今更ですよ!
悩みに悩みに悩み抜いて、俺は錬金術のスキルをポチっとタップした。
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ステータスだよ!
ジョブ
アルケミスト:Lv2
スキル
錬金術(初級):2
鑑定(初級):0
魔法(全属性・初級):0
残りSP0
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と、こうなった訳だが、これだけならばまだ何も言う事は無かった。そう……問題というか文句など無かったんだ。
今、俺は声を大きくして文句を言いたい! そしてその文句と言うのは錬金術にスキルを振った時に出てきた表記の内容についてだ!
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錬金術(初級)
◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇
レシピブックが解放されました。
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ちょっと待てと言いたい。
なんで最初から無いのかと、なんでスキルを2つ振った後なのかと! てか、錬金術自体もあの簡易錬金セットが無ければほとんどできない訳で、だというのにポイントを1つ振る必要があったとか!
これが魔法であれば、最初から普通に使えたぞ? 鑑定もだ! なんで錬金術だけがこんな扱いなんだよ……いやいや、もしかしたら魔法も鑑定もスキルポイントを振ったら化けるのだろうか。
「とにかく、レシピブックが解放されたんだからそれを見てみるとするか」
レシピブックは錬金台の収納スペースを開けた場所に仕舞われていた。なので、俺はそのスペースから本を取り出し台の上へと置いた。
レシピブックの最初のページを開いて確認してみる。すると其処には錬金術のやり方などがしっかりと書かれていて、それでまた思いっきり凹んでしまった。
俺、必死にどうやったら錬金術を使えるんだろう? って色々と模索したよなぁ。この本には目に注意って書かれてるけども、既に閃光でダメージを受けた後なんだよ。
魔力のチャージが必要とか……もう、本当に最初からこの本を用意しておけよ。
このやり場のない怒りを台にぶつけたい。台バンを思いっきりしたい! だけど、そんな事をしても自分の手を痛めるだけなので、さっさと次のページを見る事にした。
「えっとなになに? ポーションの作り方……っと、やっぱりポーションはあるのか! これもまた常備しておきたいモノだな」
しかし、レシピブックの説明はなんというか、実にふんわりとした書き方がされている。
一体誰が用意したんだこれ……と思ったが、そもそもステータス画面やら鑑定の説明がいい加減なのを見るに、きっと同一人物が用意した物なのだろう。と言う事は、其処まで期待するなと言う事だろうか?
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ポーションの作り方☆
乳鉢に千切った薬草を入れて、やさしくごりごりしよう! 当然魔力を流すのは忘れずに。
乳鉢にたまった薬草の粉末を布で包んで、お鍋の中へぽーい! あ、この時に布の中の粉末が外に出ない様にしましょう。
後はぐつぐつと煮込みながら杖でかき混ぜていくとあら不思議。中の液体が緑色に変化! これで初級ポーションの出来上がり♬
あ、布の中の粉は他のアイテムの材料になるよ♡
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作り方はわかるけどさ……こんなふざけた説明文ってある?
所々擬音だし! なんならリズムにのって歌い出しそうだし! 最後にハートマークをつけるな! 一体誰にアピールしてるんだよ。
と、まぁいつもながらに突っ込み要素満載の説明文だった訳だけども! これで、正しく錬金術が出来るというかポーションが作れるわけで。
なんなら、他のレシピも色々と書かれていて、随分と俺は遠回りしたんだなと理解出来るモノだった。
きっとこれ、最初からあのチュートリアルモンスターを討伐して、一気にスキルポイントを二つ振る前提だったんだろうなぁ……。
となると、魔法やら鑑定に浮気した者はどうするんだろうな? 当分、手探りで錬金術をやっていけと言う事だったのだろうか。
「とは言えこれで錬金術が本当の意味でスタートした訳か」
ペラリペラリとレシピブックを捲って作れるものを確認していく。
その中には当然だけど、石レンガの作り方やボムベリーを使った道具の作り方も書いてある訳で……あぁ、自分で色々と試した事がこんなにも詳しく書いてあるなんて。
少し落ち込みながらも、新しい発見がとても面白くて……思いっきりレシピブックを読み耽ってしまった。
だからだろうか。時間が掛かり進んでしまい、本日の予定が大幅に狂ってしまった事に気が付いたのは、太陽が西に向かって随分と傾いてしまった後だった。
「げ……もう時間的には4時ぐらいか? こりゃもう探索出来ないじゃん」
今から出発したところで、探索可能時間は一時間ぐらいしか無いだろう。
日が落ちてしまえば辺り一面は真っ暗になってしまい、歩く事など儘ならなくなってしまう。なので、撤退時間も考えると、実質的には一時間も探索は出来ない。
これは、ウサギの肉を確保出来ていて本当に良かった。
探索出来ないと言う事は、食べる事の出来そうな物を探るのは無理と言う事。
ココナッツやお菓子ならあるが、なるべくソレらは温存しておきたい。
一応、塩と水があるので、数日はそれで凌げるとは言えど、やはり肉などが有ると無いとでは体力の回復に差が出来るというもの。
ウサギの肉……丸ッと一つ、昼に食べ尽くさずにとっておいて正解だったな。
そんな訳で夕飯はウサギのこんがり肉と、昼と全く同じメニューではあるが其処に文句はない。
竹串に刺したウサギ肉を、そのまま食らっていく。
本来なら保存食として干し肉なり燻製なりしておきたいのだが、現状そんな余裕は無い訳で……もう少し大物や数を確保出来ればと願わずにはいられない。
そんな事を考えながらモグモグとウサギの肉を咀嚼していると、何やら森の方からガサゴソと蠢く音が聞こえて来た。
スッと音を立てずに石槍を手にし、音がする方へと穂先を向けた。
ゴクリとつばを飲み込む。まさか、あの蜘蛛が此方まで移動して来たのだろうか? と言う不安が押し寄せる。
果たしてあの蜘蛛相手に俺は戦えるのだろうか? 確かに、この場所であればトラップゾーンへと蜘蛛を誘導する事が出来るだろう。
しかしそれは、相手が一気に仕留めてこなければの話。あの蜘蛛の跳躍を思い出すと、とてもでは無いが逃げ切れるなんて思えない。
近接や魔法で如何にかなるだろうか? それも厳しいモノがあるだろう。それこそ、腕や足の一本は犠牲にしないと魔法を撃ち込むなんてできないと思われる。
来るな! あっちへ行け! と、実に逃げ腰と言える考えをしながら、それでも石の槍は音のする方向へ。
ガササ! と、近くの木々が一際大きな音を立てたかと思うと其処からは……。
「へ? 人間?」
現れたのは人間。それも数人いる。
これは不味い。相手の数的に、色々な意味で接近されたくない!! 下手に接近でもされたら、折角摂取した栄養が全部リバースしてしまう!
「く、来るな!」
石の槍をぐっと突き出して、相手が接近してこない様にと威嚇する。
なんなら人が相手だろうが、魔法を撃ち込む事も、火炎筒を投げ込む事だって厭わない!
そんな、絶対に近寄るな! と言う意志が相手にも感じ取れたのだろうか? 先頭に居た人物は必死に手を上げながら「た、戦うつもりなんて無いよ!」と訴えながらアピールしてくる。
ただ、訴えられたところで近くに来られたら困るから、そのまま停止してもらうとしよう。
そして、此処から何処かへと行って貰うとしようか? あ、でも、人に折角出会ったのだから色々と情報は落してもらった方が良いだろうか? でもなぁ……これは、かなり悩ましい事で、俺にとっては相当な試練だよな。
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さて、漸く人間と初遭遇です。
とは言え、主人公は人との接触に難があるタイプ……さてはて、一体どうなっていくのか。
そして、この人たちは一体なにものなのか。まぁ、それは次の話で分かる事なのですが。