塩湖って
多少の防衛力と最低限の生活空間の確保は完了という事で、俺達は第3フィールド攻略の為に使う拠点をゲットした。
拠点には畑やら鳥小屋に牛舎を作る必要が無いからね。だから本当に最低限というか、拠点そのものがかなり狭い。
それだと拡張性がとなるかもしれないけど、秋山さんの魔法があるからね。拡張なんて後でいくらでも出来るんだよね。
「次にやることは探索と鑑定かなぁ」
「目の前の湖以外は特に何か目に付くものはないと思うのだけど?」
「いやいや、塩湖だからね。もしかしたらなにか面白い鉱石とかがあるかもだし」
よく言われるのはやっぱり岩塩かな。それとよく聞くのはリチウムかも。なんか利権だとかとある国が南米の採掘で参戦したとか。
とは言え、俺達がリチウムを使える訳じゃない。だって電池の材料だよね。発電もしていないのにどうやって使えと……という話になるんだけど、塩湖にあるのはリチウムだけじゃない。
そもそも資源の宝庫だからね。今直ぐ使えるものと言えば……何が有るだろう?
「トロナじゃないかしら? 食品添加物や洗剤を作ったり出来るわよ」
「鉱石がいっぱい取れるってのは聞いたことが有ったけど、何が有るか知らなかったよ。俺が思いつくのは目の前に広がる水の利用法ぐらいだったし」
塩湖だからね。その水はかん水と言われるもの。だから、小麦さえあればラーメンが作れるんだけど……残念な事に、現在麦が発見出来ていないんだよなぁ。
「でも、そういった鉱石を採掘しようと思ったら、どこか洞窟とかでも探さないといけないかもしれないわね」
「そこらに落ちてたりは?」
「しないと思うわよ。確かに表層に出てきている物もあるかもしれないけど、しっかり確保しようと考えたら、やはり地中を目指す必要があるかしら」
もしくは水中かな。
大規模な露天掘りでも出来ればって話になるかもしれないけど、それはそれで得策とは言えない。そもそも、工業製品を大量生産する訳じゃないから、そこまでして採掘をする必要がないしね。
ただ、やれないとは言わない。
秋山さんがちょっと無理をすれば、多分出来てしまうんだよなぁ。露天掘り。
「やらないわよ? 折角の光景を破壊したくないもの」
「やってとは言わないから。もしお願いをするとしたら、ゴーレムにブラマイをって感じかなぁ」
ブランチマイニング。略してブラマイ。
クラフト系のゲームで資源の確保によく使われる方法だけど、ぶっちゃけ時間が掛かる。リアルでやろうものなら発狂するんじゃないかな? 暗いし、崩落や爆発事故とかが起きるし。
やってることと言えば炭坑の坑夫だもんなぁ。
坑夫さんとか、事故に巻き込まれるという話以外にも、昔はマスクの着用が義務付けられていなかったから、それで病気になったりしたっていうし。ソレ以外にも幻覚を見たりとかなんだとかという話も……中には幽霊が! なんて噂も沢山ある訳で。
「諸々の問題を一気に解決出来るのがゴーレムだよねぇ」
「確かにゴーレムを使えば四六時中採掘をさせられるでしょうけど……私の魔力はどうなるのかしら?」
「其処が問題だよね。専用の錬金人形を作れば良いかもしれないけど、崩落に巻き込まれても破損せずに、掘って戻ってくることが出来るスペックじゃないとなぁ」
そう考えると、やっぱり魔法で一発採掘が一番楽かな? 露天掘りじゃなくても、何かしらの方法があれば手を出しても良いかもしれない。
「って、1つ有るじゃん! 水中採掘をする方法が」
「え? 何か有ったかしら?」
「春野さんの魔法で水中呼吸が出来るってやつ。あのカメを倒した時に覚えてたはずだよ」
もしかしたら水中なら普通に、鉱石がこんにちはと顔を出している可能性がありそう。
そんな期待を込めて発言してみたけど……まさかカメも夢には思うまい。自分の討伐で手に入れた魔法が、そんな使い方をされるなどとは。
「近い場所ならモンスターもいないし、景観を壊す事もないし、崩落事故に巻き込まれる事も多分ない」
「軽く浚って行くだけだものね」
「もしかしたら予想外のレア物があるかも?」
もしかしたら海につながる道とかもあるかも? あぁでもそれは、こちら側にはないかもしれないね。あるとしたら、多分だけど反対側じゃないかなと思う。
そしてその道を探そうと思ったら、モンスターの群生地帯を突破しないといけないよね。
「例え水中に道があったとしても、反対側にいったらいつもの壁とフィールドを移動する穴があるかもしれないけど」
「探す意味があまりないわね」
これは地上に移動ルートが無かったらという程度で考えておくのが良いかな。
もしかしたら水中にと考えておけば、地上に移動用の横穴がなくても焦る必要が無いしね。
「ふと思ったんだけど、ムクロジがあるからトロナって必要かな?」
「え、望月君? 本気で言ってる? トロナと言えば重曹の材料よ」
重曹って軍の階級か何かかな? って、そんなのが材料になる訳がないか。
「んっと、食品添加物にも使えるって言ってたけど、重曹って何に使うんだっけ? 台所用品とかで、口にしてはいけません的なのが書かれているイメージなんだけど」
「確かにそういった商品もあるわね。てか重曹よ? 掃除用品以外にも、炭酸水を作ったり、お肉を柔らかくしたり、アク抜きに使ったり、パンケーキの材料でもあるわよ!」
ググッと拳を握りながら力説する秋山さん。
いや、最後のパンケーキを誇張しすぎじゃないかな? 多分かなり食べたいという事なんだろうけど、残念ながら小麦もはちみつも現状見つかってないよ。
「かん水を知っていて重曹を知らないだなんて……って、重曹については前にも説明したわよね?」
「なんでだろうね? 説明に関しては、色々ありすぎてド忘れしちゃってたかな」
ハハハ……と苦笑いしか出来ない。
自分でも何で、かん水だけは知っていたのだろうか謎だしね。こう、ネット上で誰かから聞いたとかそんな感じだろうけど。
「あ、後はお口のケアにも使えるわよ。歯磨きとかうがいとか」
「へぇ……かなり万能な素材だなぁ。となると、やっぱり採取するべきかな」
「後はクエン酸があれば完璧ね! さっき上げた炭酸水作りに使うものなのだけど、飲む以外にもバスボムを作ることだって出来るわ」
「バスボムって……なんぞ? 風呂が爆発でもするの?」
「……それも知らないのね。バスボムっていうのは、炭酸水を作るって事を考えれば分かると思うけど、泡風呂になるのよ。色付きなんてのも販売されていたわよ」
簡単に言うと炭酸風呂ってやつなのかな。
ただ、俺自身が炭酸風呂なるものに入ったことがないから、一体何が良いか全く予想ができないんだけど。
秋山さんのテンションが上がっているのを見ると、かなり心地よいお風呂なのかもしれないなぁ。
「でもさ。小麦と一緒でクエン酸の材料は発見されてないけど?」
「そ、そうなのよねぇ……」
俺の発言で、あからさまに肩を落とした秋山さん。そ、そこまでがっくりと落ち込むようなことなのだろうか……。
「あ、でもほら。クエン酸の方は小麦と違って、木が果実を付けたら確保出来るかもしれないし」
……なんで俺は慌ててフォローをしているのだろう。まぁ、落ち込んでいるのを見るよりは良いけどね。可能性はある訳だし。
「そ、そうよね。クエン酸の作り方がわからないのだけど、柑橘類を手に入れさえ出来れば可能性はあるわよね」
もしかして、冬川さんが食に命をかけているように、秋山さんはお風呂に命を掛けているのだろうか?
そう言えば、石鹸とかを作った時に一番反応していたと、冬川さんからリークされていたような……。
ともあれ、トロナか。これはぜひとも採取しないとね。
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実を言うと、クエン酸はすでに作れるんですよね。ただ、彼らに知識がないだけで……うん、実に残念な状況です。
と言うも、クエン酸の材料は〝かんしょでん粉〟またの名を〝サツマイモデンプン〟です。
その〝かんしょでん粉〟を発酵法で精製する事で、クエン酸が作れるわけなのですが……こんなの、商品の原材料をチェックしている人や、気になって調べている人以外知らんだろう! という話ですよね。
むしろ、レモンなどの柑橘類が原材料では? と思っている人もいるのではないでしょうか。