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ようやく……

「……魔法でいい」


 突然そんな事言いだした冬川さんだけど、俺には一体何のことを言っているのか全く分からなかった。何せ前後関係が全くない状態で、ポツリと呟いた言葉だったからね。


「えっと、一体どういう意味?」

「……ん」


 「ん」と呟きながら、冬川さんはある場所を指差した。


「……これ?」


 指を指した場所は俺の手。そして、その手には生産欲に身を任せて作り上げた閃光手榴弾で、今俺は新しいフィールドにアタックする為にと身支度をしている。


 それにしても、はて? これが魔法でいいというのはどういう事だろうか。


「あぁそういう事。確かに光属性の魔法なら似たようなことが出来るわよね」


 あぁ! そういうことか。

 確かに、光属性の初級魔法であるライト・ライトアロー・ライトボール。その中でもライトボールを使えばかなりの閃光を発することが出来る。それも相手の目の前で。

 どちらの光が強いのかは……どちらもどちらなので断言することは出来ないけど、両方とも目潰しをするには十分な威力だ。


 しかしなるほど。確かに目を潰すと言うだけでいうなら、既に魔法があるからわざわざ作る必要も無いと冬川さんは言いたいのだろう。

 ただそれなら何故今まで光魔法を使ってこなかったのか? 使えば目潰しが出来るじゃないかという話になるんだけど……その理由は魔法を使う身であれば十分分かっていると思うんだけどね。


「魔力を使うより道具の方が便利でしょ。魔力はできるだけ攻撃に使いたいし」

「そうね。今まで光も闇も使ってこなかったのは、ただ視界を奪うだけに魔力を使う余裕が無かったからなのよね」


 光も闇も魔法として威力はある。あるんだけど、どういう訳か他の魔法より威力が低かったりするんだよね。多分これは、弱点属性・非弱点属性といったモノが関わっているんだと思うけど。

 それに、属性の弱点とかを無視して威力の高い魔法を撃ち込もうと思ったら、一番良いのは雷か氷か火だからなぁ。特にこの3つだと、追加効果である麻痺・凍結・炎上が大きいしね。


「だから毒以外の状態異常ってのも、出来るなら道具で補うのがベストだろうね」

「……ふむぅ」


 ただこれは初級の魔法だからという前提での話。

 秋山さんの力を見て分かるように、特化したジョブであったらまた別なんだよね。初級だけでも使える魔法も増えるし、その効果や範囲も全く違う。

 中級になれば威力もまた段違いなもので……下手に初級の弱点属性を撃つより、特化魔法を撃ち込んだほうが威力が高いなんて事は普通にありえる。

 更にそこへ、杖の補正とかもあるからね。属性魔石で装飾とかをして威力をブーストしたら……はっきり言って他の属性なんて使っていられるかってなってしまう。とは言え、その特化属性が全く通じない相手用に、初級でも他の属性魔法は使えるようにしておくべきなんだけどね。



 と、少し話がそれた。



 そんな訳で、状態異常だけを狙うのであれば、なるべく魔力を使わないですむ道具でフォローするのがベスト。だと思う。勿論、魔法じゃないと状態異常にならないなんてパターンもあるからね。ただそういうパターンは一旦棚の上という事で。


「だから緊急回避用に、この閃光手榴弾は持っておいてね」

「……ん。わかった」


 理解出来たのか、冬川さんは返事をすると同時に、俺から閃光手榴弾を受け取ってから投げ物ホルダーへと挿し込んだ。

 因みに、投げ物ホルダーには閃光手榴弾以外にも煙幕などと言ったものが挿し込まれていて、これは逃げる時に使うための物が揃っているって感じかな。

 そして別の場所にポーション用のホルダーが有り、投げ物と混ざらないようにしっかりと管理していたりする。


 どちらもアイテムポーチに入れておいても良いんだけど、その場合だと緊急時に使いにくいからね。だから直ぐ使えるようにとホルダーを用意したんだけど……これがまたいい感じの見た目になったりしている。


「見た目だけではなく、使い勝手も良いのだけど?」

「そこが駄目だったらわざわざ作らせないし、作っても使ってないよ」


 勿論、アイテムポーチには大量のストックが用意されていたりするけどね! こっちは、わざわざポーチに手を突っ込んで出さないといけないから……やっぱり少しだけタイムロスがあったりするんだよね。ただ、緊急時でないなら別に問題ないから、普段はこっちから使うって感じかな。


「てか、皆は準備終わってるの?」

「そうね。私達はアイテムポーチ内のチェックを行う程度だもの。直ぐに終わるわよ」

「なるほど。って事は不足している物とかは無いって感じかな」

「食料も十分用意してあるわね。鶏や牛達に農地の方はエリカ達が今様子を見に行っているわ」


 なるほど。という事は、後の準備は俺だけって事かぁ。

 まぁ確かに消耗品の数で言うなら、一番持っていくものが多いのは俺だしね。一番支度に時間がかかるのも仕方がないのかな……って、あれ? これ、よく言う女子の支度はって話と逆転してない?


「……もっちー?」

「いや、なんでそこでそう呼んだ?」

「性別がもっちーということかしら? 雪、流石にそれは失礼よ。望月君はどう見ても〝男の子〟でしょう。身長も平均はある……はず?」

「あー……島に来てから身長とか測ってないなぁ。まぁ、以前測った時だけど平均値ではあったと思う」


 そこまで小さくはないはず。うん、たぶん。


「てか、顔も中立といった感じはないと思うんだけど?」

「……童顔?」

「ちょいまて……童顔なのか?」


 分からん。正直、他人と顔を見比べたこととか無いから、全く判断基準が自分の中にない? あれ、ちょっとまて、そもそも他の人の顔ってどんなんだっけ。直視出来なかったとは言え、写真とか映像を通して見る事は出来ていたはずなんだけど。

 あぁでも誰かを思い返そうにも、一緒に居る女子4人しか思い出せないんだけど。


 て、まて。何で俺は女子の顔を思い出せるんだ? 顔も合わせないようにしていたはずなんだけど……でも、思い出せるという事は、それだけ皆の表情を見ていたって事になる? あれ?、でも何時見ていたんだろう。

 やばい。頭が混乱して来た……え? だって記憶するほど、見ていた時間があるってことになるんだよ。でも、俺自身そうまじまじと見ていた覚えはない。

 無意識? 無意識の内に見ていたというのだろうか。


「……もっちー混乱?」

「混乱というよりも錯乱しそうな勢いよね。とても目が泳いでいるわ」

「……大丈夫?」

「大丈夫かどうかちょっとわからないわね。ただ、物凄く高速で色々と考えているんじゃないかしら。彼、私達の声が聞こえていないみたいだし」


 何か2人が言っているような気がするけど、それよりも自分の事だ。

 えっと、んっと、とりあえず落ち着こう。これはもう、無理矢理にでも納得するしか無い。俺はここに居る皆の事なら、多分顔を直視しても大丈夫になったんだって。

 果たしてそれが良いことなのかどうなのかは、俺自身まだ判断出来ないけど。


 ちらりと一瞬だけ彼女達の方を見る。そして直ぐ目をそらす。


 うん。どうやら吐き気がこみ上げてきたり、頭痛がしたりという事はないみたい。

 え、えぇ……でもいつの間に大丈夫になったんだろう? 正直、この体質は治るとも思ってなかったし、そもそも治すつもりすら無かったから。本当にびっくりしてるんだけど。


 あぁでも、皆そんな顔をしてたんだ。うん、俺が今まで感じた嫌な目じゃないみたいだね。

 それにしても、なんだろうなぁ。お爺ちゃんやお婆ちゃんの視線を思い出すような目なんだけど。えっとなに? 何で俺はそんな目で彼女達に見られているんだろう。


 まぁでも、悪い物は一切感じないから。うん、これは問題無しという事で良いかな。

ブックマークに評価ありがとうございます!(*´▽`*)




此処から先、補足や余談が嫌な人は読み飛ばしてください。





ようやく! 景が、彼女達の顔を見ることが出来るということを認識しました。

えぇ、今まで全て無意識だったりしたんですよね。てか、本人が見ていてもその事実を何処か脳の片隅に追いやっていました。

認識していたけど、認識していません! と脳が勝手に処理してたんですね。


ですが今回遂に意識したということで……遂にあのタグのスタートラインに立てたのではないでしょうか(・∀・)


因みに、景君は本人が思っているほど身長は高く有りません。童顔なのも……まぁ、微妙に栄養が足りてないんですよねぇ。家庭の理由で。

ただ、島に来たことで成長速度が復活し始めております。

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― 新着の感想 ―
[一言] 待ちに待った!!ハーレムタグ! まぁ、顔が見れるって初めて認識したよってだけだからまだまだ先は長いけどもっちーにとってはものすごく大きな一歩やな!
[良い点] ハーレムタグさんの出番ですか!
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