表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

169/827

夕食後には報告を

 日が暮れる前に、春野さんと秋山さんは拠点へと戻ってきた。

 その間にも、俺は何度も鞍を作っては直してを繰り返したんだけど……残念な事に納得の行く物は出来なかった。

 そしてその事からふと思ったんだよね。


 もしかして爆発物も、実はかなり威力が低い状態で制作しているんじゃないか? って。


 一応なんども実験を繰り返してみて、コレが一番良いのでは! と思ったレシピで作成しているんだけど、もしそのレシピ自体が間違っていたらどうだろう。

 そもそも爆発物のレシピは俺のオリジナルで、錬金術のレシピブックには載っていなかった物。それに、最初の頃に作ったレシピを少しいじった程度の状態で作っているんだよね。


 という事は、素材が増えた状態でソレに合わせたレシピではないってことなんだよ。


 これはもしかして。もしかしなくても、一度オリジナルレシピは全て調べ直す必要があるかもしれない。


 爆発物なんて、実際の効果を見ても理解できないもんね。今回の鞍という、実際に人が乗って試すことが出来る物を作ったからこそ、もしかして? と思う事が出来たのはかなりの収穫だったんじゃないかな。




 そんな事を考えながら夕飯を頂いた後は、待ちに待った報告会のお時間だ。……まぁ、待っていたのは夏目さんと冬川さんだけど。


「さて、まずは結果から話をしていこうかな。俺の方だけど鞍を作ったけど微妙だったってのと、甕を作ったからポーション作成が捗りそうって感じかな。ただ、このポーション作成に色々と問題があるけど……ソレはまた後で」

「了解。そしたら私達の報告を先にするわね。と言っても、予定通りといった感じかしら。第2フィールドの情報をネタに大量の箱やボムベリーを貰ってきたわ」

「お米と交換で魚や胡桃もね! ただ、お米はもう今回限りって感じかなぁ……」


 第2フィールドの存在を教えたというのも有るけど、彼らもまた米の栽培に挑戦しているらしい。

 海側という事も有り、水などのことで少々問題はありそうだけど……島だからもしかして? と思う部分があるからね。案外簡単に成功するかもしれないし、もしかしたら塩害に強い種に変質するかもね。


「2人が見た感じで良いんだけど、彼らの健康状態や精神状態ってどんな感じだった?」

「そうね。特に悪いといった感じは無かったわね。寧ろ食が少しでも豊かになり始めたから、イケイケモードになっていると行った感じかしら」

「……ご飯はパワー」

「確かに美味しくないご飯だと力なんて出ないじゃん」


 なにはともあれ、交易相手の精神状態が良いのであればオッケーかな。

 マイナスに落ちたら、それこそ何をしでかすようになるか分からないしね。有るところから奪え! みたいな感じの戦国さながらといった行動に出られると困るから。

 そしてそうなった場合、交渉に来た俺達が最初に狙われる事になってしまう……まぁ、レベル差で制圧出来ると言えば出来ると思うけど、あまり力でってのはやりたくないからなぁ。


「問題が無いようで何よりだよ」

「えぇ全くもってその通りね。で、望月君側では問題が起きている、だったかしら?」

「問題というよりも気が付いたって感じなんだけど……」


 女子達に果物の木についての話をしていく。


 木は見つけているけども、熟した実など全く確認が出来ていない木々たち。

 だけどよく考えて欲しい。この島において、どうして初期の状態から有る木々だと言うのに実がついていないのか? コレはどう考えてもおかしいよね。だって、ココヤシは実をつけているし、稲は黄金色で頭を垂れている状態だった。胡桃だって回収出来たしね。

 そう考えると、どうして果物は? という疑問点に行き着くんだけど……何故か俺達は、今までその事に気がついてすら居なかったんだ。


「た、確かに。何で果物の採取が出来ないんだろう?」

「ベリーも爆発するベリーは採取出来るけど、食べれるベリーは見たことがないわね」

「そういう物ってことじゃん?」

「……無念」


 無念ではないよ冬川さん。なぜなら、錬金術のレシピブックには間違いなく実が確保できる証拠が書かれているんだから。

 なので、女子達にもレシピブックの内容について説明をしていく。


「果物はポーション作成に必要と書かれているんだ。という事は、木々は間違いなく実をつけるハズ。ただ、その実がなる為には何かが足りてないのでは? って事なんだけど」

「その何かが分からないという事ね」

「足りないものかぁ……水とか?」


 水は足りているだろうなぁ……だってこの第1フィールドは少し前まで雨季だったからね。嫌というほど雨が降ってたんだよね。

 なので水が足らないという事は全く無いと思う。では違う物が足りないってことになる訳なんだけど。


「季節とか? あー、でも季節は島だと余り関係無さそうじゃん」

「雨季に胡桃が出来ているぐらいだものね……」


 そもそも四季があるかどうかも謎だしね。


 ともあれ、こんな不思議な島で、季節など関係なく採取出来る環境ということを踏まえると、足りないものは全く違うなにかだと考えたほうが良いと思う。

 だからその何かを皆にも考えて貰いたい訳なんだけど……やっぱり、中途半端な常識が邪魔をする訳で。


「栄養素が足らないとか?」

「アレだけ青々しく木々は育っているのよ? 栄養素は十分に存在すると思うよ」

「……太陽光?」

「日光は十分に降り注いでるじゃん……確かに雨季だったけどさ。晴れの日だって有った」


 とまぁ、地球の常識で物事を考えてしまうんだよね。実際に俺もそうだし。とは言え、島の常識ってなんぞや? と考えた所で、そんなものは分からないんだけど。


 正直に言って、考えが行き詰まってしまうよね。


「色々と試すしか無いかしら?」

「えっと、試すって何を?」

「そうね……例えば、木に魔法を撃ち込んでみるとか、ポーションを掛けてみるとか」

「ま、魔法を!?」

「あ、勿論だけど攻撃魔法じゃなく回復魔法や支援魔法をよ?」


 そうだよね。普通に考えて攻撃魔法なんて撃ち込んだら大惨事になりかねない。

 流石に秋山さんもそんな提案はしないよね。……うん、少し驚いちゃったけどね。


「ポーションはどのポーションが良いかな?」

「とりあえず全種類用意だけはしておけば良いのではないかしら……もしかして、色々とレシピが増えて大変かしら?」

「いや、レシピが増えたと言っても素材が足りてないから大丈夫かな」


 増えたレシピの殆どに果物が必要だからね。……更にその半分ぐらいはお酒のレシピだけど。ソッチは封印指定だからスルーしておく。


「それじゃ、木々に対しては回復魔法と支援魔法にポーションを試すとしましょ! 他には何かあるかしら?」

「あ、そうそう。小型の盾を作ったから持っていっておいて」

「盾? 素材は?」

「カメの甲羅かな。ただ、魔石の方は甕の作成に使わせてもらったけど」

「……もっちー? 魔石は水?」

「そそ、水魔石が必要だったからね。ただ、その魔石も消耗品らしいけど」

「望月、確か水の魔石って回復魔法や支援魔法の杖に使えるとか言ってたじゃん……」


 あ……そう言えばそんな事を言っていたような。

 ヤバい。完全にその事を忘れてた。いやだって、あの説明文を見てから随分と時間も経ってたし、色々と出来事が起こりすぎてたから……と、ここでこんな言い訳を言っても仕方ないか。


「でも杖に使うより甕に使ったほうが良かったんじゃない? 色々とポーションとかの質が上がるんだよね」

「魔力水ってのが使えるようになるんだけど、それが案外色々と使えそうかな」

「もしかしたら木に実がなる何かを作れるかもしれないしね」


 春野さんの言葉が実に優しくて胸に刺さるんだが……。


「……もっちーやらかした?」

「やらかしたと言うか、素で忘れてた……まぁ、光属性の魔石だけは絶対に忘れないけど」

「……なんで?」

「ほら、回復魔法も支援魔法もだけど、どう見ても光属性のエフェクトだから」


 「「あー……」」と納得するような声が重なって響いた。うん、どうみてもヒーラーとかバッファーって光属性だよね。


「確かに水には見えないかなぁ」

「エリカはそれで良いのかしら?」

「良いも何も、物作りは望月君に一任してるからね。要望は出すけど文句はないよ」


 天使なのだろうか? いやまて。天使はこんなに優しくはない。天使はむしろ合理主義で、やれる時にやれ! と言うようなタイプだ。だからといって悪魔でもないけど……。


 ともあれ、次に水魔石が手に入った時は、春野さんの杖をパワーアップさせるための素材にしよう。


 甕の魔石だけど当分の間は大丈夫じゃないかな? フィールドボスなカメの魔石を使ったということも有って、かなり長持ちをしそうだしね。

ブックマークに評価などなど、ありがとうございます!((。・ω・)。_ _))ペコリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「良いも何も、物作りは望月君に一任してるからね。要望は出すけど文句はないよ」 その通りだと思います。意見は言ってもいいけど文句はいかんよ。
[良い点] 更新ありがとうございます。 [一言] 天使に熱い風評被害は、女神で転生が筆頭やと思う
[一言] 殴ればぼたぼたと落ちてくるんだよ、きっと。 でも、一緒に落ちてくる蜂の巣に注意だな!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ