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ウサギとレベルとシステムと

ウサギ好きな人は注意?

 一人になった! お陰で漸く脳細胞が活性化し始めた。

 目がぱっちりと開く。これは完璧に覚醒したな。うん、空気が実に美味しい。


 やはりと言うのもなんだが、俺は人が居る時は全く体も精神も休まらない。

 自分の能力の殆どを人の気配察知に使っているのか、他事を行う為のリソースが殆ど足りてない状況になっているのだろう。

 だから、普段から眠いし、疲れるし、なんなら苛々としてしまっていた。


 とは言え、これはこの地に来たからこそ発覚したもの。


 今までは、残念ながらその状況が当たり前だった為に、自分の体が弱いのだとか、そういった体質なのだろうとすら考えていたからな。

 なるほどなるほど、障害が無い俺のスペックというのは、自分の考えている以上に高かったという訳か。そりゃ、無意識ながらハイテンションかつハイスペックで行動が出来るはずだ。


「家に居る時もなぁ……違う部屋の動きにすら気を配ってたからな」


 顔色だけでなく気配も常に察知しようとする。

 何時からだったか忘れたけど、それが当たり前の日常になっていたからな。正直な話、寝ていてもしっかりと熟睡した事なんて……ハンモックに揺られてから思い出した気がする。


「前に熟睡したのって何時だったかなぁ……」


 思い出せない程遠い記憶なのだろう。

 そうか、俺にとっては家もまた安全地帯では無く敵地だったと言う事なのだろう。



 自然の音と光と影。

 人の会話など全くなく、時々聞こえてくる鳥の鳴き声などが耳にやさしい。

 あぁ、心が洗われて、脳がどんどんと冴え渡って行く。


 うん、これは狩りを行うのに最適化されて行っているな。


「某ご飯な漫画では無いけどさ。今からウサギを狩るんだ、だから一人で静かに落ち着いた状況と言うのは実に好ましい」


 邪魔など無く自由である。あぁそうだ。今から俺がやる事を誰も咎める者なんて居ない。


 ハハハ……なんかどんどん楽しくなって来た! そうだ。この煩わしい事が無いのが、俺が今まで求めてやまなかったもの!

 今なら……今ならウサギぐらいトラップ無しでも狩れる気がする! さぁ、ウサギよ! 巣穴から出てこい。




 なんてテンションを爆上げしていたんだけどなぁ……いやはや、まさかまさか。


「おいウサギよ。俺のテンションを返せ」


 俺は、罠にかかってぶら下がり状態になっているウサギに対して、実に理不尽な愚痴を口にした。


 だってさ、そうだろう? こう、皮肉屋なウサギを追いかけまわして、魔法を撃ち込んで、死闘の果てに討伐し、レベルと食材をゲットするんだ! と意気込んでいたのだから。

 たしかに、この罠は俺が仕掛けたものだ。だから、ウサギにとってみれば本当に理不尽な物言いだろう。


 だけどさ、あんな挑発が得意なウサギの仲間なんだろう? なら、誘導されても居ないんだからトラップぐらい避けろよ! と言いたいんだよ。


「とは言え、何かテンションも下がったからな。ここはこの一羽をサクッと一突きしておこうかな」


 ぶら下がっているとはいえ、その状態で蹴りでも放ちそうな気配があるウサギだ。

 だから俺は距離を保って、ウサギの首を狙い石槍で一気に突きを放つ。


 丁度逆さにぶら下がっている為か、突いた槍を抜けばそのまま血がボタボタと地面へ……。

 ただそれだけだと時間がかかりそうなので、石斧を使ってサクッと首を落として……と、ここで俺は一つの事に気が付いた。


「あれ? レベルが上がった音がしなかったな」


 前にレベルが上がった時は、スマホからレベルがあがったよー! と知らせる為の音が鳴ったんだよな。

 何やらゲームを思い起こすような感じだったけど……ただ、あの時はウサギを罠に嵌める為にと必死に誘導し、その後はウサギの動向を見守る為にと、火だるまになったウサギを注視していた。

 だから、そんな音が鳴った事に気が付いたのは、全てが終わった後あの戦いについて反省点が無いかと考えた時だったりする。


 そして、その時に思い出した音が今回は全くなかった。

 念の為にと、ウサギを討伐した事は間違いないか? とウサギをチェックし、それが間違いでないと確認すると次はスマホのチェックだ。


 ステータスアプリを開いて自分の状態を確認してみる。


―――――――――――――――――――――――――――――

 ステータスだよ!

 ジョブ

 アルケミスト:Lv2


 スキル

 錬金術(初級):2

 鑑定(初級):0

 魔法(全属性・初級):0


 残りSP0


 追記

 レベルが上がったと思った? 思っちゃった? 残念! 経験値が足りてないよ!

 食料もまだまだ足りて無いよね? さぁ、もっともっと色々と狩りをして行ってね♡

―――――――――――――――――――――――――――――


 ……この糞システムが! なんで俺はこの追記で「ねぇ? どんな気持ち? どんな気持ち?」をやられなければいけないんだ。

 てか、こいつはウサギみたいに俺を挑発しないと生きていけないとでも言うのだろうか……全く、もう少し優しさをもって欲しいものだ。

 こちとら、お前の言う様に女子を助けたんだぞ? 俺の貴重な正気度と休息を払ってな。


 とは言え、確かにまだまだ狩りをする必要はあるだろう。

 ならどうするべきか? うーん、このトラップを再利用はするとしてもだ。このままこのトラップのみでの狩りとなると、一日に一羽だけしか狩れない計算になってしまう。

 と言うよりも、ウサギ自体が無限に湧いてくるのかどうかと言う話もある……あれ? ウサギって湧くものだったっけ。

 うんまぁ、この地の法則は解明されていないからな……ウサギが必ずしも、動物の様な営みで繁殖しているとは限らない。……てか、出来れば繁殖じゃなくて湧き出て来ていてくれ。


「とりあえずこのウサギは今晩のご飯にするか、それとも干し肉にでもするとして……」


 いや、ここは干し肉よりも燻製肉にするべきだろうか?

 まてまて、燻製肉を作るには燻製器が必要だよな……って、それは文明の利器と言うモノだから、そもそももっと原始的な方法でやる必要があるか。こう、肉を仕舞って煙が充満するような箱を作るって感じだったっけ。

 大量に生産するなら釜を作るべきなんだろうけど、釜用のレンガは石レンガで出来るのかな? どうなんだろう。石の種類とかでも違うだろうしな。

 とりあえず、今は少しで良いから木箱でも十分だろう。直ぐに使い潰してしまいそうだけど。


 あ、後スモークチップをどうするかだよな。

 チップ次第でも味や香りが変わってしまう。まぁ、木自体は色々な種類が大量に用意されているから、その中にはチップに良いモノも見つかるだろう。


「さて、問題はこの後ウサギを探すか、それともこのウサギを処理する為に拠点へと戻るかだが……」


 拠点……戻りたくないよなぁ。

 まだ彼女達は戻って来てないだろうけどさ、其処は俺の気持ち的な問題。

 もう少し狩りや探索を一人でやって、気分というかエネルギーをチャージしておきたい。と言うか、暴れてすっきりしておきたい。

 このウサギには、盛り上がった気分に水を掛けられてしまったからな。


 とは言え、幾らテンションが上がったとしても、あの蜘蛛相手にはまだまだ勝てないだろうと言うのは理解出来る。

 あの無敵モード的な気分の時は蜘蛛相手でも勝てるんじゃね? とか思っちゃったけど、こう少し冷静になった今なら無理だと言うのは断言できる訳で。

 であれば、やはりまだまだ森の奥にまで行くのは止めておいた方が良いだろう。


 とりあえず、当分の間はこのウサギを狩る事で食料とレベルを稼いでいくべきだろうな。

 何、時間は十分にあるんだ。下手に勇み足になれば、そんな時間を一瞬にして零にされてしまう可能性だってあるのだから、そこは冷静に判断して必要以上とも言えるだけのマージンを確保して置くべき。


 そもそもの話、ウサギ狩りでレベルが何処まで上がるか分からないけどな。ゲームで言うなら最序盤に出て来る一番の雑魚だろうしな。

ブクマと評価と誤字報告あるなのです(≧▽≦)



私、ウサギ好きなんですけどね。やっぱりそれでも、行為状況になったらペットとしてでなく食料として扱うでしょうね。(実はペット化する事も考えていたのですが……サバイバル的に却下しました)


そしてやっぱり1羽ではレベルが上がらなかった模様。

お陰でシステムのうざい事うざい事……このシステムは一体なにものなんだろうか(-"-)

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― 新着の感想 ―
[一言] システム 多分じゃけどミ◯ディに感化された?
[一言] 本格中華料理店行ったときに、一般的なサイズうさぎの丸焼きと大きめのカエルの丸焼き(開かられた状態を焼肉みたいに炭火で網焼きするタイプ)食べたことあるんですが うさぎはそこそこ臭みがあって骨が…
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