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両手を挙げてヒャッハァァァァァァ! とは言えないよ。

 ――キュォォォォォン!!


 方向を反転して何をするつもりだろう? と思った途端、俺の体にはものすごいGが! 慌てて船に備え付けてある手すりを掴んだけど……もし命綱を付けていなかったら、確実に湖へと飛ばされていたと思う。


 ちゅめらが叫びながらやったのは、バンカータートルがやったブレスによる移動。あの水鉄砲のジェット推進。

 正直、今までやった所を見たことがないから、出来るとは思っていなかったんだよね。でも、今こうして使えているのを見ると、吃驚させたくて温存していたのか、はたまたコレを使うのはかなりのリスクがあるかだと思う。


「とは……言え……これ、きつい」

「後ろ、向きに、移動だから……いいけど! Gに耐える……の、大変……ね」


 かなりの高速移動……いや、飛行していると言っても良いかもしれない。何せ、ちゅめらは水面ぎりぎりの場所を滑る様に飛んでいるんだよね。

 ただこの状況。俺達は全く攻撃ができずに手すりを掴んで耐えるしか無い。なので今攻撃を受けたら不味いんだけど、トビウオ達の速度では追いつけないのか、距離は確実に離れている。だけど、例外ももちろん居る。


 例外というのはイカだ。


 やつもまた考えていた通りにジェット推進ができるらしく。ちゅめらに追いつけ! と言わんばかりに水面を飛行して来ている。

 このタイミングで攻撃できたら! と思うんだけど、手を今この状況で離すのは無理だからね。



 グングンと島へ近づいている。とは言え、後方へと移動しているために、俺達にはどれぐらい近づいたかなんて全く分からない。

 ただ少しずつではあるけど、イカが距離を詰めてきているのだけはしっかりと確認できる。うん、微妙に怖い光景だね。

 恐らくだけど、やっぱりこの移動速度の差も、荷物を背負っているのかいないのかという事なんだろう。


 しかしあれだね。折角イカが無防備な姿を晒しているのに、こちらからの攻撃が出来ないというのは実にもどかしい。

 多少の事は気にせず攻撃しちゃえよ! って思わなくもないけど、もし片手で手すりを掴み、片手で杖を持つなんて真似をしたら、体勢は崩れるだろうし、下手をしたら杖を手放してしまう。

 それに魔法を撃った場合。ちゅめらは空を飛行しているんだ。一体どんな影響があるか分かったものじゃない。


 イカに対して、ちゅめらに水のブレスを当ててもらうという手もあるかもしれないが、イカがうまい具合に少しだけ位置をずらしているんだよね。直進しようと思ったら、間違いなく命中させられない位置取り。実に賢い。


「……ちゅん吉、は……ダメか」


 ちゅん吉は鳥型のモンスターと戦っているために、イカに対して何かをするというのは無理そうだ。となると、このまま島までイカとチキンレースという事になるのかな? それって結構厳しいんだけど。


 いくらこの移動方法が速いとは言え、どこかで普通の航行に戻る必要があるからね。てか、戻らないでこのまま上陸をするとか絶対に無理。島の地面へちゅめらと共に船ごと激突する事になるから。

 ちゅめらは精霊だから大丈夫かもしれないけど、船は間違いなく大破するだろうし、その船に乗っている俺達がどうなるのか……うん、背筋が凍るなぁ。


 とは言え、このまま通常航行に戻るとなると、間違いなくイカが俺達を追い抜いて少しだけ先行した状態になるだろうね。

 となると、俺達は前にイカ、後ろからはトビウオとタコが追ってきている状態になってしまう。挟み撃ちの完成だ。


 果たして、島の地面へ激突するのと、挟み撃ちにあうのはどちらが良いだろう?


「……無理」


 だよね。だからこそ何とかしてイカを撃ち落としておきたいんだけど……普通に攻撃するのは無理がある。


「ウォールは?」

「位置指定……無理ね」

「ショット、ガンじゃん!」

「落とし……ちゃうよ!」


 それぞれ思いついた事を口にするけど、どれも却下と言うか出来そうにもないみたい。

 秋山さんのロックウォールならと思ったけど、どうやら移動スピードが速すぎて壁を作るのが厳しいらしい。ソレと同じ理由で、サンドゴーレムも召喚出来ないのだとか。


 と言うか、このスピードが出ているためなのか。皆の口数が冬川さんレベルになっているんだよね。まぁ、ジェットコースターに乗り、トップスピードが出る坂を下っている最中に会話をしているようなものだから、会話ができているだけでも上出来なんだけど。


 とは言え、そんな微妙な会話ではあるけど、お互い思いついた事が全く出来そうもないのでギリギリの戦闘をするか、衝撃に耐えるしか無いかと思っていたら……。


「……爆弾、投げ」


 この短い会話のオリジナルと言える冬川さんがポツリと呟いた。


 爆弾を投げる……確かにソレはと思うけど、正直この状況で上手く投げる事が出来るとは思えない。

 だってこのスピードで踏ん張る事が厳しい環境だよ? どうやったら爆弾をイカにぶち当てられるのか。


 爆弾であれば、間違いなく船へ影響を与えることなく攻撃も出来るし、アイテムを手放しても問題無い。と言うか、そもそも投擲道具だから手放す前提だしね。

 なので、最初に考えていた攻撃ができない理由というのはクリアされている。


 一応、アイテムポーチに手を突っ込んでをがさごそと道具を取り出そうとし……そこでとあるアイテムに手が触れた。


「あ、これなら」

「何かあった?」

「ネタで……作った、んだけど」


 正直コレなら、命中させることに集中する必要も無い。だってこれは〝置く〟だけで良いから。


――――――――――――――――――

 キャスト・ネット(普通・爆発(小))


 特徴:捕獲・爆発


 一体なにを思ってこんなものを作ったのかしら? バカなの? バカよね。

 

 ぽいっと投げ捨てることで花が咲くようにネットが展開されるのよね。それで、相手を包み込むんだけど……なんで爆弾を仕込んだのかしら? そんなのを仕込んだら相手が爆発四散して、捕獲する意味がないじゃない! 投網にした意味が無いわよ……。

 せめて電撃を流す程度にしたら、まだ理解出来るものを……本当にアナタって阿呆なのかしら?

――――――――――――――――――


 システムに超辛口で言われた道具なんだけど、別にこれの何処に問題が有るとでも? ロマンだよねロマン。包み込んでも爆発は芸術でしょう。


 とまぁそう言いつつも、使う予定が殆どなかった道具なんだけど、今この場で使わずして何時使えば良いのかっていうぐらい、最高のタイミングだよね。



 という事で……この投網(爆)をイカの進路上へと投げる。

 すると球体状になっていた投網が、大きく円形に広がった。そして広がると同時にイカが投網に接触。

 イカは瞬く間に投網に絡まってしまうが、ただ其処で終わるわけじゃない。説明に書いてある通り、この投網は爆弾を沢山セットしてある。


 ドンドンドドン! と、イカに触れた爆弾が不規則に爆発の連鎖を起こしていった。


 イカを撃墜出来るほどのダメージでは無かったようだけど、体のアチラコチラで爆発が起きるというのは奴の動きを防ぐのに十分だったらしい。

 奴は爆発から逃れるような動きを見せる。するとどうなるか? 勿論、ジェット推進の方向が狂うわけで……。


 イカは錐揉み状態になりつつ、湖へと落ちていった。


 そりゃそうだ。網に囚われながら、あれだけ触腕を振り回せばねぇ。




 イカを墜落させた後少しして、ちゅめらは水ブレスによるジェット飛行をやめ通常航行へと戻った。


「きつかった……何というか、戦闘しているときよりも体力を消耗した気がする」

「船に屋根や窓が欲しいわね……オープンの状態だと体の負担が激しいわ」

「心なしか、ちゅめらもキツそうじゃん」

「……がんばった」

「きゅぁ……」


 ゆっくりとした移動スピードで航行するちゅめら。

 なるほど。どうやらこの移動方法は、ちゅめらの体力や魔力をかなり消耗するみたいだね。という事は、逃げるための切り札みたいなものだったのかな。


「まぁ、追いついてきそうなモンスターも居ないみたいだし、このままゆっくりと上陸しようか」

「「「さんせーい」」」

「……ん」


 何とか湖を渡ることが出来たということで……良いのかな?

 てか、俺達はちゅめらが居たから良いけど、普通だとどうやってこの湖を渡るんだろう? 何か違うルートでも有ったのかな。

ブックマークに評価ありがとうございます!ヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪



ちょっとした捕捉。


錬金術製の投網ですので、投網を投げるのがかなり簡略化されております。

それこそ、野球のボールみたいにぽいっと投げて問題ない仕様。ある意味チートですね。

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[一言] ちゅめらに、ゴーレムの羽と尾翼付けたら自由に飛べそう
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