閑話・がんばったんだぜ
「宗太……漸くやりきったな」
「そうだなぁ。本当にここまで長かった」
「まったくだよ……俺なんて何度流れ弾にヤラれそうになったことか……」
健人……それは仕方ないだろ。だってお前は盾職だぞ? 皆を最前線で守るのが仕事じゃないか。
「そうは言うが、ゴーレムの攻撃には盾なんて有ってないようなものだったろ!」
「素材を考えると仕方ないさ。何せ木に革を貼り付けただけだから」
それでもタワーシールドタイプだって宗太は言っていたけどな。
タワーシールドだから結構防御力は高い。なので上手く力を受け止めるなり流すなりすれば、ゴーレムの攻撃でも何とかなるんじゃね? って話だった。
だけどシールドが1つだと心許ないから、幾つも用意していたんだよな。だから、後方で待機している人の元にはタワーシールドが沢山積み上げられていた。……それだけ健人はガードを何とかしろって話でもあるけどな。
ただそれでも健人は小さくないダメージを受けてはいたけど。
「なれるまでが大変だったんだよ」
「それもそうだよなぁ……何せ何度も挑んでは撤退を繰り返したしな」
ゴーレムを発見してから一体どれだけ時間を掛けたのやら。
ゴーレムに挑んだ回数もだが、準備の時間もかなり必要だった。
「木と革なんてどんどん消耗していたから」
「それは健人がゴーレムの一撃で盾を破損してたからだろ」
「しかたないだろ! そもそも、木と革で石を防げってのが無理なんだよ」
「だが後半なんて数発は耐えることが出来たじゃないか」
「ソレは俺の血が滲む程の努力を褒めてくれ」
「そうだなー。生産職の皆さんのレベルアップも有ったしな」
「俺を褒めろよぉぉぉぉぉ!!」
健人、想定通りのツッコミをありがとう。
ただ健人のレベルアップもだけど、生産職の生産能力アップも事実なんだよ。
最初に挑んだ時は明らかにレベルが足りていなかった。それは俺達戦闘組もだけど生産側もだ。
だが、ソレ以上に言いたい事は……なんで、こんな化け物級の存在がいきなり現れるんだよ!! ってこと。
「どう考えてもゴーレムは場違いだろ」
「この周囲で出来るレベルアップを考えると、なんでゴーレムが? ってなるよな」
「盾スキルをMAXにして漸く土俵に立てるぐらいだったから」
健人は盾MAXで漸く貫通ダメを無効化出来たらしい。ただ貫通してこないだけで、盾は破壊されてしまうんだと。
ではどうやって盾を破壊されないようにしたのか? と言うと、本人の基礎レベルもだけど、身体能力強化のスキルレベルを上げることで、微妙な力の調整が可能になったからなんだとか。
はっきり言って意味がわからん。だって盾の防御力は変わってないんだろう? どうやって本人の身体能力で盾が破壊されないように出来るんだよ。って思うんだけど、使っている健人が言うのだからそういうモノなんだろう。
「トラップで何とかダメージを稼いだけど、そっちも最初の内は全くダメージが入らなかったからなぁ」
「ダメージもレベル不足だったって事だ」
全体的にレベルが足らない。だから俺達はレベリングに没頭する事になったんだけど、一体どこまで上げればいいのか全く分からなかった。
更に言うと、レベルアップ自体が中々出来ない。全員のレベルを上げようと思うと、大量のモンスターを狩らないといけないのに、ネズミとかの経験値が微妙過ぎた。
数は狩れるかもしれないけど、ネズミを探すのにも時間が掛かるからな。
だからどうしても、レベリングには大量の時間が必要になってしまった。お陰で、ゴーレムを発見してから討伐するまでこんなにも時間が掛かったんだよな。
「しかしゴーレムを討伐すると新しいフィールドが開放される……か」
「またゴーレムみたいな強敵がいるかもな」
「勘弁してほしいわ……また俺の盾と体がボロボロになる」
「いやいや、それが健人の仕事だろ。回復魔法やポーションがあるんだから何とか頑張れ?」
「それに鉄も手に入るみたいだしな。盾も今のより性能が良いものに出来るだろ」
鉄を使う物だから、これは宗太の仕事になるな。……まぁ、漸く宗太の鍛冶師というジョブが輝くって事になるな。
心なしか、宗太の目もいつもより輝いているように見える。
「出来ればゴーレム討伐前に欲しかったぜ。そうすれば盾ももっと良いもので受け止める事が出来たのに」
「仕方ないだろ。鉄を入手出来たのがゴーレムがいる場所だったからな」
今更な話だけどな。ただ、健人の言いたいことも理解出来る。
だから鉄は健人の盾にまず使って貰うのが一番だろうな。
「さて、後はジョブの昇進か」
「上位職的なものかな?」
「ゲームあるあるなやーつ。盾職は何になれるんだろうなぁ」
因みに女子達も今は昇進ジョブについての話で盛り上がっている。
強い魔法が使えるのかな? とか、良いものが作れる様になるのかな? なんて会話だけどな。
「俺はトラッパーだからなぁ……純粋にトラップの威力強化だろうな」
「範囲とか種類が増えるかもしれないけど?」
「それもあったか。まぁ、味方に被害が出るようなトラップじゃなければ何でもいいさ」
敵味方関係なしにダメージを与える代わりに威力が馬鹿みたいに上がるって言うなら、使い道次第で使えそうだけどな。……ただ、その使い道ってのもかなり限定的になりそうだが。
「とりあえず次のフィールドとやらに行ってみないとな」
「準備はしっかりとしておかないとな。もしかしたら大量のゴーレムが出てくるかもしれない」
「それは悪夢すぎるだろ! 俺一人じゃ耐えられないぞ」
ゴーレム一体でもレベル的にギリギリだったからな。
果たして複数出てきたら、ゴーレムと戦えるのだろうか……いや、2体以上いたらどう考えても無理だな。もしその場合は、ゴーレムから見つかる前に撤退しないといけない。
出来れば次のフィールドに出てくるモンスターが、まだ戦える相手であることを祈ろうか。
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彼らも漸くゴーレムを討伐出来たようです。
人数が多いため、全員のレベリングに時間が掛かってしまったようですね。ただその分、数で攻める事もできるので、景達よりも安全に討伐は出来たようです。