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え……全く気が付かなかったわ~桔梗視点~

 報告会が終わった後は、望月君と別れ私達は自分たちの部屋へ。


「一日お疲れさま」

「おつかれじゃん! 特に雪」

「……むぅ」

「あはは……塗り薬でも塗っておく?」


 雪は少し考えた後「……大丈夫」と呟いた。

 だけど雪はまだ微妙に痛いようで、うつ伏せになりながら太ももなどを軽くさすったりしている。


「……それ塗っておいたほうが良いと思うわよ? 明日に引きずるかもしれないのだから」

「……むむ。それはつらい」

「はーい。いい子はお薬を塗っておきましょうね」


 ニコニコとしながらエリカは塗り薬を手に雪の布団へ。

 何が楽しいんだか……と思っていたら、その理由は直ぐに私にも理解することが出来た。


「うぴゃぁぁぁ!?」

「しみるけど我慢しようねー」


 エリカは塗り薬を思いっきり塗ったくりながら回復魔法も掛けている。

 ただ、その効果でなのか患部は恐ろしく染みるらしく……雪は大きな声を上げてしまう。


 それにしても、エリカってこういう時にちょっとだけS気がでるのよね。

 ヒーラーを選ぶぐらいだから、皆のためにとかそういった慈悲的な心を持ってはいるのだけど……ひどすぎない状態だと、こういった反応をみるのが楽しいらしい。


「雪ちゃんはいい子だから! ほら暴れない」

「ぴぇ……こ、子供扱い……する……にゃぁ……」


 じたばたと暴れる雪を見ながら、なんだかなぁといった気分になる。


「そう言えば怪我に塗り薬で思い出したんだけど、望月の怪我って随分と良くなってるじゃん」

「え? 彼って怪我をしていたの?」

「ん? あぁ! 怪我は怪我でも心のほうじゃん。あれ? もしかして桔梗は気がついてなかった? 望月の奴、知らず知らずなんだろうけど、微妙に私達と視線が合ってたじゃん」


 え、本当? 私は全く気が付いていなかったんだけど……。


「エ、エリカは気がついていたのかしら?」

「んー……ごめん、ちょっと分かんない。雪はどうかな?」

「にゃ……あ、合ってにゃ……」


 エリカは私と同じで全く気が付いていなかったみたいだけど、雪は涙目になりながらも七海の言葉を肯定した。

 そうだったのね。望月君と視線が合うような状況があったなんて……少し思い返してみるけど、ダメね。全く思い当たる節がないわ。


「でもその事が事実なら、かなり喜ばしい事よね」

「ま、本人すらも気が付いていないみたいだったじゃん」

「……むいひき」

「えっと、無意識で良いのかな? でも、絶対に合わせようとしないとか、視線があったら吐き気を覚える時のことを考えたら、確かに嬉しいよね!」


 別に目と目が合う事で嘔吐されることがショックだとかそういう事じゃない。

 なにかの拍子に視線が交わる事で望月君にデバフがかかるのが問題だという事。もしそれが戦闘中であれば、最悪な結末になる可能性が一気に上る。

 その可能性が減っただけでも、私達にとっては大進歩なのよね。


「……目と目を合わせる」

「合っても何も気が付かないわよ?」

「……ボクの怒りがエリカに伝わる」

「ごめんね。ちょっと巫山戯過ぎちゃったね」


 この二人は……望月君と目と目が合った話をしているというのに、自分たちの状況に話を戻すのね。

 まぁ、それだけ雪のお怒りは振り切っていたという事なのかしら。一体、雪にどんな痛みが襲ったのよ。


 とは言え、これも何時ものお巫山戯みたいなものだから、二人はスルーしておきましょうか。


「ただ、本人が気がついていないというのは厄介かもしれないわね」

「え? どうしてそうなるのさ」

「ほら、意識するとぶり返す何て事はよくある話でしょう」

「あー……頭痛とか腹痛によくあるやつじゃん」


 だから私達からその事を、望月君に直接話すのは止めておいたほうが良いでしょうね。

 彼が自分で気がつくまで、そっと見守っておくのが一番の対応だと思うわ。


「もどかしいじゃん」

「たしかにね。でも、精神的な面が原因の事だから仕方ないわよ。……それにしても、どうして急に大丈夫になったのかしらね」

「……それは私達の努力じゃん?」

「一体どんな努力をしてきたのよ……」

「えっと、んっと、会話を試みるとか?」


 確かに最初の頃のことを思うと、随分と色々やって来たのは事実だと思うわよ。

 何せ最初の内はリンクを使っての会話だったものね。それも基本は業務連絡のみ。その後も色々と会話が出来るようになったけど、やっぱり業務連絡が主だったり、壁が有ったりしていたんだけど……今では随分と普通に会話が出来るようになってきたと思うわ。

 ただ、数日前までは間違いなく、彼は意識して目を合わせないように行動していたはずなのよね。


「悪い兆候じゃないと良いのだけど」

「え? どうしてそこで悪いになるのさ」

「だってほら、あの牛を拠点へと連れてくる辺りから、カメを討伐した間に彼の中で変革が起きたということでしょう? そして、その時に一番有り得そうな話と言えば……」

「あ……そうじゃん。それが有ったじゃん」


 豚の化け物によって、一撃で吹き飛ばされた後、望月君とは到底思えない性格になってたということ。そしてその性格も、寝て起きた後は何時もの望月君に戻っていた。

 どう考えてもこの時になにか有ったと考えるのが普通よね。でも、何が有ったかなんて私達に分かる訳がない。


「……大丈夫」

「雪? 何で大丈夫だって言えるのかな」

「……何となく?」


 いちゃついていたエリカと雪の2人だけど、こちらの話はしっかりと聞いていたようで。


 雪は謎の自信をもって〝大丈夫〟だと言い切った。


 その根拠は? と言いたいところなのだけど、こういった時に雪が持つ自信は何故か正解だったりするのよね。

 理由は全く理解出来ないのだけど、きっと雪にだけ感じる何かのアンテナでも張ってあるのでしょうね。


「……もっちーはもっちー」

「あー……雪がそう言うならそういう事で良いじゃん」

「曖昧ね。でも、望月君に聞けるような話でもないものね」

「見守るしか無いんじゃないかなぁ」


 結局の所は経過を注意して見ておくしか無いという事なのよね。

 ただ……私とエリカは全く望月君の変化に気がついていなかった訳なんだけど。


「……仕方ない」

「そうそうしょうが無いじゃん。私が気がついたのだって、今日一日一緒に鞍とかの事をやったからじゃん」


 そうなのかしら? うーん……確かに七海が気がついたのも今日みたいなのよね。

 となると、本当に今日突然良くなったのかしら? はぁ、全くわからないわね。

ブックマークに評価ありがとうございます!ヾ(*´∀`*)ノ

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― 新着の感想 ―
[一言] なんかこの辺りよりもちょい前から急に七海が語尾じゃんじゃん娘になったみたいで違和感
[一言] 某農民マンガによると尻の皮が剝けるらしいから( ´ω`) あ、もっちーが盗s…もとい覗k… とりあえずお巡りさんあいつです(・∀・)つ
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