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閑話・約2週間

 学生を乗せたバスが失踪したというニュースだが、これはまだまだ世間でホットな内容であった。

 テレビでは偉い肩書を持つ学者などがあれやこれやと考察を述べ、ソレに対してコメンテーターやゲストなどが質問を飛ばす。そんな内容がお茶の間では日常の番組と化していた。

 当然その内容は様々で、〝集団で隠れている〟と言う者もいれば、〝やはり集団拉致〟ではと返す者もいる。……と、実際にはこの事件が発覚した3日目からほとんど内容が変わっていない。変わったモノがあるとするならば、それは騒いでいる人の顔が増えたという事ぐらいだろうか。



 しかしそれは、世間一般での話。



 実はこの集団失踪の話の裏で、更にとんでもない事件が起きていた。

 その内容とは何か? それは、小笠原諸島と大東諸島の間におよそ沖縄ほどの島が突然現れたというもの。


 普通であればありえない話だ。

 現代社会の技術力に於いて、その様な場所に島があるといった事を見逃すことが有るだろうか? と考えた時、それは間違いなくありえないと言える。

 では、この島は何なのだろうという話になる。何せこの島を発見したのは昨日今日といった話だからだ。そしてそうである以上、この島は突如現れたとしか考えられない。


 因みに、島を発見したのは海上公安局で、パトロールをしている最中に不自然な映像の乱れを発見、これを確認しに行ってみれば新島を発見したという流れであった。



 ただし、島への上陸は出来ていない。



 勿論上陸もだが、航空からの撮影なども行っている。

 しかし、撮影したモノは全て映像が乱れており確認が取れない。島に近づこうとすれば、どういう訳か飛行機でも船でも必ず迷う。

 いやいや迷わないだろ! とツッコミを入れたくなる内容ではあるのだが、何故か、いつの間にか、島に接近した機体は島の反対側へ移動していたりする。


 そのために、この内容は極秘とされ政府関係に海上公安局と海上自衛隊のみに知らされているのだとか……他国が知っているかどうかは謎だ。

 ただ、もし知られているのであれば、幾つかの国が主権を主張するだろうという事から、恐らくはまだ知られていないものと思われる。



 しかし、これは政府も頭を抱えた。

 何せこつ然と現れた上に上陸が出来ないのだ。これでは一体何がどうなっているのか調べようがない。

 出来ることであれば、数多の目が失踪事件に行っている間に、この島について調べ尽くしておきたいのが本音だろう。が、その為に行った航空撮影や上陸作戦が失敗しているのだから、これで頭を抱えるなと言う方が無理な話だ。



 〝失踪事件〟と関係があるのでは? という者も居るのだが、距離を考えると無理がある主張なのでスルーされていたりする。……その話が通ることがあるなら、それはオカルト的な話が実証された時ぐらいだろう。

 とは言え、島に上陸出来ないことや、不自然に映像が乱れることを考えると、あながちオカルト的な要因も有るのでは? と、口では否定をしつつも胸の奥で考えていたりする者は結構いたりするのだとか。




 ともあれ、この島に関しては後々に大きな波紋を呼ぶだろう。

 そうであるからこそ、なんとしてでも上陸を! と考えているのだが、その方法は現状だと何も思いついていない。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 世間が面白おかしく弄っていると言っても過言ではない〝失踪事件〟だが、その身内ともなればまた話は別。

 学生の両親達が集まり、あれやこれやと話し合いなどをしていたりするが、その表情はお通夜モードである。


 それが親であれば普通の事なのだが……世の中にはどうしようもない者もいる訳で。




 暗い表情をしながら扉を開き家へと入っていく2人の男女がいた。

 しかし彼らは家に入り扉を閉じた瞬間、がらりとその表情を変化させた。


「いやだわぁ。本当にジメジメと……」

「そう言うな。これもアピールとしては必要だからな」


 などと、どう考えても学生の親とも思えない発言をする男女。


 言わずもがな、これは景の両親である。


 彼らは「あぁ、疲れた」と言いながら、リビングにあるソファへと座り込んだ。それはもう、足を投げ出しながらふてぶてしい態度で。

 誰かが見れば「お前たちは!」と驚愕するような光景だろう。しかしこの場には誰も居ない。なので思いっきり気が緩みこういった行動が出来ると言えるのだが。


「本当。嫌になるわ……どうして時間の無駄だと分からないのかしら」

「良いじゃないか。私達がポーズを取るだけで、子供思いの両親というイメージが世間一般に付くからな。印象操作というのは大切だぞ?」

「もっと楽しい事に時間を掛けたいのだけど?」

「今は無理だ。外出した際に馬鹿騒ぎをしてみろ? 直ぐにすっぱ抜かれて世間様から叩かれるぞ」


 男女の口からは一切、子供の安否と言った話は出てこない。

 出てくるのは自分たちに対する〝世間の目〟の事ばかり。彼らは如何に自分たちがよく見えるかという事だけを考えているらしい。


「しかしアレも不要だったとはいえ、ある意味いい仕事をしてくれた」

「何処がよ……こうも窮屈な生活じゃ不満しか無いわ」

「今だけだろう? それに、他の家族にも気を使ういい夫婦をしておけば」

「はぁ……」


 屑である。紛うことなき屑親以外何者でもない。


 しかしその考えは実に浅いと言えるだろう。

 例えばだが、もし学生たちが発見されなければどうなるか? それは世間から忘れ去られたとしても親たちの会合は続くだろう。

 その場合は、どれだけの期間、彼らの言う〝いい夫婦〟を演じる必要があるだろうか。勿論、最後まで続ける必要があるだろう。

 この夫婦にソレを続けることが出来るかどうか。それは、彼らの忍耐力にかかっている。



 ソレ以外にも、学生たちが発見された後の話だが、彼らが景と仲良く出来るのかという話もある。


 もし発見されたとなれば、当然だがメディアがこぞってネタの確保に駆けつけるだろう。

 その時に、景が、この両親と仲良くインタビューに答えるだろうか? 彼らは「自分たちの子だから、当然世間へのアピールに協力するのは義務だ」とでも言うつもりだろう。

 しかし、其処へ景の気持ちなど全く配慮していない。


 もしその様なインタビューがあるとすれば、景にとって、最高の反撃を行う舞台であることは間違いないのだが……やはり、彼らにはその考えが抜けている。


 考えが足りていない。と言うよりも、景の事を人として認めていないのか、これまで道具みたいな扱いをしていたのだろう。景に感情があることすら忘れており、そのために考える必要が無いと思っているのだろう。



 実に馬鹿な話だが、これまでそういった事が罷り通ってしまっていたのだ。

 実に幼少期からの洗脳が恐ろしいのかという話だろう。







 今、景は島にて数カ月間の間、自由気ままに生活をしている。そしてそんな景を認める存在も出来た。となれば、景は幼少期からの洗脳が解けたといえるだろう。


 洗脳から解放された景が、どの様な行動にでるのか。彼らは何も知るすべがない。

 そもそも解放されているとすら考えていないだろう。と言うよりも、洗脳していたという自覚すらないかもしれない。


 彼らにとって一番良いのは、景が帰ってこないということなのだが……果たしてどうなるかは、まだまだ先のお話。

ブックマークに評価ありがとうございます!ヾ(*´∀`*)ノ



新島というのはロマンがいっぱい! 現実的な話をするなら、海洋資源の確保やら漁場が広がるといった事が挙げられますからね。



さて、作中に〝海上公安局〟というネームが出てきました。

海上保安庁じゃないの? と思われる方も居るでしょう。えぇ、現実では〝海上公安局〟ではなく〝海上保安庁〟です。

では何故その名前を? と言うと、この世界がパラレルワールド的な世界だよと言ったアピールってだけです。えぇ、なので、微妙に現実と同じだけど違うみたいな国の対応や法律があってもおかしくはないのです! と言う名の保険(笑)


と、実はこの〝海上公安局〟という名前ですが、現実にも出てはいるのです。


海上保安庁の後継機関。その設置が予定されていた治安機関の名称。


なのですが、見送られているのですよね。気になる方は調べてみてください。しっかりと情報が転がっていますから。


一つ言うなら……〝幻の国家機関〟と言われていたりして、何やら厨二病を擽る物があったりしますw

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― 新着の感想 ―
[一言] いないとはとても言い切れないのが毒親ですからなぁ・・・
[一言] アノ赤い国が領有を宣言して占拠失敗ってのがあるんだろうな
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