見た目が綺麗というのもあるし、人数的にも丁度良いと思って4人のお守りを作ることにしたんだよね。

 ちなみにその効果は……。


――――――――――――――――――

 水精霊のアミュレット(普通)


 特徴:水属性威力UP(小)・火属性防御UP(小)


 水属性の攻撃力アップに対火属性の防御力アップがあるわよ! 結構良いものが出来たのではないかしら?

 ただもう少し形にこだわった方が良かったのでは? 飾り気の無い雫型と言うのは……流石にどうかと思うわよ(´・ω・`)?

――――――――――――――――――


 性能は褒められたけど、見た目に対して辛辣なシステムさん。うんまぁ、そんな物を俺に求められてもという話なんだけどね。

 そういったのは、細工系のジョブかスキル持ちに任せるのがベストでしょ。



 ただ、そんな飾り気の無いアクセサリーではあるけど、こんな環境下ではアクセサリーなんて手に入る事なんて無かったので、皆がそれなりに喜んでくれているみたいではある。良かった良かった。


「……お揃い」

「雫型と言うのがまた水属性とわかる形ね」

「涙型だと思ってたじゃん……」

「いや、どっちも同じ形だと思うよ?」


 アクセサリーとは言っても、オシャレ用ではなく能力アップ用が本来のあり方なんだけどね。まぁ、どちらでも有用と考えればそれで良しといった感じなのかな。


「あ、でも望月くんの分は良かったの?」

「いやまぁ、その形で流石に自分用はね……それに4つしか無かったしね」


 流石に自分用で作るなら、もう少し形というか装備品としては別の方法を考えるかな。例えば、腕輪とかガントレットとか短剣に仕込むとかそんな感じで。


「そんなもの?」

「だよ。だから気にせず装備しておいて」


 とまぁ、精霊石の使い方は女子のアクセサリーになりましたという事で! 後は元々の話であるこの馬達なんだけど。

 スペックはそこそこ? だと思う。一応移動速度で言うなら間違いなく俺たちよりは早いし、体も島で手に入れた鉱石を使っているからね……多分、普通のステンレスやアルミとか鉄よりも異常な性能をしているんだよね。

 ステンレスやアルミなんて、説明文を呼んだら〝絶対に錆びない〟って書いてあったし。……本来のステンレスやアルミって錆びる物もあるんだけどなぁ。後、硬さとかも「ん?」と思う部分があったりしたし。


 で、そんなケンタウロス型の馬の背に、俺たちが騎乗出来るようにと革で作った鞍をセットしてある。因みに、手綱は無い。だって鋼でできているとは言え人形だからね……流石にその頭に手綱をセットするのはねぇ。

 という事で、手綱は無いけどつかめる部分は馬の背の部分に用意してある。


「て、どうやって指示を出すのかしら?」

「普通に口頭でいけるよ。なんか割と核? の学習能力って高いみたいで、色々錬金をしながら教え込む事が出来たんだよね」

「とんでもないAIなのかしら?」

「それはどうなんだろうね? ただ学習能力があるってのは事実だから、今後も色々と教えていけると思うよ」


 多分俺たちに合わせた教育ができると思う。それこそ、後衛に特化させたり、前衛として働かせる事が出来たり。

 因みに、今装備させているのはバランスを考えている感じかな? さっきも話していたように槍と盾を持っているのが2体で、弓持ちが2体……まぁ、弓と言ってもスキルなんて使えないから、完全に物理的な威力を突き詰めたモノだけどね。


「鉄弓に……なにこれ、私だとこんな矢は扱えないじゃん」

「大きいよね。もう鉄筋? って感じの矢だよ」


 威力重視だからね。太くて重いのは仕方ないと思う。てか、そうでもしないとスキル無しではモンスターにダメージを与えることは無理だと思う。とは言え……。


「あくまでこの子達は俺たちの足。移動力アップがメインだからね。攻撃力は本当に補助的なものだと思ってもらった方が良いかな」

「メインは私達が撃つって感じなのね」

「落ちないようにしながらだから大変だろうけどね」


 ただ、魔法を使うのなら片手で備え付けの手摺りを掴み、片手で杖を持てば大丈夫だと思う。高速移動でもしていない限りはだけど。

 問題は夏目さんの弓なんだよね。弓を扱うには両手を使う必要があるから、手摺りを掴んでってのが無理。


「……そこは練習在るのみじゃん! それに、騎乗しながらってのは流鏑馬みたいでかっこいいしな!」


 まぁ本人がやる気満々だから大丈夫かな? 当分の間は騎乗訓練になりそうだけど、レベルアップでスペックが上がってる身体だからね。多分直ぐに慣れるんじゃないかなって思ってる。

ブックマークに評価ありがとうございます!ヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪

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