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ウサギと罠と

 実験と食料調達と拠点作り。これらを繰り返しながら更に数日が過ぎた。

 どれも特段と進展が有った訳では無く、実験は実験と言うよりも道具を量産した。

 食料調達も鑑定した植物で食べられる物を採取した。一応、道具に出来そうなカエンタケなども一緒にだが。

 拠点は……ぶっちゃけちょこっとした壁を作った程度だろうか。圧倒的に石材が足らないのがネック。石材と言えば、魔法の石と天然の石を合わせて作った石レンガだが、一応使えるということ自体はわかった。わかったんだけど……残念な事に魔法の石は比率的に、全体の三割以下でないとダメと言う事も分かったので、やはり石レンガを量産するには採掘が必要だろう。


 そんな訳で、この地に来てから一週間。

 未だに救助が来る気配もなく……まぁ、救助なんて既に諦めてはいるけども! とりあえず、なんとか生存して居られている状況だ。うん、救助とか無理だよなぁ。何せこんな訳の分からん力が使える場所だし。


「さてと、ただ戦闘を行う準備は完了していると言えばいるからな」


 戦闘の準備とは言え、それは直接戦う様なモノでは無い。

 大量に作った地雷を使ったフィールドを用意しただけなんだけど、これはこれで防衛は鉄壁と言える。


 砂浜に仕掛けられた地雷群。うん、正直ビーチとしては実に恐ろしい空間である。


 ただ、この地雷はお察しの通りで爆破力が無い。あれから色々と試してみたが、ドライフルーツ化で火力を上げる以外の手段が見つからなかった。

 なので地面に仕込んでいるのは地雷は地雷でも、燃え広がるタイプのモノ。カエンタケとドライボムベリーの組み合わせだ。


 一度燃えてしまえばな……それこそ海に飛び込まない限りは大ダメージだ。しかも周囲にも同じトラップが仕込まれているので、連鎖反応も起こすだろうよ。

 そして、海に入れば入ったで海に潜むモノ達と戦わねばならなくなる。海中って割と面倒な敵がいるみたいだしな。



 そんな訳で! 先ずは蜘蛛……以外の何かと戦ってみたい。出来れば蜘蛛にやられていたウサギが良い。

 そう考えながら、ウサギトラップの場所へと足を運ぶが……まぁ、トラップに引っ掛かっているウサギはいない様だ。てか、今まで一度たりとてウサギがトラップに掛かった状況を見ていない。


「うーん、コレはトラップの位置が悪いのか?」


 仕掛けてから既に数日たっている。だというのに仕掛けたトラップは一つも作動していない。そう、作動すらしていないんだ。

 これが、トラップに掛かったけど逃げましたとかなら話は別だ。そう言った痕跡が残っていれば、此処は間違いなくウサギが通る道で、ウサギもしっかりとトラップに掛かる可能性がある証拠。

 でも、残念な事に、ウサギの痕跡は皆無である。


 おかしいよなぁ? 初日に俺はこの付近でウサギと遭遇したんだ。それ自体は間違いがない。だからこそ、ここにトラップを仕掛けたんだから。

 しかし、しっかりと地面をみても、ウサギの巣穴も無ければ足跡も糞も無い。

 これはどういう事なんだ? と頭を捻るばかりである。


「あのウサギが実はチュートリアル的存在でしたみたいな?」


 もしかしたら、トラップを仕掛けた事でチュートリアルが進んでいないなんて事が……いやいや、そんなゲームみたいな話は、って、普通にジョブだのスキルだのが有るからゲームみたいな場所だったな。

 とりあえず、これ以上此処にトラップを置いていても何も得られそうにも無いので、トラップを回収して違う場所へと仕掛けてみるとしよう。


 そう考えてトラップをすべて排除したら……不思議な事に、ひょこっとウサギが現れたではないか!


「はぁ!? マジかよ……マジでトラップが邪魔をしていたパターンなのか?」


 全く訳が分からんのだが、それでもこれはチャンスなのでウサギ相手に戦闘を開始してみる。


 ウサギはと言うと、どうやら最初の時と同じようで此方に向かって挑発を繰り返していた。

 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、時折「プッ」だの「フンス」だのと鼻を鳴らしている。いやいや、最初に遭遇したウサギと同じでよかったよ。これで、このウサギを狩るのに罪悪感を覚えずに済む。

 もし地球上のウサギと同じだったら、その愛らしさで狩る事を躊躇っただろうからな。


 スッと石槍を手にし、ウサギに向かって突きを放つ。

 ピョン! と軽やかにウサギはその突きを避け、お尻を振りながら「ふふん」と言わんばかりに此方を挑発して来た。


「ハッハッハ! 実に可愛らしい挑発を……そんなので俺が切れる訳ないだろう!」


 そう言いながら、思いっきりウサギ相手に石槍を振るう。

 傍から見れば、激怒してはちゃめちゃに槍を振っている様に見えただろう。ウサギもそのように見えた様で、回避しては俺に対して挑発を繰り返していく。


 だけど、これって全部計算しているからな? 激昂し、適当に槍を振っている様にみせつつ、ウサギよ……お前は逃げる方向を誘導されているんだ。


 それ! と、叩きつける様に石槍を斜めに振り下ろす。

 俺が石槍を右上から左下に振り下ろした事で、ウサギはその軌道を見て俺から見て左側へとピョンと飛んだ。


 そして、着地した瞬間……ゴゥ! と地面から火が吹き上がった。


 ウサギの毛が一気に燃えあがる。それによってウサギはこれは不味い! と水がある方向へ一目散に走ろうとする。

 しかしそこは……全てトラップゾーンだ。

 ウサギは地面を踏む度、お替りと言わんばかりに火が昇る。そして時には小さな爆発。

 パン! と小さな爆発なので威力はそこまで無いのだが、パニックを起こした者にとっては脅威に感じるらしい。


 「キュピィ!?」と驚愕しながら進路方向を変更するウサギ。


 しかし、ウサギの時間は後わずかと言った感じではないだろうか? 海の中へと飛び込むには……既に全身まる焼け状態である。


 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 モキュモキュと数日ぶりの肉を食らう。

 ウサギの肉ってこんなに美味しかったんだな! と初めて知った。これ、鶏肉や豚肉なんか比じゃないぞ。


「クッソ生意気なウサギだったけど、味は旨いんだなぁ」


 使った調味料は塩のみ。出来れば胡椒なども欲しいところなんだけど……森の奥を探索しないと見つからないだろうか? ま、胡椒が無ければ山椒でも良いけども。


 さて、腹ごしらえはこれで良いとして、問題はこの狩りでレベルが上がったかどうかだ。

 これで上がらないとなると、それはそれで問題だ。道具ベースな戦い方が基本になるだろう職で、直接戦闘を行えって事だもんな。出来ればそれはご遠慮したい。

 なので、そんな理不尽な事が無い様にと、少し恐々と祈りながら俺は自らのステータスを確認した。


―――――――――――――――――――――――――――――

 ステータスだよ!

 ジョブ

 アルケミスト:Lv2


 スキル

 錬金術(初級):1

 鑑定(初級):0

 魔法(全属性・初級):0


 残りSP1


 追記

 初レベルアップおめでとう! 振ったポイントが分かるようにしたよ! 頑張って成長してね。

 いやぁまさか、チュートリアルモブを封じるとは思わなかったよ。アレを倒したらレベルアップだったからね。

―――――――――――――――――――――――――――――


 おいおい、やっぱりあのウサギはチュートリアルモブだったのかよ。

 しかも、俺がトラップを用意した事で出現しなくなっていたとか……自分で自分の首を絞めていたんかい。


 それはさておき。


 何とかレベルが上がったな! やはり狩りをする事でレベルが上がるって事だったか。

 生産で上がってくれればもっと楽だったんだけどな……もしかしたら、生産だと得られる経験値が低い可能性とかもあるが、それはどうなんだろうか。


 さて、問題はこのスキルポイントを何に振るかだ。


 普通に考えたら錬金術に振りたいところではあるが、戦闘が必要になると考えると魔法に振りたい気持ちもある。

 鑑定は鑑定でかなり重要だと言うのも分かる話で、一体ポイントを一つふればどれだけの情報が手に入るのか気になる。


 あぁ……これは本当に、どれを選ぶのが最適解なのだろうか。

 悩むだけでかなり時間が過ぎてしまう気がするよ。

挑発ウサギの末路。

実はただのチュートリアルモブとして用意されていた、一羽だけは絶対に出会えるであろう存在。

この一羽以降はしっかりと森の中で巣穴を探して狩りをしなくてはいけないが、それは現状関係のない話。


挑発してくる理由は、戦う為だったりしたんですねぇ……何やら可哀そうな存在な気もしますが、それもまたそう作られたモブの運命と言う事で。

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― 新着の感想 ―
[一言] うさぎさん必死にアピールしてたのに… ニンゲンはすぐプッチンしちゃってダメねぇ
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