閑話・袋小路
「味が寂しいわね」
「仕方ないかな? 仕方ないよね。だって香辛料とかが無いもん」
「香辛料は一体何処で手に入るのでしょうね」
肉とココヤシ。味付けは塩のみなんて、もう飽き飽きなのよね。
皆の士気にも関わるものだし、なんとか食の幅を広げたいのだけど……一体どこに食べ物はあるのかしらね。
ただ言えるのは、食べる物が偏っているのに、栄養素の事とかで問題が無いと言うのだけは救いという事ね。
本当に、皆さん肉付きが悪くなる事もなく、中にはふっくら……げふんげふん。
「鏡花も少しは運動したほうが良いのでは?」
「あら? ここに来てから其処まで食べては居ないのだけど」
「おかしい? おかしいよね。もしかして成長期?」
成長期って……身長が急激に伸びている訳でもないのよね。
でも横にも育ってはいないはず。えぇ、断じてソレはない。だって服もキツくはなっていないもの。
ただそうなると、一体なにが育っているというのかしら。
「筋肉? 筋肉だよね?」
「あー……確か筋肉って贅肉より少し重いと聞いたことがあるわ」
あれ? でも其処まで劇的に重くなるというわけでは無かったはずよね。
もしかして島特有の何かが関係しているというのかしら? 例えば、魔法を使う何かとかかしら。
「そんな訳で、鏡花はわんちゃんをもう少し踏むのは少なくするべきよ」
「偶に潰れる? 潰れてる?」
失敬な! と言いたいのだけども、確かにあのわんちゃんはカエルみたいにぐぇってなっているのよね。全く失礼しちゃうわ。
「男子なら椅子に出来るかしら?」
「……いや、椅子にしなくても」
「これまでの罰だもの。しっかりと立場というのを理解させないと」
「……罰なの? 罰なのかな? 特定の人にはご褒美」
た、確かに。偶に恍惚とした表情をしていたりするのよね。
コレは少し相手を選ぶべきなのかしら? 罰としてではなく、ご褒美でというのも……いやダメね。はっきり言って喜ぶ相手にやるとか、それは気持ち悪く感じるわ。
「と、話を戻すのだけど、食を充実させるにはどうしたら良いかしらね」
「遠征じゃない? 他の人達も発見出来ていないし」
「つくづくネズミちゃん達を逃したのは残念だったわね……」
「今更かな? 今更だよ!」
本当に口惜しいわ……どうしてあの時死にものぐるいになって探さなかったのかしら。
「鏡花が挑発するから」
「し、仕方ないじゃない」
時期的に他の人なんて誰も信用出来なかったものね。
味方と言えるのは私達のみだったのよ……それを今言った所でという話なのよね。
「って、だから! 食の充実よ!」
「でも遠征って厳しいんじゃない? 人が足らないというのもだけど、私達って生産職が多いじゃない」
戦闘になったら不味いのよね。だから私達の行動範囲は其処まで広くない。
もし遠征するとしたら、それこそ全員で移動をしないといけないくなるのだけど、それ自体も賭けになるのよね。何せ護衛される数にたいして、護衛する数の方が少ないもの。
本当に初手のミスと言うのがここまで響くなんてね。
思い返せばソレばっかりね。もっと前向きに物事を考えないと……。
「レベルを上げるべきよね」
「でもどうやってかしら? ネズミ狩りだともう頭打ちだと思うのだけど」
上がらないレベル。広がらない世界。現状は完全に行き詰まっているのよね。
この状況を打破するには一体なにをしたらいいのかしら……。
「わん?」
「……一体なにを言っているのかしら」
「くぅ~ん……」
「そろそろ人の言葉を使っても良いのでは?」
「……今回だけ許すわ。分かるように話しなさい」
「え、あ、その……時には賭けも必要かと」
「何ですって?」
「あ、ごめんなさい! ごめんなさい!!」
いや、そこまで謝らなくても……って、それも仕方ないわね。しっかりとちょうき……じゃなくて、教育してしまったものね。
でもそうね。犬の言う通りで時には賭けも必要というのは、確かにそうかも知れないわ。
ただ、その賭けを行うにも色々と計画を立てる必要があるわね。
「ここは全員を集めて方針を決める必要があるかしら」
「全員をだなんて初めてじゃない?」
「良いの? よくないと思うよ? 今までは私達だけだったよ?」
そうなのよね。これまでは私達が決めた事を告げていくだけだったものね。
だからここで全員を集めても、余り意味がないのでは? とか、男子たちが図に乗るのでは? といった懸念が無いわけじゃないのよ。
それでも、ここらへんで一度は状況を打破するために、体制を変える決断する必要がある。ただ、それでも馬鹿な事が出来ないようにはする必要があるのだけど。
一度でも馬鹿をした者は、再び馬鹿をする可能性があるもの。だから、やるとしても注意深く確認しながらなのだけど。
ともあれ、私達が次に進むためには必要だものね。少しぐらい怪我をするぐらいは覚悟する必要があるわね。
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