石碑に到着! だけど……
軽くステップを踏みながら女子達との衝突を避ける。そうしてたどり着いた先に有った物は、第1フィールドと同じ形をした石碑だった。いや、正しく言うなら第1フィールドの時は崖に埋まっていた石碑が、外へと掘り出されているといった感じだろうか。
そしてまた、その石碑は第1フィールドの時の物よりも風化しているようで、読める文字もかなり減っている。
「とはいえ、スマホを嵌める事が出来る穴は健在って感じだね」
「そうみたいね。とりあえずさくっとアップグレードをしてしまいましょうか」
さて、今度は一体どんなアップグレードが行われるのだろう? と思いつつ、スマホを石碑に差し込む。すると……。
『ピーーーー! デバイスを確認しました。デバイス情報をチェック中、チェック中……終了いたしました。お使いのデバイスのバージョンはアップグレードの必要がありません。位置情報の登録のみ行います』
あれ? アップグレードが無いという事は、使える施設的なものは無いって事なのかな。
今までなら、ジョブの変更や昇進にポータルの開放とかそういうのが有ったんだけど……あ、でも最初の石碑はデバイスを島対応にするという物だったっけ。
となると、石碑としての仕事はすでに終わっているので皆無という事になるのかな。
俺は手元に戻ってきたスマホをチェックしながら、なんだか思っていたのと違うなぁ……なんて気持ちになったんだけど、よくよく考えたら毎回アップグレードをする度に、何かの能力とか施設を開放していたら限りがないよなぁと納得できるモノもある訳で。
当然という気持ちと、残念という気持ちが混交したなんとも言えない気分になってしまった。
そしてそれは、女子達も同じようで。
アップグレードを終わらせた彼女たちの表情が、順番にもやっとしたようなモノになっていっている。うん、見ていると面白いというか、納得できるというか……。
ともあれ、全員のアップグレードが終わると似たりよったりの表情になったという訳だ。
「あー……納得できるけど、出来るけど! 期待を返せって気分じゃん」
「当然であるこの結果を、何故私は予想できなかったのかしら……」
気持ちはよく分かる。だけど落ち込んでいても仕方がないので……。
「とりあえずマップのチェックを済ませようか。もしかしたら第1フィールドとは違う何かが有るかもしれないし」
「そうだね! それに次のフィールドに続く道もチェックしないと」
そうそう。次のフィールドへの道は重要な情報だからね。
新しい資源とかが欲しければ、どんどん新フィールドを開拓するのが早いと思う。新素材は錬金術師なら是が非でも欲しいしね。
ただ似たりよったりのコンセプトだと、余り期待は出来ないかなぁ? という気持ちが無いわけでもないけど。それでも可能性はある訳だしね。
「あ、そうそう。ここのフィールドってなんて呼ぶ? そのまま第4フィールドってのも微妙だよね」
「えっと、ポータルの番号はどうかしら?」
「石碑2になってるじゃん」
「それなら石碑2とかって呼び方でも良いんじゃないかな」
となると、今まで読んでいた第1フィールドとかはコンセプトネーム? あ、でもそれだと石碑と言う呼び方も同じになるか。
これまた結構悩ましい問題だなぁ……とりあえず今は棚上げで良いかな。
「そうそう。向こうには連絡をした?」
「リンクで今チャットを飛ばしておいたわ。一応『石碑を発見した』とだけだけど」
「あっちも海沿いだから、石碑の可能性が高いよね」
その可能性は高いだろうなぁ。そして、俺達みたいになんとも言えない気分になるんだろうな。
「っと、このマップから行ける場所は2箇所みたいだね。このまま海沿いを真っすぐ行った場所に1つと、多分これは崖のような壁がある場所に1つかな」
「そこは第1と同じって感じだね」
このフィールドが第1と同じであるのなら、この崖側の出入り口の先にあるのは第2と似たような場所という可能性が高いかな? となると、塔のフィールドという事になるのだろうか。まぁ、行ってみないと分からないけど。
そしてこの海沿い側の出入り口の先が、また石碑の可能性が高いかな。
「このまま真っすぐ行った場合だと、新素材はあまり期待はできない感じかな? ただ、島の大きさとかそういうの把握出来そう」
「一応全体マップを見た感じだと、全く明るい場所が無いのよね。だから結構大きい島だというのは分かるのだけど」
「……一周?」
「先にぐるりと探索するのは有りだと思うけど、結構時間が掛かりそうじゃん」
確かにそれはそうかも。
いくら身体能力が強化されたとは言え、それでも1つのフィールドを移動するのに必要な時間は、早くても1日は掛かりそうなんだよね。
第1フィールドからの移動自体、結構俺達の拠点が中心からこのフィールドよりだったことも有って、少しはマシだったけども。端から端への移動となるとなぁ。
「モンスターとの戦闘とか休憩に夜間のキャンプとかも考えると……一つのフィールドを踏破するのに2日から3日は見積もったほうが良いかもね」
「それに素材の採取とかも考える必要もあるわね」
「……美味しいモノは沢山必要」
果たして島を一周するのに一体どれだけの時間がかかるのだろうか。
何かで見た沖縄一周を徒歩で2週間から1ヶ月ぐらいで出来るって話だっけ? ここらへんは歩く人のスペック次第だから、それだけ差があるんだろうと思うけど。
でも、沖縄の場合は道が整備されていたりするからなぁ。島は道が整備されていないとか、そういう事を考えるとなぁ……いくらレベルアップで能力が上がっているとは言え、もっと時間はかかるだろうね。皆と会話したように、他にも色々な要素で足止めされる訳だし。
ただ救いがあるとすれば、俺達の場合は酔うというデメリットがあるとはいえ、ポータルでいつでも安全地帯に戻ることが出来るという事かな。
拠点に戻れば物資の補充も出来るし、安眠も約束されているからね。
あ、でもそう考えると、運転手さん達はちょっと大変かもしれない。
「運転手さん達はポータルを開放してなかったよね」
「あぁ……その上で新フィールドの探索になるのよね。それって私達よりもハードルが高いわよね」
いくらアイテムポーチを融通したとは言え、持てる量はある程度決まっている。となると、幾らかは行った先で現地調達を行う必要が出てくる。
それに、拠点に戻ることが出来ないということは、毎回何処かでキャンプを張るなりしなくてはいけない。……安全かどうかもわからない状態で。
とは言え、ポータルの開放はかなり難易度が高い。何せあの湖を突破しなくてはいけないから。
果たして彼らは大丈夫なのだろうか? と皆で会話をしていると、タイミングが良く秋山さんのスマホに連絡が入った。
「あ、運転手さん達も石碑を見つけたみたいよ。マップデータをこっちに送ってきたわ……って、これは」
「ん? 桔梗どうしたの」
「えっと、コレはある意味、彼らの問題を解決出来るかもしれないわね」
そう言いながら秋山さんは自らのスマホを皆で見えるようにした。
スマホを覗いてみる。すると其処には全体マップが表示されていて、しかも俺達が行っていない場所も明るくなっているではないか。
「あ、もしかして此処って運転手さん達がアタックした場所?」
「えぇ、そうなるわね。そしてこの場所をタップすると……フィールドマップも見えるようになったわ」
なるほど。マップの共有が可能と言うことなのかな? こっちは石碑を登録していないはずなんだけど、でもソレが出来るということは、石碑の登録データがマップデータと一緒に送られて来たって事に? なんだろう。なんだか謎が深まったよ。一体どういうシステムをしているんだろう。
ただこれで、俺達は運転手さん達が開放した場所にもポータル移動が出来るって事だよね。
秋山さんが念の為に、石碑にアクセスをして飛ぶ先をチェックした。すると其処には、石碑3という文字が確認出来たようで。
「うん。間違いなく飛べるみたいね」
「えっと、俺の方でも確認してみるか。まだマップのやり取りはしてないから、こっちは真っ暗なままだし」
そう言って、俺も石碑にアクセスをしてチェックをする。しかし、やはりというべきか、飛ぶ先には石碑3の文字は無かった。
となると、このポータルは完全にマップと連動しているって事で良さそうだ。……ポータルを開放した時、そんな文字は一文字たりとて書いていなかったんだけどなぁ。もしかして、この方法って裏技的なものなのだろうか? それとも記入ミスとか?
ただ、もしシステムからの修正があるかもしれないから、ここは運転手チームの方へと飛んでおき、石碑にスマホを挿し込んでおいたほうが良いかもしれない。……まぁ、運転手さん達が移動してからだけどね。
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