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現れたのは……

 関わりたくないけども、こうして出会ってしまったからには対処しなければならない。

 恐怖でうるさい心臓の音に「黙れ!」と念を送りながら、俺は相手の事を観察しつつ鑑定もしておいた。


――――――――――――――――――――――――――――

 女子生徒A

 ボロボロの制服を着たクラスメイト。名前は……あれ? どういう事!? 表記できないよ……。

 と、とりあえず! 危険な目にあって逃げて来た娘。森の中を必死になって移動して来たみたい。

 助ける? 助けるよね。助けようよ!!

――――――――――――――――――――――――――――


 ……助けませんが?


――――――――――――――――――――――――――――

 女子生徒B

 あうあう! やっぱり名前が表記出来ないよ……なんなの!?

 ねーねー、ほら、困ってるよ? 足に擦り傷とか出来てるじゃない! ね、助けよう?

――――――――――――――――――――――――――――


 ……だが断る。


――――――――――――――――――――――――――――

 女子生徒C

 システムに介入してるの!? 名前なんて知るつもりなど無いって事?

 ほらほら、彼女なんて目に涙を浮かべているよ? 可哀想だと思わないの?

――――――――――――――――――――――――――――


 ……思わん。


――――――――――――――――――――――――――――

 女子生徒D

 君には人の心というモノが無いのかあああああああああ!!

 つべこべ言わず助けましょう!

――――――――――――――――――――――――――――


 やだ。こんなに人が集まったら、俺の心が休まらない。

 今すぐ俺は彼女達にUターンする事を願う! 出ないと……吐くぞ?


 鑑定の文章と何やらやり取り? みたいなことをしていると、なんだろう、こうパニックになりかけた頭が急速にスーンと冷めて来た。

 今なら心を穏やかに、彼女達に「お帰りください」と言える気がする。


 ただ、俺の顔色がコロッと変わった事を感じ取ったのか、もしくはその状況から拒絶されるだろうことを理解したのか、彼女達は俺が口を開く前に俺へと声を掛けて来た。


「お、お願いします助けてください」


 一人が震えながらもそう口にすると、他の娘達も「お願い」と声を出しながら頭を下げて来た……。

 ぐぬぬ、此処で断ったら俺が完全に悪役になるじゃないか。いや、悪役になっても良いのでは? いやいや……と、脳内で思考がぐるぐる。まるで天使と悪魔が殴り合いをしているかのようだ。


『景よ……貴方の心のままに、為したいように為すのです』

『クケケケケ! 此処は手を貸して恩を売るのが最善だろう? 悪魔の俺が助けろって言っているんだ。お前は彼女達に手を差し伸べれば良いんだよ』


 あれ? 天使が〝切り捨てろ〟と言い、悪魔が〝助けろ〟と言っている? これ、普通逆じゃないのか? いやいや、悪魔はどう考えても後で利益を回収しろと言ってはいるんだけども。


 ……って、俺は一体どんな幻覚を見ているんだ。

 少し前に脳が覚めたかと思ったけど、実はストレスでショートした後だったのだろうか? まぁ、それは良い。俺の心は変わらんよ。


「お断りいたす」


 ……げ、てんぱって変な喋り方になってしまった。

 とは言え、正確にお断りをしたんだ。相手にもしっかりと通じただろう。


「え、あ、そ、其処を何とか!」

「私達逃げて来たの……もうあそこには帰りたくない!!」

「お願い望月君! もう、森の中も嫌なの……」

「……助けて」


 ぐっ……だが、これだけの人数が近くに居ると思うと、俺がきついんだよ。

 てか、俺の苗字を知っている人がいたのか……こう、誰も知らないと思っていたんだけどな。学校では完全な空気になるように努めていたし。


 そんな事を考えていると、ピロンとスマホが鳴った。なのでスマホの画面を見てみると……。


――――――――――――――――――――――――――――

 イベント! クラスメイトの女子を助けよ!!

 内容:助けを求めて来たクラスメイトに手を差し伸べよう。

 報酬:スキルとスキルポイントを上げちゃうゾ☆

――――――――――――――――――――――――――――


 ……システムめ。情に訴えるのがダメだとみれば、今度はニンジンをぶら下げてきやがったか。

 ふっふっふ……だが、俺はそんな餌に釣られはしない!




「あ、半径5メートル以内に絶対入らないと約束するなら、あっちのスペースを使っても良いぞ」


 うん、別にスキルやスキルポイントに目がくらんだ訳じゃない。そう、ただ俺の中で悪魔が勝っただけだ。


『ケッケ! ここでスキルとスキルポイントをゲーットして、更に恩を売った上で馬車馬のように働かせる事が出来る人員ゲットだぜ!』


 うん、何やら脳内で天使を踏みつけた悪魔がささやいてくるが、俺はそんな事これっぽちも考えてないぞ?

 ほんの少し、拠点開発のスピードが増したり、毒見役や薬の実験体が増えたとか、本当に考えて無いからな?


 だから、其処の女子。そんな嬉しそうに頭を下げながら「ありがとう」なんて言葉はいらない。


 ルールは一つだ。絶対に俺の近くによって来たり、必要なこと以外は声を掛けてこない事。って、これだと二つか? まぁ、これさえ守って貰えるならどこで何をしていても良い。

 出来るなら、俺の目に入らない場所でと付け加えたいが……海辺だからそれはどうしようもないだろう。


「って、忘れてた。そこな女子A、この砂浜はトラップゾーンだから、下手に海に行かない方が良いぞ」

「わ、私Aじゃないんだけど……って、トラップ?」

「刺激を与えれば、全身火だるまになるトラップ。じゃ、気を付けて」


 告げるべき事は告げて後はサッと急いで去る。数人の前だからな、クールに去るなんて俺には出来ない。


 これがなぁ、せめて男子で一人か二人だったらまだ良かったんだけど。女子四人はもう拷問だ。

 はぁ、俺の安息は一体どこへ……これは早々に拠点を移動するか、しっかりとした壁のある家を作らないとな。俺にとっては男子と言う意味では無く、マジで猛毒なんだよ……トラウマががががってなるし。


 でもこれ、助けなかったら助けなかったで、後々「お前見捨てただろ!」って槍玉に挙げられるしなぁ。

 何この、行くも地獄引くも地獄的な状況は。俺が一体何をしたんだっていうんだ……こんな試練みたいな真似をしやがって。

 折角、あの蜘蛛以外の事であれば天国と言える環境だったのに。


 あぁ……女子のキャピキャピとした声が聞こえてくる。うぅ……微妙に頭が痛い。

 これは選択をミスったかな? 新スキルやスキルポイントに人手を考えてしまったのは。

 とは言え、それらが魅力的かどうかと言われたら魅力的な訳だし……。ただ、助けた方がデメリットよりもメリットが大きいのは間違いないのだけど。


「その為に払う犠牲が、俺の精神ポイントと頭痛ともなればなぁ……」


 思わず遠くに見える水平線を眺めてしまう。

 誰かが見れば、何で黄昏ているんだ? というような光景だろう。……まぁ、見ていたとしても女子四人しかいないが。


 とは言え、此処はもう決断をしてしまったんだ。

 ならそれを受け入れて、上手く利用していくしかあるまい。


 あぁ神様。このクラスメイト達〝だけ〟を救助しに来てくれる人でも現れませんかね? そうしたら、俺は此処でぬくぬくと錬金術で遊んでいられるんだけどな。

 ただまぁ、そんな都合の良い話など無いか。救助される時は間違いなく俺も一緒だろうし、そもそも救助が来る事なんて既に諦めているからな。

 だから、彼女達を追い出そうと思ったら、自ら此処を脱出する術を探さないといけない。そして、その為には島の攻略が必要になると思う。……どう考えても先が長い話だなぁ。

ブクマや評価ありがとうございますですよ(((o(*゜▽゜*)o)))


ここに来てようやく主人公の苗字が発覚。ただし、女子の名前が……残念な事に出てきません。鑑定仕事しろ。

システムちゃん「しょうがないじゃない! なんか知らないけど、知る事を拒絶してるんだもん! 私悪くない!!」


と言う事で、女子達に関しては女子達の視点の話が上がるのでそちらで……。

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― 新着の感想 ―
[一言] もう少しソロで頑張って欲しかったけど ソロだとあの蜘蛛の攻略どうするんだって話だし 他の人間が来ないと話が進まず 望月君の成長とトラウマ(PTSD?)の改善にも繋がらないのも分かります …
[一言] 何となく読み返してみたけど 景の天使が某RPGの邪神様ですね?(笑 「汝の為したいように.....」
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